12 / 46
10出会い
しおりを挟む
侯爵子息ルーン・ヴァルトゼーレ。あれが公爵家のノンコードだと。蔑されているのを何度か見たことがある。彼自身、自分をノンコードだと諦めてるようで、俯きがちで背中を丸め、あまり目立たないようにしていた。貴族なのに珍しく魔力がないのだなと、少しだけ興味を持ったのがきっかけである。
それからしばらくして、平民街でまた彼をみかけた。平民街は洗練された宮殿の内部と違い、あちこちに茶色の土がみえる。俺の肌の色だ。ここにはまだ本物の緑が残っている。青々としげる若葉をみると不思議と気持ちが落ち着いた。
ここと違って、中央都市はコードで埋め尽くされている。魔力持ち達がすぐに魔法を使えるようにするためだ。埋め込まれているコードに魔力を流すだけで明かりがつき、扉が開く。上流階級では魔力があるものがすべてだ。
平民街にはノンコードが多い。自分の力で作業をする。そのため時間もかかるし労力もいる。
「この植物はもう少し日の当たる場所に移動させましょうか?」
どこかで聞いた声だと振り向くとルーンがいた。晴天の空のような青い瞳。はにかむような笑顔がまぶしかった。こんなに可愛い少年だったのかと、思わず、建物の影に隠れてしまう。貴族街では常に俯いて人に気づかれないように、存在を消していたのだな。
しかし、なぜこんな場所に? 屋敷を抜け出してきているのだろうか?
「ここは緑化区域なんだが、土で汚れるのを嫌がって、最近はボランティアにきてくれる若い子が少なくってさ。助かるよ」
なるほど花壇整備をしているのか? ははは。と平民達と笑い合うルーンがとてもいきいきとしいる。
たまに中央で見かけるときは、誰かに絡まれているか、遠巻きにされている事が多かった。公爵家のため、暴力沙汰にはならなかったが、陰でこそこそと噂する輩は多かった。みっともない。陰口しか叩くことが出来ぬ奴らめ。
ノンコードがなんだというのだ。少しくらい魔力があるからと、平民をいたぶることしか出来ない貴族どもには辟易する。
平民街の余韻に浸りながら中央都市に戻ると小競り合いが目についた。貴族の子息か?傲慢そうな言葉遣いや態度を見て、ムカついてきた。ルーンはもっと明るく爽やかだったのに。同じ年位のせいか、どうしても比べてしまう。
「おい。ジェレミア。お前が嫡男じゃねえって聞いたぞ」
「うるさい! 俺があの家を継ぐ事になっているんだ」
「それって間違えはないんだよな?」
「お前に回した資金。あてにしてるんだぜ」
「でも、ノンコードでもあいつが兄貴なんだろ?」
「あいつがこの俺と血がつながっていると?笑わせるな! 侯爵家は魔力持ちの家だ。魔力がないゴミなど、俺とは何の関係もない」
ひどい言いぐさだと思った。貴族の間でノンコードと言えば、ルーン・ヴァルトゼーレしか思い当たらない。今のはルーンの弟なのか?
「シュラウド団長! ここにいらしたのですか?」
副団長の一人がやってきた。俺は一人で行動することが多い。戦い以外に俺が出る幕はないからだ。騎士団員のほとんどは皇太子や中央役員の息がかかったものだ。俺が執務に関わる方が嫌がられる。
「どうした?」
「騒ぎ声が聞こえたので見回っておりました」
「それはあいつらか?」
「ああ。侯爵家と伯爵家の子息達でしたか。どうりでデカい声が響いているはずですね」
「あいつらは噂好きなようだぞ?」
「ははは。おおかた、ノンコードの子息の話でしょう」
「なぜわかる?」
それからしばらくして、平民街でまた彼をみかけた。平民街は洗練された宮殿の内部と違い、あちこちに茶色の土がみえる。俺の肌の色だ。ここにはまだ本物の緑が残っている。青々としげる若葉をみると不思議と気持ちが落ち着いた。
ここと違って、中央都市はコードで埋め尽くされている。魔力持ち達がすぐに魔法を使えるようにするためだ。埋め込まれているコードに魔力を流すだけで明かりがつき、扉が開く。上流階級では魔力があるものがすべてだ。
平民街にはノンコードが多い。自分の力で作業をする。そのため時間もかかるし労力もいる。
「この植物はもう少し日の当たる場所に移動させましょうか?」
どこかで聞いた声だと振り向くとルーンがいた。晴天の空のような青い瞳。はにかむような笑顔がまぶしかった。こんなに可愛い少年だったのかと、思わず、建物の影に隠れてしまう。貴族街では常に俯いて人に気づかれないように、存在を消していたのだな。
しかし、なぜこんな場所に? 屋敷を抜け出してきているのだろうか?
