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第23話 揺れる王都
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第23話 揺れる王都
王都は、静かにざわついていた。
表向きは、いつも通りの優雅な日常。
だがその内側では、確実に歯車が噛み合わなくなっている。
「……グラーツ公国、また新制度を?」
執務官が差し出した報告書を、重臣の一人が睨みつける。
「はい。
教育制度と職能評価を連動させる改革だそうです」
「馬鹿な……そんなこと、簡単にできるはずがない」
誰かが吐き捨てるように言う。
だが、資料の数字は残酷だった。
・若年層の定着率向上
・技術職の育成速度上昇
・三年後の税収見込み、さらに増加
「……実行している」 「しかも、成果が出ている……」
会議室の空気が、重く沈む。
かつては、王都が“教える側”だった。
制度も、慣例も、ここが中心だった。
それが今や。
「視察を断られ、
協議にも出席せず、
それでも結果だけは積み上げている……」
――完全に、主導権を失っている。
「殿下」
誰かが、恐る恐る声をかける。
視線の先には、レヴァンテがいた。
彼は、黙って報告書を見つめている。
(……俺たちは、何をしていた)
エリーカが去った後、
何一つ、前に進めていない。
調整に時間をかけ、
反対派を宥め、
結局、何も決められない。
それを、“安定”と呼んでいた。
「……呼び戻すべきだ」
誰かが、思い切ったように言った。
「もう一度、正式に要請を」
「だが、断られたではないか」
「条件を出せばいい!
地位、権限、何でも……」
その言葉に、レヴァンテの胸が痛んだ。
(遅い)
もう、“条件”で引き留められる存在ではない。
彼女は、
自分の意思で立つ場所を選んだ。
会議は、混乱したまま終わった。
結論は出ない。
責任も、取られない。
それが、今の王都だった。
一方、グラーツ公国。
私は執務室で、新しい施策の進捗報告を受けていた。
「教育改革、想定より早く成果が出ています」
「ええ。
現場が、自分たちの未来を実感し始めていますから」
アンクレイブは、資料を閉じて言った。
「王都が、騒ぎ始めている」
「でしょうね」
私は淡々と答える。
「失ったものの大きさに、
ようやく気づいたのでしょう」
だが。
それは、もう私の問題ではない。
「後悔は?」
ふと、アンクレイブが問う。
私は、少しだけ考え――首を振った。
「ありません」
即答だった。
「今の私には、
守るべき場所と、やるべき仕事があります」
彼は、短く頷いた。
「なら、それでいい」
王都は揺れている。
焦り、迷い、判断を誤り始めている。
だが私は、
その揺れの外側に立っていた。
――揺れる場所に、戻る理由はない。
そして、王都が本当に理解するのは、
もう少し先の話。
“彼女がいない王都”が、
どれほど脆いかということを。
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王都は、静かにざわついていた。
表向きは、いつも通りの優雅な日常。
だがその内側では、確実に歯車が噛み合わなくなっている。
「……グラーツ公国、また新制度を?」
執務官が差し出した報告書を、重臣の一人が睨みつける。
「はい。
教育制度と職能評価を連動させる改革だそうです」
「馬鹿な……そんなこと、簡単にできるはずがない」
誰かが吐き捨てるように言う。
だが、資料の数字は残酷だった。
・若年層の定着率向上
・技術職の育成速度上昇
・三年後の税収見込み、さらに増加
「……実行している」 「しかも、成果が出ている……」
会議室の空気が、重く沈む。
かつては、王都が“教える側”だった。
制度も、慣例も、ここが中心だった。
それが今や。
「視察を断られ、
協議にも出席せず、
それでも結果だけは積み上げている……」
――完全に、主導権を失っている。
「殿下」
誰かが、恐る恐る声をかける。
視線の先には、レヴァンテがいた。
彼は、黙って報告書を見つめている。
(……俺たちは、何をしていた)
エリーカが去った後、
何一つ、前に進めていない。
調整に時間をかけ、
反対派を宥め、
結局、何も決められない。
それを、“安定”と呼んでいた。
「……呼び戻すべきだ」
誰かが、思い切ったように言った。
「もう一度、正式に要請を」
「だが、断られたではないか」
「条件を出せばいい!
地位、権限、何でも……」
その言葉に、レヴァンテの胸が痛んだ。
(遅い)
もう、“条件”で引き留められる存在ではない。
彼女は、
自分の意思で立つ場所を選んだ。
会議は、混乱したまま終わった。
結論は出ない。
責任も、取られない。
それが、今の王都だった。
一方、グラーツ公国。
私は執務室で、新しい施策の進捗報告を受けていた。
「教育改革、想定より早く成果が出ています」
「ええ。
現場が、自分たちの未来を実感し始めていますから」
アンクレイブは、資料を閉じて言った。
「王都が、騒ぎ始めている」
「でしょうね」
私は淡々と答える。
「失ったものの大きさに、
ようやく気づいたのでしょう」
だが。
それは、もう私の問題ではない。
「後悔は?」
ふと、アンクレイブが問う。
私は、少しだけ考え――首を振った。
「ありません」
即答だった。
「今の私には、
守るべき場所と、やるべき仕事があります」
彼は、短く頷いた。
「なら、それでいい」
王都は揺れている。
焦り、迷い、判断を誤り始めている。
だが私は、
その揺れの外側に立っていた。
――揺れる場所に、戻る理由はない。
そして、王都が本当に理解するのは、
もう少し先の話。
“彼女がいない王都”が、
どれほど脆いかということを。
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