ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星

文字の大きさ
38 / 99
・腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する

37)隠し子? sideイブキ

しおりを挟む
 屋敷に戻ってからはまた以前と変わらない日々を過ごしている。エルシドは忙しいようで、ほとんど顔を合わせていない。瘴気の浄化が本格化してきたらしく王宮に呼び出されることが多くなったようだ。

「イブ様、申し訳ありません。本日は私もエルシド様の護衛で王宮に出向かないといけなくなりました。中庭にはクルトと一緒に行ってもらえますか?」
 日課にしている庭の散策ぐらいなら、もう一人で行けるのに。屋敷の皆は僕に甘すぎると思う。

「わかりました。もうだいぶと屋敷の周辺は覚えたので迷子になる事もないと思います」
「はい。敷地内には結界が張られていますので心配はないと思いますが」
「ふふ。デニスさんは心配性ですね。大丈夫ですよ」

 昼食の後、クルトと一緒に図書室で勉強をする。クルトは文字を。僕は魔道具の扱い方を習っている。クラークさんにチカラを使う練習がしたいと言ったら、ではまずは魔道具の使い方を覚えましょうかと言われた。魔道具を扱うのにもごく少量のチカラを使うのだそうだ。魔道具には種類があって生活魔道具だけでなく、武器として使える物もあった。

 本当は戦いたくなんかはない。だけどエルシドと一緒に居るなら自分の身を守ることぐらいはできないといけないと気づく。そのためにいろいろ試したのだが、僕に攻撃魔法は使えない事が分かった。まあモブだしね。

 でもちょっとした生活魔法ぐらいなら使える様になった。浮遊ライトを呼び寄せたり、カーテンを開け閉めしたりとかね。武器として使える魔道具に関しては騎士が使う戦闘用の物が多くて僕には重いし大きすぎる。これは今クラークさんと相談中だ。

「今日はこのくらいにしておきましょうか?」
「はい。ありがとうございます」
 今日は生活魔法のおさらいだったのでメイドさんから教わっていた。

「あれ?クルト寝てるの?」
 僕の隣で文字の練習をしていたはずのクルトが眠りこけていた。やけにおとなしいと思ってたのだがこの年で屋敷の手伝いをしながら勉強をするのは大変だろう。クルトは貧民街で倒れていたところをエルシドに拾われたらしい。だからエルシドには恩を感じているようだ。

「あらら。しょうがないですね。起こしましょうか?」
「いえ。もう少し寝かせてあげてください」

 クルトの事はメイドさんにお任せした。デニスには一人で中庭に出ない様にと言われていたがユキも一緒だしいいかな?。たまには一人でゆっくり外の空気を吸ってみたい。



 ぱたぱたぱた……。

「ユキ上手になったね」
 ユキは飛ぶのが上手くなった。綺麗な羽が生えてきた。見た目はまだ毛玉のようだが、羽の部分だけ綺麗に生えそろえてきたようだ。

 この世界のオウルは少しづつ成長してくようで、傍で観察できる機会を得た僕は幸せだと思う。  
 ただ着地がまだ下手なのだ。追い風に乗って自分の着地したいところまで飛ぶのだが、風に乗りすぎて違う場所に降りてしまうらしい。


「あっだめだよ。そっちは敷地外になっちゃうよ」
 風に乗りすぎてユキがいつもと違う方向に飛んでいく。慌てて追いかけると敷地を囲んでいる木々の合間にユキが降りたようだった。ここは敷地の境界にあたる場所だろう。ユキは境界の向こう側にいる。手を伸ばすとぱちんっと音がして道が見えた。結界が綻んだのか?石畳が続いてるのが見える。

「これって連絡通路なのかな?」
 こんな場所に道があるなんて気づかなかった。いつも皆から敷地から出てはいけないと言われていたからこんな端まで行ったことはなかったのだ。しばらく使われてないのか雑草がかなり伸びていた。

「行ってみようか?」
「ピィ」

 クラークさんに見つかると叱られるかもしれない。でもこの先に何があるのかが知りたかった。屋敷とこの先が繋がっているならブラッドフォード家と関りがあるはずだからだ。


「誰?誰かいるの?」
 少し進んだところで誰かの声が聞こえた。子供の声なのか?

「怪しいモノじゃないです。僕はイブキと言います」
 僕は出来るだけゆっくりと大きな声で名乗った。
「イブキ?向こうの屋敷の者じゃないんだな?」
 現れたのはエルシドのミニチュア版のような銀髪碧眼の少年だ。隠し子なのか?クルトぐらいに見える。

「えっと。……屋敷には置いてもらっています」
「客人なのか?」
「そうです」
 クラークさんがそう言っていたから客人でも嘘ではないだろう。今すぐ全部を説明するのは難しい。

「ふうん。……ぼくはラインフェルト・ジュニアだ」
「へえ。ラインフェルトってかっこいい名前ですね」
「そ、そうなんだ!カッコいいだろう?」
 名前を褒められて喜ぶなんて可愛いな。なんだか幼いエルシドと話しているみたいだ。辺りを見渡すと、どうやら別の敷地内のようだ。でも繋がっているのに行き来がされていないっていうのはどういうことなのだろう。

から人が来るのは久しぶりだ」
「そうなんですね。ここはラインフェルトの屋敷なの?」

「そうだ。今日は母様のお見舞いに来たのだ」
「お見舞いって。お母さんって体調が良くないんですか?」

「ずっと寝込んでいる。僕は普段は寄宿学校にいるんだが、今日は母様の誕生日だったんだ」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

愛しの妻は黒の魔王!?

ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」 ――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。 皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。 身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。 魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。 表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます! 11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」 最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。 そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。 亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。 「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」 ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。 彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。 悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。 ※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。   ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...