「ここは緑化区域なんだが、土で汚れるのを嫌がって、最近はボランティアにきてくれる若い子が少なくってさ。助かるよ」
なるほど花壇整備をしているのか? ははは。と平民達と笑い合うルーンがとてもいきいきとしいる。
たまに中央で見かけるときは、誰かに絡まれているか、遠巻きにされている事が多かった。公爵家のため、暴力沙汰にはならなかったが、陰でこそこそと噂する輩は多かった。みっともない。陰口しか叩くことが出来ぬ奴らめ。
ノンコードがなんだというのだ。少しくらい魔力があるからと、平民をいたぶることしか出来ない貴族どもには辟易する。
平民街の余韻に浸りながら中央都市に戻ると小競り合いが目についた。貴族の子息か?傲慢そうな言葉遣いや態度を見て、ムカついてきた。ルーンはもっと明るく爽やかだったのに。同じ年位のせいか、どうしても比べてしまう。
「おい。ジェレミア。お前が嫡男じゃねえって聞いたぞ」
「うるさい! 俺があの家を継ぐ事になっているんだ」
「それって間違えはないんだよな?」
「お前に回した資金。あてにしてるんだぜ」
「でも、ノンコードでもあいつが兄貴なんだろ?」
「あいつがこの俺と血がつながっていると?笑わせるな! 侯爵家は魔力持ちの家だ。魔力がないゴミなど、俺とは何の関係もない」
ひどい言いぐさだと思った。貴族の間でノンコードと言えば、ルーン・ヴァルトゼーレしか思い当たらない。今のはルーンの弟なのか?
「シュラウド団長! ここにいらしたのですか?」
副団長の一人がやってきた。俺は一人で行動することが多い。戦い以外に俺が出る幕はないからだ。騎士団員のほとんどは皇太子や中央役員の息がかかったものだ。俺が執務に関わる方が嫌がられる。
「どうした?」
「騒ぎ声が聞こえたので見回っておりました」
「それはあいつらか?」
「ああ。侯爵家と伯爵家の子息達でしたか。どうりでデカい声が響いているはずですね」
「あいつらは噂好きなようだぞ?」
「ははは。おおかた、ノンコードの子息の話でしょう」
「なぜわかる?」
114
あなたにおすすめの小説
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
貧乏貴族は婿入りしたい!
おもちDX
BL
貧乏貴族でオメガのジューノは、高位貴族への婿入りが決まって喜んでいた。それなのに、直前に現れたアルファによって同意もなく番(つがい)にされてしまう。
ジューノは憎き番に向かって叫ぶしかない。
「ふざけんなぁぁぁ!」
安定した生活を手に入れたかっただけの婿入りは、いったいどうなる!?
不器用騎士アルファ×貧乏オメガ
別サイトにて日間1位、週間2位を記録した作品。
ゆるっとファンタジーでオメガバースも独自の解釈を含みます。深く考えずに楽しんでいただけると幸いです。
表紙イラストはpome村さん(X @pomemura_)に描いていただきました。
あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~
竜鳴躍
BL
―政略結婚の相手から虐げられ続けた主人公は、ずっと見守ってくれていた騎士と…―
アミュレット=バイス=クローバーは大国の間に挟まれた小国の第二王子。
オオバコ王国とスズナ王国との勢力の調整弁になっているため、オオバコ王国の王太子への嫁入りが幼い頃に決められ、護衛のシュナイダーとともにオオバコ王国の王城で暮らしていた。
クローバー王国の王族は、男子でも出産する能力があるためだ。
しかし、婚約相手は小国と侮り、幼く丸々としていたアミュレットの容姿を蔑み、アミュレットは虐げられ。
ついには、シュナイダーと逃亡する。
実は、アミュレットには不思議な力があり、シュナイダーの正体は…。
<年齢設定>※当初、一部間違っていたので修正済み(2023.8.14)
アミュレット 8歳→16歳→18歳予定
シュナイダー/ハピネス/ルシェル 18歳→26歳→28歳予定
アクセル 10歳→18歳→20歳予定
ブレーキ 6歳→14歳→16歳予定
婚約破棄されるなり5秒で王子にプロポーズされて溺愛されてます!?
野良猫のらん
BL
侯爵家次男のヴァン・ミストラルは貴族界で出来損ない扱いされている。
なぜならば精霊の国エスプリヒ王国では、貴族は多くの精霊からの加護を得ているのが普通だからだ。
ところが、ヴァンは風の精霊の加護しか持っていない。
とうとうそれを理由にヴァンは婚約破棄されてしまった。
だがその場で王太子ギュスターヴが現れ、なんとヴァンに婚約を申し出たのだった。
なんで!? 初対面なんですけど!?!?
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!
竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。
侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。
母が亡くなるまでは。
母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。
すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。
実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。
2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる