【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星

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6 ハッキング 

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「しゅ、しゅらうど?」
「お前は無自覚すぎる」
「あ、あの。よくわかりませんが、心拍数が上がってまた昨日のように熱がでるかもしれないので、離れてください」
「だめだ。密着しているほうがお前に俺の魔力を供給しやすい」
「あ、そういう意味でしたか」
 僕がまた昨日みたいにならないようにくっついてくれているのか。後ろから抱え込まれるように抱きしめられると体格差を感じる。僕の頭の上にシュラウドのあごがあたる。わざとか?気になってしまうが、そのほうが集中しすぎないからいいのかもしれない。
「魔力を全力こめるのではなく、少しずつ指先から流す感じでやってみるんだ」
「わかりました」
 入力画面が現れ、パスワードを要求される。頭に浮かんだ記号を入力するとあっけなく登録が完了した。
「……パスワードを知っていたのか?」
「頭に浮かんだのです」
 久しぶりのタッチタイピングに楽しくなる。ハッキングなんてやったことがなかったが、ジェレミアの情報はガードが緩く、なんなく突破する。驚くほど、いろいろな内容が出てくる。僕を陥れるためにこんな小細工をしていたのか。
「恐喝、贈賄、横領か……念のために聞くが身に覚えは?」
「ありませんってば!」
 なんてことだ、どれもこれも僕の名前で行っていたなんて! ジェレミアがやったのか?いや、あいつはまだ16歳になったばかりだ。やはり、バックについているのは正室派か。
「ほかにも余罪がありそうだな」
「ええ。ジェレミアのコード記録から本家のヴァルトゼーレにハックが可能です。見てみましょう」
【マスタールーン】【ハッキング拒否】【遮断サレマシタ】
 画面が点滅する。相手のセキュリティが発動したんだな。これくらいなら想定内だ。
「ネットワークから侵入し、無効化します」
 先ほどから頭の中で文字が浮かぶ。これが僕の魔力の根源なんだな。

【コード・ゼロ!】

 僕の言葉と共に、システムが構築しだす。打ち込むソースコードが次々に浮かんでくる。ヴァルトゼーレ家のセキュリティが書き換えられ、内情が明らかになり、数々の不正な資金が、この国の皇太子に流れていることまでわかってしまった。
「なんだと……皇太子が?」
「この国の資源を独占しようとしているみたいですね」
 なんてことだ。侯爵家と国家の癒着が明らかになるなんて。正室派と側室派で敵対を繰り替えしていただけじゃなかったのか。これはヴァルトゼーレ家だけの話ではない。冤罪を晴らそうとしたら国家権力に巻き込まれそうになる。

「まずいな」
「そうですね。どうしましょう?」
「いったん休憩することだな」
「へ?休憩ですか?」
 どうして?まずいなって、シュラウドの発言は、今の状況についてではないのか。少しでもこの問題を解決しないといけないはずでは……? と思っているとシュラウドが僕をいきなりお姫様抱っこにして持ち上げた。



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