スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

文字の大きさ
68 / 221

マレとの会話

しおりを挟む

 話したいと、いつ通話できそうか時間を尋ねてきたマレ。メッセージは今しがた届いたばかりだ。
 だったら繋がるだろうと、返信の代わりに直接発信ボタンを押した。
 即繋がった。マレも画面を観ていたのだろうか。

 
「わ、びっくりした! 電話だいじょうぶ?」

 
 私の方が掛けたのに、こちらの状況を心配してくれている。

 
「うん、大丈夫だよ。あとは寝るだけだから。話そー」
 フランスは今夕方くらい。マレも学校のタスクは一通り終え、一息ついたタイミングだろうか。
 
「うん! ありがとう! 『まれほまれ』の動画、次の何か考えたいなぁって思って」

 
 マレはちょっとした登録者数を抱えている動画配信者だった。

 アクションカメラを装着したままバレエの練習をした際の動画をアップしていたところ、ハイレベルのバレリーナの目線を体験できる映像として、じわじわと人気を獲得していったらしい。
 動画の性質上、顔は出ない動画ばかりだったが、せっかく登録者が増えているからと、他の主旨のコンテンツをいくつか追加することにしたマレ。


 日本に戻ってきていたマレと話したとき、私と一緒にやりたいことを片っ端から挙げてもらった。
 マレが前を向けるために、マレの気持ちが揚がることは何でもやりたいと思ったのだ。

 その中のひとつに、「一緒に踊りたい」というものがあり、音楽イベントでは「まれほまれ」というユニット名で、ふたりで踊るパフォーマンスを披露した。

 せっかく名前も付けたのだからと、このユニットで動画も撮りたいねなんて話をしていたのだった。

 
 コンテンツ『まれほまれ』は、イベントの時のパフォーマンスを撮影してもらった映像と、練習時に撮影した素材を繋げたメイキングをあげ、その後はふたりでお菓子を食べながらイベントの苦労話や感想を言い合い、たまにお菓子の講評もする動画をあげただけで止まっていた。

 
「この前、のんたちとの動画もリモートで撮影したよ! それぞれで演奏とダンスをするとか、映像素材をいくつか撮って、編集して格好良い感じにするのも良いかなぁって思ってるんだけど、どうかなぁ?」
 
「面白そう! うーん、でも、直近だと時間ちょっと作れないかも……」
 
「あ、そっか、映画? 撮影始まってるんだよね」


 マレとはそれなりにメッセージでのやり取りをしている。
 映像作品に役者として出演することになったなんて話や、撮影の話なども軽くだが伝えていた。それに、浅草サンバカーニバルも間近に迫っていて、その準備も同時進行で行っていることも。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
 大学生となった誉。  慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。  想像もできなかったこともあったりして。  周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。  誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。  スルド。  それはサンバで使用する打楽器のひとつ。  嘗て。  何も。その手には何も無いと思い知った時。  何もかもを諦め。  無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。  唯一でも随一でなくても。  主役なんかでなくても。  多数の中の一人に過ぎなかったとしても。  それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。  気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。    スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。  配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。  過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。  自分には必要ないと思っていた。  それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。  誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。  もう一度。  今度はこの世界でもう一度。  誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。  果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。

スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら
現代文学
 日々を楽しく生きる。  望にとって、それはなによりも大切なこと。  大げさな夢も、大それた目標も、無くたって人生の価値が下がるわけではない。  それでも、心の奥に燻る思いには気が付いていた。  向かうべき場所。  到着したい場所。  そこに向かって懸命に突き進んでいる者。  得るべきもの。  手に入れたいもの。  それに向かって必死に手を伸ばしている者。  全部自分の都合じゃん。  全部自分の欲得じゃん。  などと嘯いてはみても、やっぱりそういうひとたちの努力は美しかった。  そういう対象がある者が羨ましかった。  望みを持たない望が、望みを得ていく物語。

処理中です...