3 / 99
・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する
2)森で見つけたもの
しおりを挟む
光が飛んできたのはこの方向で間違いはないらしい。だがやはり指標がズレたようで侍従たちはまだ目当てのモノを見つけられてなかった。俺の勘が当たっていれば、もうひとつ、何か召喚されているはずだ。
「申し訳ございません。光がこちらに向かってきたのは確認できております。恐らくこの辺りかと」
「わかった。見たこともない珍しいものを探してくれ」
「はっ。かしこまりました」
よくできた従者達だとは思う。主人の命令には従順に動いてくれる。その内容がわからずともだ。我ながら無茶な事を言っている自覚はある。
森は清々しい空気に満ち溢れていた。爽やかな木々の香り。木漏れ日が、まるで無数のライトのように森の地面を照らしていた。深く息を吸い込めば、湿った土と草木の匂いが鼻腔をくすぐり、どこか懐かしい安堵感に包まれた。枝葉が風にそよぐ音は、まるで森全体が静かに息をしているかのようだった。
「久しぶりに来たがこんなにも気持ちがいい場所だったか?」
「今日は特に空気が澄んでいるようにも思えます」
従者たちも不思議そうだ。木々が輝いて見える。この辺りはまだ瘴気に侵されてはいないのか?
「エルシド様、動物達が……」
従者が指差す先では、獣たちが光る何かを囲んでいる。なるほどこれは初めて見る珍しい光景だ。
「そっと近づけ」
俺達が近づくと動物達が少しづつ後ずさっていく。威嚇はされないようだ。何故なんだ?
「……っ…………」
今聞こえたのは人の声か?あの光るモノは人なのか?侍従達と目線を合わせ、声のするほうに近寄ると動物達が道をあけた。やがて光が小さくなるとそこにはボロボロの衣服をまとった栗色の髪の少年が転がっていた。
少年の衣服は引きちぎれていた。この辺りでは見慣れない布地のようだ。動物たちは少年を襲うでもなく、まるで守るように取り囲む。少年の周囲には、微かに光る霧のようなものが漂っている。瘴気とは異なる、何か清らかな気配だ。
ひょっとしてこの少年のチカラが森に作用しているのだろうか?だからこんなにも森が清らかに輝いて見えるのではないのか?少年に対して一気に期待感が増す。
顔を覗き込むとなかなか見目が良い外見だった。あどけなさが残る少年に見える。しかも先ほどの少年と同じような履物を履いているではないか。少年は浅い呼吸を繰り返し、額には汗が滲み、指先が微かに震えている。召喚の衝撃を受けたままなのか?
俺は動物たちを刺激しないように小声で従者達に指示を出した。
「どこかケガをしているのかもしれない。すぐに我が屋敷に連れて行くのだ。気をつけて運べ。丁寧に対応するのだぞ。俺が戻るまでは逃すなよ」
「はっ。かしこまりました」
この少年を神殿に渡さず、俺の屋敷で囲えば、瘴気浄化の主導権を握れるかもしれない。神殿の召喚儀式に頼らず、王宮の力を示す好機だ。
神殿の連中がこの少年を見つければ、ゲイルの脂ぎった手が伸びてくるだろう。あいつの「神聖な庇護」とやらで、少年は神殿の傀儡になる。
だが、ここは神殿の外、つまりはあいつの管轄外。先に見つけたのは俺だ。気兼ねなく保護が出来る。
宰相の俺が手に入れたのだ。どう動かすかは、俺の掌次第だ。まずは我が手に取り込んでおこう。あとあといい手駒になってくれるに違いない。
今回の俺の役目はこれ以上神殿の地位をあげないことだ。瘴気を浄化する事とは別だ。確かに浄化は必要だ。しかしいつまで異世界人に任せるつもりなのだろうか。召喚儀式ができるせいで安易な考えになっているのではないのだろうか?
