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第32話 出立の理由
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第32話 出立の理由
返事を書いたのは、翌朝だった。
夜のうちに決めたわけではない。
朝の光を浴びてなお、その気持ちが変わらなかった――それだけだ。
シルフィーネは、机に向かい、静かにペンを走らせた。
> エドワルド殿下
ご書簡、確かに拝受いたしました。
私は、自らの意思でノルディアを訪れることを選びます。
それは、逃げでも、保身 ուսումնでもありません。
私自身が、どこで、どのように生きるのかを確かめるためです。
言葉は、飾らない。
誓いでも、約束でもない。
> 対話の続きを、
対等な立場で行えることを願っております。
署名を終え、封を閉じる。
その動作に、迷いはなかった。
*
出立の準備は、最小限だった。
華美な衣装は持たない。
象徴としての装いも、必要ない。
「……本当に、それだけで?」
侍女が、控えめに問いかける。
「十分です」
シルフィーネは微笑んだ。
「私は、“見せに行く”のではありませんから」
評価されるためでも、
選ばれるためでもない。
自分で立つために行く。
*
父と母には、出立の前にきちんと伝えた。
「短期の訪問になると思います」
そう前置きしてから、言う。
「ですが、結果がどうであれ、
私は納得して戻ってきます」
母は、少しだけ目を潤ませたが、笑った。
「……それなら、安心ね」
父は、いつものように短く頷く。
「帰る場所は、ここだ」
それだけで、十分だった。
*
馬車に乗り込む直前、シルフィーネは一度だけ邸を振り返った。
ここは、過去を縛る場所ではない。
選択を支えてくれる場所だ。
「……行ってきます」
小さく告げて、前を向く。
*
国境を越えるとき、不思議と胸は静かだった。
緊張はある。
だが、恐怖ではない。
自分の足で、歩いている感覚。
誰かに押し出された道ではなく、
自分で選んだ道。
「……これでいい」
馬車の揺れに身を任せながら、
シルフィーネは確信していた。
この旅は、
誰かの期待に応えるためのものではない。
――自分自身に、
答えを出すための旅だ。
そしてその先に、
どんな未来が待っていようとも。
彼女はもう、
自分の選択から目を逸らさない。
そう心に決めて、
シルフィーネは、再びノルディアへ向かって進み始めた。
返事を書いたのは、翌朝だった。
夜のうちに決めたわけではない。
朝の光を浴びてなお、その気持ちが変わらなかった――それだけだ。
シルフィーネは、机に向かい、静かにペンを走らせた。
> エドワルド殿下
ご書簡、確かに拝受いたしました。
私は、自らの意思でノルディアを訪れることを選びます。
それは、逃げでも、保身 ուսումնでもありません。
私自身が、どこで、どのように生きるのかを確かめるためです。
言葉は、飾らない。
誓いでも、約束でもない。
> 対話の続きを、
対等な立場で行えることを願っております。
署名を終え、封を閉じる。
その動作に、迷いはなかった。
*
出立の準備は、最小限だった。
華美な衣装は持たない。
象徴としての装いも、必要ない。
「……本当に、それだけで?」
侍女が、控えめに問いかける。
「十分です」
シルフィーネは微笑んだ。
「私は、“見せに行く”のではありませんから」
評価されるためでも、
選ばれるためでもない。
自分で立つために行く。
*
父と母には、出立の前にきちんと伝えた。
「短期の訪問になると思います」
そう前置きしてから、言う。
「ですが、結果がどうであれ、
私は納得して戻ってきます」
母は、少しだけ目を潤ませたが、笑った。
「……それなら、安心ね」
父は、いつものように短く頷く。
「帰る場所は、ここだ」
それだけで、十分だった。
*
馬車に乗り込む直前、シルフィーネは一度だけ邸を振り返った。
ここは、過去を縛る場所ではない。
選択を支えてくれる場所だ。
「……行ってきます」
小さく告げて、前を向く。
*
国境を越えるとき、不思議と胸は静かだった。
緊張はある。
だが、恐怖ではない。
自分の足で、歩いている感覚。
誰かに押し出された道ではなく、
自分で選んだ道。
「……これでいい」
馬車の揺れに身を任せながら、
シルフィーネは確信していた。
この旅は、
誰かの期待に応えるためのものではない。
――自分自身に、
答えを出すための旅だ。
そしてその先に、
どんな未来が待っていようとも。
彼女はもう、
自分の選択から目を逸らさない。
そう心に決めて、
シルフィーネは、再びノルディアへ向かって進み始めた。
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