やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き

文字の大きさ
5 / 10

5 予期せぬ事態に若返りました

しおりを挟む
「あの老いぼれが……今度は我が息子を狙っているだと……!」

後日。
仕事で数日屋敷をあけて帰宅したセシルに、セラスが先日図書館で見たことをそのまま話すと、セシルは額に青筋を立てていきなり若返った。そして傍らで本を読んでいるヨハンを抱き締めた。

「お前のことはこの父が護るからな!」
「父さまが兄さまになっちゃった」

セシルは見た目年齢15歳前後に戻っていた。
見た目はヨハンと変わらぬ美少女ぶり。だが中身は39歳の男だ。

「ちょ……まさかヨハンが狙われないよう、囮になるつもりですか?」
「そんなつもりは毛頭ない。だがこの姿なら勢い余ってあの馬鹿ハンスを殴っても重症で済む。これ以上の姿だと筋肉がついてしまうからな」
「な、殴るのですか?  いえ、殴りそうなのですね?」
「ああ。実は今朝屋敷に入る前にちょうど速達人と鉢合わせて、これを渡されたんだ。セラスには見せない方がいいと思って後で燃やしておこうと考えていたのだが……」

セシルが懐から出したもの。
それはハンス・ロッセンからヨハンへの婚約の打診だった。セラスは呆れてものが言えなかった。そしてハンスはどうやってヨハンの所在を調べたのか。打診書の封筒を見るとどうやらハンスは図書館の忘れ物サービスを利用して中身が打診書の手紙をヨハンの忘れ物として王立司書が届ける手配をしていたようだった。
以前ハンスが忍び込んだ夜会でもだが、ハンスは本当にこういうところが狡猾だと、セラスの気が遠くなってきた。だがとうとうキレた。

「全くいい加減にして欲しいわ!  服装は個人の自由だけど、やることなすことまで若い令息達と同じだなんて!」

セラスも15歳前後に見た目を若返らせた。

この姿なら勢い余って馬鹿ハンスの首を絞めてしまっても周りが止めてくれるだろうとセシル同様急ブレーキがかかったのだ。なんせ二十代の頃のセラスは騎士になるべく鍛えていたのだから。その頃のセラスなら現在五十代のハンスを絞めころすくらい徐の口だった。

セラスはハンスの打診書をビリリ!と破り、ヨハンを抱き締めた。

「ヨハン!  貴方は命をかけてもこの母が盾となって護りますからね!」
「……母さままで姉さまになっちゃった」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

真実の愛だった、運命の恋だった。

豆狸
恋愛
だけど不幸で間違っていた。

それでも好きだった。

下菊みこと
恋愛
諦めたはずなのに、少し情が残ってたお話。 主人公は婚約者と上手くいっていない。いつも彼の幼馴染が邪魔をしてくる。主人公は、婚約解消を決意する。しかしその後元婚約者となった彼から手紙が来て、さらにメイドから彼のその後を聞いてしまった。その時に感じた思いとは。 小説家になろう様でも投稿しています。

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

振られたから諦めるつもりだったのに…

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。 自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。 その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。 一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…   婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。

処理中です...