スルドの声(交響) primeira desejo

桜のはなびら

文字の大きさ
97 / 155
本章

94

しおりを挟む
「はいっ!」

 祷にプレゼンターとして呼ばれたわたしは、明瞭さを意識し滑舌良く大きな声で返事をした。つもりだったが、少し上擦ってしまった。

「あ、改めまして、姫田願子です。今回の企画について、ご説明させていただきます」

 プレゼンの内容は事前に祷のチェックを受けている。祷を相手に練習もした。台本は資料に記載されている。飛んでしまうということはない。落ち着いて読み進めれば良いのだ。
 できる。
 できるはず。大丈夫。

 ひとつゆっくりと息を吸い、吐く。

「この企画は、『阿波ゼルコーバ』のファン感謝祭に来られるファンの方を対象に、感謝祭内のパフォーマンスにて、選手の普段見られない姿などを楽しんでいただくことで、ファン感謝祭の効果を高めることを目的としています」

 安達さんは資料を見ながら頷いている。
 聴き方の印象が良く、話し手をリラックスさせてくれる。
「資料を一ページ進めてください」というと、素直にページをめくってくれた。
 祷たちも同様にページを捲る。紙が捲れる音が止まるのを待ち、先に進めた。

 資料には企画の効果を端的に表した四つのキーワードがシンプルに並べられていた。

「ファン満足度を高めることで得られる具体的な効果は四つです。
ファンのチームへの帰属意識を高める。
満足したファンによる発信による二次的、三次的な広報効果とブランディング効果。
イベント自体の成功による次回以降のイベントへの期待値を高め、商業的成功がよりしやすくなる土台を作る効果。イベント自体の経費減と収益増に繋がります」

 キーワードのみの資料を指しながら、口頭の説明で補う。

 またページを巡り、具体的な施策についての説明へと入っていく。

 サッカーやサッカー選手と親和性のあるサンバという文化を取り入れること。
 サンバはダンス、ダンサー、音楽、歌、リズム、派手、賑やか、楽しい、といった属性を持つ。
 メインとなるダンサーとダンスを用いたコンテンツのほか、既存コンテンツの盛り上げ役などを担える点でのコストパフォーマンスの高さも訴えた提案をひととおり伝えた。
 次いで予算観と経済効果。予算観の絡みで提案内容の規模も伝える。そこには地元のサンバチームとの連携についての記載と説明もあった。
 これは単にパフォーマンスの規模と費用に関する価値の提案だけではなく、地元貢献という地域に根付く必要のあるサッカーのクラブチームが背負っている義務と責任の一部を担える価値を提供できることも意味していた。
 ニュースソースとしての価値もあり、その方面でも二次的な広報効果が期待できる。

 イベント自体が楽しく、選手が楽しめファンが盛り上がれる。その結果チームの収益や広報、地域貢献に寄与できるというのがこの企画の本筋だ。
 チームにもたらすことのできるメリットは、スポンサーである姫田グループへのイメージ向上の効果も期待できる。
 創業の地である地元貢献のほか、ファンがスポンサーに好印象を持つことは広報的な価値のほか、チーム、ファン、スポンサーを一枚岩にすることで得られる底堅い強さをもたらす。
 また、ファンの数やファンからの収益がチームにもたらされれば、自ずとチームの強化に繋がり、チームが強くなればなるほどスポンサーへの広報的な還元や直接的な収益増が見込める。


 安達さんの反応は悪くはない。
 但し、聴き役としての配慮に長けた方だ。見た目の表情やリアクションが本音を語っているとは限らない。

「楽しい」ことが大前提の企画である。
 続く実演にて、その魅力を直接体感してもらわなくてはならない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら
キャラ文芸
恵まれた能力と資質をフル活用し、望まれた在り方を、望むように実現してきた彼女。 長子としての在り方を求められれば、理想の姉として振る舞った。 客観的な評価は充分。 しかし彼女自身がまだ満足していなかった。 周囲の望み以上に、妹を守りたいと望む彼女。彼女にとって、理想の姉とはそういう者であった。 理想の姉が守るべき妹が、ある日スルドと出会う。 姉として、見過ごすことなどできようもなかった。 ※当作品は単体でも成立するように書いていますが、スルドの声(交響) primeira desejo の裏としての性質を持っています。 各話のタイトルに(LINK:primeira desejo〇〇)とあるものは、スルドの声(交響) primeira desejoの○○話とリンクしています。 表紙はaiで作成しています

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら
現代文学
 日々を楽しく生きる。  望にとって、それはなによりも大切なこと。  大げさな夢も、大それた目標も、無くたって人生の価値が下がるわけではない。  それでも、心の奥に燻る思いには気が付いていた。  向かうべき場所。  到着したい場所。  そこに向かって懸命に突き進んでいる者。  得るべきもの。  手に入れたいもの。  それに向かって必死に手を伸ばしている者。  全部自分の都合じゃん。  全部自分の欲得じゃん。  などと嘯いてはみても、やっぱりそういうひとたちの努力は美しかった。  そういう対象がある者が羨ましかった。  望みを持たない望が、望みを得ていく物語。

千紫万紅のパシスタ 累なる色編

桜のはなびら
キャラ文芸
 文樹瑠衣(あやきるい)は、サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の立ち上げメンバーのひとりを祖父に持ち、母の茉瑠(マル、サンバネームは「マルガ」)とともに、ダンサーとして幼い頃から活躍していた。  周囲からもてはやされていたこともあり、レベルの高いダンサーとしての自覚と自負と自信を持っていた瑠衣。  しかし成長するに従い、「子どもなのに上手」と言うその付加価値が薄れていくことを自覚し始め、大人になってしまえば単なる歴の長いダンサーのひとりとなってしまいそうな未来予想に焦りを覚えていた。  そこで、名実ともに特別な存在である、各チームに一人しか存在が許されていないトップダンサーの称号、「ハイーニャ・ダ・バテリア」を目指す。  二十歳になるまで残り六年を、ハイーニャになるための六年とし、ロードマップを計画した瑠衣。  いざ、その道を進み始めた瑠衣だったが......。 ※表紙はaiで作成しています

処理中です...