スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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改めて、顔合わせ

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(色部 誉)


 私も要さんもしょーちゃんと遊佐さんのことは知っているので、しょーちゃんに紹介をしてもらいながら、まずは会社員である小国さんと名刺交換を済ませる。

 
「改めまして、小国です」
「色部です、よろしくお願いします」
「上杉です。お名前、真幌さんておっしゃるんですね」
 
「格好良い名前だよね! ね、気付いた? 誉ちゃんと名前似てるよね」
 
 あ、ほんとだ。
 
 場の雰囲気を和ませようとしてくれたのか、しょーちゃんが明るく言い、小国さんも、それを言われてどうしろとって思いそうなものだが、照れたように笑っている。照れるような内容ではないのだから、これもまた一瞬ぴりついた空気を和らげるための演技だろうか。
 
 社会人って、大変だなぁ。
 まあそんな気遣いとは無用な社会人もいるようだが。
 
「合コン会場かここはよ? 余計なやり取りは端折んじゃなかったか?」
「そうですよ。集団をまとめ上げる監督ならご存じの通り、アイスブレークは余計ではないでしょう?」
 
 それがアイスブレークであることを開示してしまうのは、挨拶時の雑談という立ち位置の場合はどうなんだろうと思わなくもないが、この監督にはストレートで端的な言葉の方が伝わりやすいのかもしれない。
 それにしても小国さん、にこやかな笑顔で丁寧な物腰だけど、意外と監督とは真っ向からぶつかっている。この感じの監督なら、それに対して怒ったりしそうなものだが、多少不機嫌そうな様子を見せるだけで、小国さんに肯定の言葉や態度は返さなくても、一応従う形をとる。

 監督は『divine finger』の手配だ。もっと言えば、担当の小国さんが直接オーダーしているのかもしれない。
 この監督が単なる受発注の立場で、クライアントに頭が上がらないなんてタイプではないだろうから、ふたりの間には仕事を通して築かれた信頼関係みたいなものがあるのかもしれない。

 
 不機嫌そうな顔をして席でのけぞっている監督にまったく動じることなく、小国さんは私たちを着座組の近くまで連れて行った。

「改めまして、『movie arts』の遊佐です。本件の起案者・原作者となる畠山の補佐と、弊社としてはプロモーションにも関わらせていただくため、その責任者をさせていただきます」
「遊佐と一緒に担当させていただきます、畠山です。原案を採用していただきありがとうございます。素敵な作品づくりに貢献できるよう尽力します」

 ふたりは無駄のない動きで監督、女優、マネージャぽい人の順に名刺を渡す。やっぱり社会人は動きが洗練されてるなぁ。

高梨たかなしのマネージャーの『canard sauvage Le montプロ』保科ほしなです」と、見た目は少々軽くても同じく社会人らしき男性が反射のように名刺をふたりに渡した。やっぱりマネージャーさんだった。女優さんは高梨さんというみたいだ。
 
「俺ぁ名刺なんかねぇぞ」
 
 座ったままの監督が言う。
 
「結構ですよ。こちらの学生たちも名刺は持っていませんし。高梨さんもですよね? 名刺は会社員同士の慣習ってことで。この人数ですからお互いが挨拶できれば充分でしょう」

 変わらず動じずのにこやかさで場を仕切る小国さん。
 うーん、爽やかだ。


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