『婚約破棄され追放されましたが、隣国の氷の公爵様に“白い結婚”を提案されましたので、心穏やかに幸せになりますわ

鷹 綾

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4-4 真実の告白と、新たな夫婦の誓い

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第4章 4-4 真実の告白と、新たな夫婦の誓い

 王城の謁見の間は、普段よりも重い空気に包まれていた。

 国王レオポルト三世は高い玉座に座り、
 臣下たちが広間を静かに埋め尽くしている。

 そして──その中央には、
 膝をつき、首を垂れた エドモンド王太子 と 偽聖女ローザ の姿があった。

「……殿下、何か申し開きはあるか?」

 国王の低い声が響く。

「ち、父上……私は……私は、ただ……」

「ただ、何だ?」

「セレナが……セレナが私を捨てたのです……!!
 だから……罰を与えたかっただけで……!」

 広間が凍りついた。

 政治でも正義でもない。
 動機はただの“嫉妬”──。

 ローザは震えながら叫んだ。

「わ、私は殿下に愛されて……!
 聖女であるべきだと……皆から言われて……!!」

 国王は静かにため息をつく。

「……二人とも、王族失格だ」

「っ……!!」

「ローザ。
 そなたは聖女を名乗り、国を欺いた罪で《追放》とする。
 魔力の暴走を防ぐため、二度と神殿には近づけぬ」

 ローザの膝が崩れ落ちた。

「いや……いやぁ……!」
「殿下ぁ……助けて……!」

 だがエドモンドは青ざめ、ローザから一歩距離を取った。

「俺は……関係ない……!
 罪は、ローザが勝手に……!」

「エドモンド」

 国王の低い声に、空気が震える。

「今の一言で、お前の罪は決まった。
 部下を守れない者が王になどなれるものか」

 エドモンドの顔色が完全に失われた。

「お前は今日限り──
 王太子位を剥奪する」

「な……!?」

「国外追放まではせぬ。
 だが、王族としての権利は一切なしだ。
 責任を取るとは、そういうことだ」

 広間は静まり返る。
 エドモンドの肩は絶望に沈んだ。

「なぜ……
 なぜ私が……
 すべては……セレナの……!!」

「まだ言うか!」

 国王が立ち上がり、怒声が轟く。

「お前の敗因はただ一つ。
 セレナを手放したことだ。
 そして彼女を踏みにじり、利用しようとした。
 その報いを受けたまでだ」

 言い返せる者は一人もいなかった。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 その後、国王はアレクシスとセレナを呼び寄せた。

 二人は並んで、玉座の前に進み出る。

「アレクシス、セレナ嬢。
 今回の騒動、そなたらに多くの負担をかけた」

 セレナは静かに頭を下げる。

「いいえ……私は自分を守っていただいただけです」

 国王は微笑んだ。

「セレナ嬢。
 そなたは追放後も王国の民のために働き、
 そして何より──
 自らを見失わずに立ち続けた」

「……陛下」

「そなたを罪人扱いした者たちは、
 これから全員責任を問われる。
 もう心配はいらぬ」

 セレナは、胸の奥が温かくなるのを感じた。
 自分が否定され、踏みつけられたあの日。
 陰の中で怯えていた少女は、もういない。

 アレクシスがセレナの手を握り、国王に向き直った。

「陛下。
 私はセレナを“白い結婚”の名のもとに迎えましたが……
 もうその契約は意味を成しません」

 国王は静かに頷く。

「……やはり、そうか」

 アレクシスはセレナの手をそっと掲げた。

「セレナ。
 君は……私の人生においてかけがえのない人だ。
 これ以上、形だけの契約に甘えるつもりはない」

 セレナの胸が震えた。

(アレクシス様……)

 彼は一歩近づき、まっすぐに見つめた。

「どうか……
 真の夫婦として、私と共に生きてほしい」

 広間が静まり返る。

「……私で……よければ……!」

 声が震えても、はっきりと言えた。

 アレクシスの表情がふわりとほどけ、
 彼は彼女の手をそっと握りしめた。

「ありがとう……セレナ」

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 謁見の間を出た瞬間、
 セレナは胸に熱が広がって涙が溢れた。

「セレナ、大丈夫か……?」

「ええ……うれしくて……。
 アレクシス様が、私を……選んでくれた……」

「選んだのではない。
 君しかいないと気づいたんだ」

 アレクシスは彼女をそっと抱きしめた。

 温かい腕に包まれた瞬間、
 追放されたあの日に押しつぶされた心の影が、
 やっと溶けて消えていった。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 その日の夕方。

 王都中の人々が祝福の鐘を鳴らした。
 新たな宰相夫妻の誕生を喜ぶために。

「セレナ様ー! おめでとうございます!」

「宰相様、これからも国をお願いします!」

 笑顔と祝福が溢れる中、
 アレクシスはセレナの手を取って歩いた。

「……今日からは、契約ではなく──
 本物の夫婦だ」

「ええ……私も、あなたと共に」

 セレナの手は温かく、幸福そのものだった。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 その夜。

 ふたりだけの部屋で、
 アレクシスは照れくさそうに言った。

「セレナ。……今日は、腕枕してもいいか?」

「っ……アレクシス様……!」

 白い結婚は、もう過去のもの。
 初めて見る“夫の顔”が、すぐ隣にあった。

「愛している、セレナ」

「……私も、アレクシス様」

 窓の外では、王都の灯が静かに揺れていた。

 それは、追放された令嬢が手にした──
 本物の幸せの証だった。


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