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第33話 対話の席にて
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第33話 対話の席にて
ノルディア王城に到着したのは、午後の遅い時間だった。
だが、出迎えは最小限。
儀礼も、歓迎の演出もない。
それが、かえって心地よい。
「……お久しぶりです」
案内された応接室で、エドワルドは立ち上がって迎えた。
「お帰りなさい、と言うべきでしょうか」
微笑みは、以前と変わらない。
だが、その眼差しには“結果を求めない余裕”があった。
「今回は、正式な賓客ではありません」
シルフィーネは、はっきりと告げる。
「一人の人間として、
対話の続きをしに来ました」
「承知しています」
エドワルドは、頷いた。
「だからこそ、この場を用意しました」
*
席に着き、侍従が下がると、室内は静寂に包まれた。
沈黙が、重くない。
言葉を選ぶための時間だ。
「……まず、確認させてください」
エドワルドが口を開いた。
「あなたは、
“王太子妃になること”を目的に、
ここへ来たのではありませんね」
「ええ」
即答だった。
「その立場を、
選択肢として検討する可能性はあります。
ですが、それが目的ではありません」
「理由を」
「私は、自分が
“誰かの隣に立てる人間なのか”を確かめたいのです」
守られる存在か。
飾られる存在か。
それとも――。
「対話し、異論を述べ、
時に反対する立場であっても、
共に進める相手なのか」
エドワルドは、目を細めた。
「……重い問いですね」
「承知しています」
それでも、と続ける。
「軽い問いでは、
人生は選べませんから」
*
彼は、少し考えてから答えた。
「あなたが、
この国に永住する義務はありません」
その言葉に、シルフィーネは驚かなかった。
「必要なのは、
“同じ方向を見ようとする意思”です」
地図の上に、指を置く。
「同意でなくていい。
忠誠でもない。
理解しようとする姿勢です」
それは、かつて彼女が求め、
得られなかったもの。
「……私には、
異論を述べる癖があります」
シルフィーネは、微かに笑った。
「知っています」
即答。
「だから、あなたを呼んだ」
その一言が、
胸の奥に、静かに落ちた。
*
「最後に、私からも確認を」
シルフィーネは、視線をまっすぐ向ける。
「もし、私が――
殿下にとって不都合な意見を述べたとしても」
一拍、置く。
「それでも、
対話を続けるつもりはありますか?」
問いは、鋭い。
だが、攻撃ではない。
エドワルドは、迷わず答えた。
「あります」
理由は、続かない。
だが、それで十分だった。
*
席を立つとき、
二人の間に、微かな変化が生まれていた。
恋ではない。
契約でもない。
――信頼の芽。
それが、静かに、確かに芽吹いた。
「……今日は、ここまでにしましょう」
エドワルドが言う。
「結論を急ぐ場ではありません」
「同感です」
シルフィーネは、微笑んだ。
この国で、
初めて“自分の重さ”を、そのまま置ける場所。
それが、何よりも大切だった。
対話は、始まったばかりだ。
だが、もう――
一方的に選ばれる物語ではない。
二人は、同じ席を立ち、
それぞれの未来へ、静かに歩き出していた。
ノルディア王城に到着したのは、午後の遅い時間だった。
だが、出迎えは最小限。
儀礼も、歓迎の演出もない。
それが、かえって心地よい。
「……お久しぶりです」
案内された応接室で、エドワルドは立ち上がって迎えた。
「お帰りなさい、と言うべきでしょうか」
微笑みは、以前と変わらない。
だが、その眼差しには“結果を求めない余裕”があった。
「今回は、正式な賓客ではありません」
シルフィーネは、はっきりと告げる。
「一人の人間として、
対話の続きをしに来ました」
「承知しています」
エドワルドは、頷いた。
「だからこそ、この場を用意しました」
*
席に着き、侍従が下がると、室内は静寂に包まれた。
沈黙が、重くない。
言葉を選ぶための時間だ。
「……まず、確認させてください」
エドワルドが口を開いた。
「あなたは、
“王太子妃になること”を目的に、
ここへ来たのではありませんね」
「ええ」
即答だった。
「その立場を、
選択肢として検討する可能性はあります。
ですが、それが目的ではありません」
「理由を」
「私は、自分が
“誰かの隣に立てる人間なのか”を確かめたいのです」
守られる存在か。
飾られる存在か。
それとも――。
「対話し、異論を述べ、
時に反対する立場であっても、
共に進める相手なのか」
エドワルドは、目を細めた。
「……重い問いですね」
「承知しています」
それでも、と続ける。
「軽い問いでは、
人生は選べませんから」
*
彼は、少し考えてから答えた。
「あなたが、
この国に永住する義務はありません」
その言葉に、シルフィーネは驚かなかった。
「必要なのは、
“同じ方向を見ようとする意思”です」
地図の上に、指を置く。
「同意でなくていい。
忠誠でもない。
理解しようとする姿勢です」
それは、かつて彼女が求め、
得られなかったもの。
「……私には、
異論を述べる癖があります」
シルフィーネは、微かに笑った。
「知っています」
即答。
「だから、あなたを呼んだ」
その一言が、
胸の奥に、静かに落ちた。
*
「最後に、私からも確認を」
シルフィーネは、視線をまっすぐ向ける。
「もし、私が――
殿下にとって不都合な意見を述べたとしても」
一拍、置く。
「それでも、
対話を続けるつもりはありますか?」
問いは、鋭い。
だが、攻撃ではない。
エドワルドは、迷わず答えた。
「あります」
理由は、続かない。
だが、それで十分だった。
*
席を立つとき、
二人の間に、微かな変化が生まれていた。
恋ではない。
契約でもない。
――信頼の芽。
それが、静かに、確かに芽吹いた。
「……今日は、ここまでにしましょう」
エドワルドが言う。
「結論を急ぐ場ではありません」
「同感です」
シルフィーネは、微笑んだ。
この国で、
初めて“自分の重さ”を、そのまま置ける場所。
それが、何よりも大切だった。
対話は、始まったばかりだ。
だが、もう――
一方的に選ばれる物語ではない。
二人は、同じ席を立ち、
それぞれの未来へ、静かに歩き出していた。
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