【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星

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10出会い

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 侯爵子息ルーン・ヴァルトゼーレ。あれが公爵家のノンコードだと。蔑されているのを何度か見たことがある。彼自身、自分をノンコードだと諦めてるようで、俯きがちで背中を丸め、あまり目立たないようにしていた。貴族なのに珍しく魔力がないのだなと、少しだけ興味を持ったのがきっかけである。

 それからしばらくして、平民街でまた彼をみかけた。平民街は洗練された宮殿の内部と違い、あちこちに茶色の土がみえる。俺の肌の色だ。ここにはまだ本物の緑が残っている。青々としげる若葉をみると不思議と気持ちが落ち着いた。
 ここと違って、中央都市はコードで埋め尽くされている。魔力持ち達がすぐに魔法を使えるようにするためだ。埋め込まれているコードに魔力を流すだけで明かりがつき、扉が開く。上流階級では魔力があるものがすべてだ。

 平民街にはノンコードが多い。自分の力で作業をする。そのため時間もかかるし労力もいる。
「この植物はもう少し日の当たる場所に移動させましょうか?」
 どこかで聞いた声だと振り向くとルーンがいた。晴天の空のような青い瞳。はにかむような笑顔がまぶしかった。こんなに可愛い少年だったのかと、思わず、建物の影に隠れてしまう。貴族街では常に俯いて人に気づかれないように、存在を消していたのだな。
 しかし、なぜこんな場所に? 屋敷を抜け出してきているのだろうか?
「ここは緑化区域なんだが、土で汚れるのを嫌がって、最近はボランティアにきてくれる若い子が少なくってさ。助かるよ」
 なるほど花壇整備をしているのか? ははは。と平民達と笑い合うルーンがとてもいきいきとしいる。

 たまに中央で見かけるときは、誰かに絡まれているか、遠巻きにされている事が多かった。公爵家のため、暴力沙汰にはならなかったが、陰でこそこそと噂する輩は多かった。みっともない。陰口しか叩くことが出来ぬ奴らめ。
ノンコードがなんだというのだ。少しくらい魔力があるからと、平民をいたぶることしか出来ない貴族どもには辟易する。


 平民街の余韻に浸りながら中央都市に戻ると小競り合いが目についた。貴族の子息か?傲慢そうな言葉遣いや態度を見て、ムカついてきた。ルーンはもっと明るく爽やかだったのに。同じ年位のせいか、どうしても比べてしまう。

「おい。ジェレミア。お前が嫡男じゃねえって聞いたぞ」
「うるさい! 俺があの家を継ぐ事になっているんだ」
「それって間違えはないんだよな?」
「お前に回した資金。あてにしてるんだぜ」
「でも、ノンコードでもあいつが兄貴なんだろ?」
「あいつがこの俺と血がつながっていると?笑わせるな! 侯爵家は魔力持ちの家だ。魔力がないゴミなど、俺とは何の関係もない」
 ひどい言いぐさだと思った。貴族の間でノンコードと言えば、ルーン・ヴァルトゼーレしか思い当たらない。今のはルーンの弟なのか?

「シュラウド団長! ここにいらしたのですか?」
 副団長の一人がやってきた。俺は一人で行動することが多い。戦い以外に俺が出る幕はないからだ。騎士団員のほとんどは皇太子や中央役員の息がかかったものだ。俺が執務に関わる方が嫌がられる。
「どうした?」
「騒ぎ声が聞こえたので見回っておりました」
「それはあいつらか?」
「ああ。侯爵家と伯爵家の子息達でしたか。どうりでデカい声が響いているはずですね」
「あいつらは噂好きなようだぞ?」
「ははは。おおかた、ノンコードの子息の話でしょう」
「なぜわかる?」


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