ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星

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・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する

2)森で見つけたもの

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 光が飛んできたのはこの方向で間違いはないらしい。だがやはり指標がズレたようで侍従たちはまだ目当てのモノを見つけられてなかった。俺の勘が当たっていれば、もうひとつ、何か召喚されているはずだ。

「申し訳ございません。光がこちらに向かってきたのは確認できております。恐らくこの辺りかと」
「わかった。見たこともない珍しいものを探してくれ」
「はっ。かしこまりました」

 よくできた従者達だとは思う。主人の命令には従順に動いてくれる。その内容がわからずともだ。我ながら無茶な事を言っている自覚はある。

 森は清々しい空気に満ち溢れていた。爽やかな木々の香り。木漏れ日が、まるで無数のライトのように森の地面を照らしていた。深く息を吸い込めば、湿った土と草木の匂いが鼻腔をくすぐり、どこか懐かしい安堵感に包まれた。枝葉が風にそよぐ音は、まるで森全体が静かに息をしているかのようだった。

「久しぶりに来たがこんなにも気持ちがいい場所だったか?」
「今日は特に空気が澄んでいるようにも思えます」
 従者たちも不思議そうだ。木々が輝いて見える。この辺りはまだ瘴気に侵されてはいないのか?

「エルシド様、動物達が……」
 従者が指差す先では、獣たちが光る何かを囲んでいる。なるほどこれは初めて見る珍しい光景だ。

「そっと近づけ」
 俺達が近づくと動物達が少しづつ後ずさっていく。威嚇はされないようだ。何故なんだ?

「……っ…………」

 今聞こえたのは人の声か?あの光るモノは人なのか?侍従達と目線を合わせ、声のするほうに近寄ると動物達が道をあけた。やがて光が小さくなるとそこにはボロボロの衣服をまとった栗色の髪の少年が転がっていた。

 少年の衣服は引きちぎれていた。この辺りでは見慣れない布地のようだ。動物たちは少年を襲うでもなく、まるで守るように取り囲む。少年の周囲には、微かに光る霧のようなものが漂っている。瘴気とは異なる、何か清らかな気配だ。

 ひょっとしてこの少年のチカラが森に作用しているのだろうか?だからこんなにも森が清らかに輝いて見えるのではないのか?少年に対して一気に期待感が増す。

 顔を覗き込むとなかなか見目が良い外見だった。あどけなさが残る少年に見える。しかも先ほどの少年と同じような履物を履いているではないか。少年は浅い呼吸を繰り返し、額には汗が滲み、指先が微かに震えている。召喚の衝撃を受けたままなのか?

 俺は動物たちを刺激しないように小声で従者達に指示を出した。
「どこかケガをしているのかもしれない。すぐに我が屋敷に連れて行くのだ。気をつけて運べ。丁寧に対応するのだぞ。俺が戻るまでは逃すなよ」

「はっ。かしこまりました」

 この少年を神殿に渡さず、俺の屋敷で囲えば、瘴気浄化の主導権を握れるかもしれない。神殿の召喚儀式に頼らず、王宮の力を示す好機だ。

 神殿の連中がこの少年を見つければ、ゲイルの脂ぎった手が伸びてくるだろう。あいつの「神聖な庇護」とやらで、少年は神殿の傀儡になる。

 だが、ここは神殿の外、つまりはあいつの管轄外。先に見つけたのは俺だ。気兼ねなく保護が出来る。
 
 宰相の俺が手に入れたのだ。どう動かすかは、俺の掌次第だ。まずは我が手に取り込んでおこう。あとあといい手駒になってくれるに違いない。
 
 今回の俺の役目はこれ以上神殿の地位をあげないことだ。瘴気を浄化する事とは別だ。確かに浄化は必要だ。しかしいつまで異世界人に任せるつもりなのだろうか。召喚儀式ができるせいで安易な考えになっているのではないのだろうか?

 俺からすればもっと《自分の頭で考えてみろ!》これに尽きる。だがまあ、使える物は使うに限る。

 異世界人に頼るばかりでは、この国の未来はない。瘴気を浄化する術を、俺たちの手で見つけ出すべきだ。その第一歩として、この少年は使える。

 使えるが……まだ幼さが残っていたな……役目が終わった後は、独り立ちできるまではきちっと保護だけはしてやろう。

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