俺からすればもっと《自分の頭で考えてみろ!》これに尽きる。だがまあ、使える物は使うに限る。
異世界人に頼るばかりでは、この国の未来はない。瘴気を浄化する術を、俺たちの手で見つけ出すべきだ。その第一歩として、この少年は使える。
使えるが……まだ幼さが残っていたな……役目が終わった後は、独り立ちできるまではきちっと保護だけはしてやろう。
「申し訳ございません。光がこちらに向かってきたのは確認できております。恐らくこの辺りかと」
「わかった。見たこともない珍しいものを探してくれ」
「はっ。かしこまりました」
よくできた従者達だとは思う。主人の命令には従順に動いてくれる。その内容がわからずともだ。我ながら無茶な事を言っている自覚はある。
森は清々しい空気に満ち溢れていた。爽やかな木々の香り。木漏れ日が、まるで無数のライトのように森の地面を照らしていた。深く息を吸い込めば、湿った土と草木の匂いが鼻腔をくすぐり、どこか懐かしい安堵感に包まれた。枝葉が風にそよぐ音は、まるで森全体が静かに息をしているかのようだった。
「久しぶりに来たがこんなにも気持ちがいい場所だったか?」
「今日は特に空気が澄んでいるようにも思えます」
従者たちも不思議そうだ。木々が輝いて見える。この辺りはまだ瘴気に侵されてはいないのか?
「エルシド様、動物達が……」
従者が指差す先では、獣たちが光る何かを囲んでいる。なるほどこれは初めて見る珍しい光景だ。
「そっと近づけ」
俺達が近づくと動物達が少しづつ後ずさっていく。威嚇はされないようだ。何故なんだ?
「……っ…………」
今聞こえたのは人の声か?あの光るモノは人なのか?侍従達と目線を合わせ、声のするほうに近寄ると動物達が道をあけた。やがて光が小さくなるとそこにはボロボロの衣服をまとった栗色の髪の少年が転がっていた。
少年の衣服は引きちぎれていた。この辺りでは見慣れない布地のようだ。動物たちは少年を襲うでもなく、まるで守るように取り囲む。少年の周囲には、微かに光る霧のようなものが漂っている。瘴気とは異なる、何か清らかな気配だ。
ひょっとしてこの少年のチカラが森に作用しているのだろうか?だからこんなにも森が清らかに輝いて見えるのではないのか?少年に対して一気に期待感が増す。
顔を覗き込むとなかなか見目が良い外見だった。あどけなさが残る少年に見える。しかも先ほどの少年と同じような履物を履いているではないか。少年は浅い呼吸を繰り返し、額には汗が滲み、指先が微かに震えている。召喚の衝撃を受けたままなのか?
俺は動物たちを刺激しないように小声で従者達に指示を出した。
「どこかケガをしているのかもしれない。すぐに我が屋敷に連れて行くのだ。気をつけて運べ。丁寧に対応するのだぞ。俺が戻るまでは逃すなよ」
「はっ。かしこまりました」
この少年を神殿に渡さず、俺の屋敷で囲えば、瘴気浄化の主導権を握れるかもしれない。神殿の召喚儀式に頼らず、王宮の力を示す好機だ。
神殿の連中がこの少年を見つければ、ゲイルの脂ぎった手が伸びてくるだろう。あいつの「神聖な庇護」とやらで、少年は神殿の傀儡になる。
だが、ここは神殿の外、つまりはあいつの管轄外。先に見つけたのは俺だ。気兼ねなく保護が出来る。
宰相の俺が手に入れたのだ。どう動かすかは、俺の掌次第だ。まずは我が手に取り込んでおこう。あとあといい手駒になってくれるに違いない。
今回の俺の役目はこれ以上神殿の地位をあげないことだ。瘴気を浄化する事とは別だ。確かに浄化は必要だ。しかしいつまで異世界人に任せるつもりなのだろうか。召喚儀式ができるせいで安易な考えになっているのではないのだろうか?
俺からすればもっと《自分の頭で考えてみろ!》これに尽きる。だがまあ、使える物は使うに限る。
異世界人に頼るばかりでは、この国の未来はない。瘴気を浄化する術を、俺たちの手で見つけ出すべきだ。その第一歩として、この少年は使える。
使えるが……まだ幼さが残っていたな……役目が終わった後は、独り立ちできるまではきちっと保護だけはしてやろう。
567
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結】あなたのいない、この異世界で。
Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」
最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。
そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。
亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。
「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」
ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。
彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。
悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。
※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。
ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる