スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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スルド奏者のんとほまれ

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(柳沢 望、色部 誉)


 柳沢望やなぎさわのぞみ。サンバネーム「のん」。テルセイラ。
 
 姫田姉妹と同じ地元で、幼馴染だったらしいのんちゃん。バイト先でたまたまがんちゃんと再会し、その流れで入会を決めた。

 一卵性双生児の姉のマレと違い、打ち込むものを持っていなかったのんちゃんは、それでも良いと思っていた。
 それは、同じ遺伝子を持ちながら、マレとは全く異なる人生を歩んでいる中で、比較されたくないという想いの現れでもあった。

 一方、心のどこかでは、姉を羨ましいと思う気持ちもあった。
 無理に夢や目標なんて見つける必要はない。でも、あるなら、見つけたなら、それは素敵なことだと考えていた。

 マレがそうであったように、夢中になるものなんてふとした偶然や縁で出会うものだ。

 偶然再会したがんちゃんに導かれるまま、委ねた先にあったサンバ。
 成り行きで始めたサンバを、今やのんちゃんは、傍目に見ても楽しんでいることがわかる。
 私が立ち上げた音楽イベントで無理やりデビュー済みではあるが、『ソルエス』が『エスコーラ』として受けるイベントとしては、デビューはこれからとなる。

 のんちゃんの浅草サンバカーニバルへの出場は決まっている。
 できれば、その手前に開催されるなんらかのお祭りのパレードイベントのどれかには出たいと、日々練習に励んでいた。
 私の教え子でもある彼女は、贔屓目で見ないよう厳しめに評価したとしても、もう充分デビューに能う実力を身に付けている。

 
私、色部誉。サンバネーム「ほまれ」。テルセイラ。

 高校時代の三年間、強豪チームにスルドの奏者として所属していた。演者として、浅草サンバカーニバルで優勝経験もある。

 もちろんそれは、チームが強かったからなのだが、その強いチームの『バテリア』で、少なくとも奏者として、浅草サンバカーニバルという重要なイベントに出演できるだけの技術は認められていたはずだ。
 しかし、三年という歴は決して長いとは言えない。一年に満たないがんちゃん、いのり、のんちゃん同様、私も新人の気持ちで練習に勤しまなくては。彼女たちの努力はすごい。油断したら簡単に追い抜かれるだろう。

 バレエでマレに抜かれたとき。認めざるを得なかった。マレの持つ資質を。私の欠点を。だから、受け容れと諦めの気持ちが強かった。
 マレの演舞の素晴らしさは、同じバレリーナである私にはよくわかった。その優美ながら勁烈な舞踊に圧倒された。鳥肌が立っていることに気づいたのは、彼女の演技が終わり、万雷の拍手が収まりかけた時だった。
 感動した。そんな演技を見せた妹分に、素直に尊敬の念を持った。

 だけど、悔しくなかったわけがない。

 あれだけ、積んできたんだ。
 ずっとずっと、それだけをやってきたんだ。


 理性と知性で受け容れたけれど。
 感動の感情は確かにあったけれど。
 同じく感情の奥の奥の、さらに奥底。閉じ込めてあった感情を顕わにしていたら、きっと悔しくて、悔しくて、泣いて叫んでいたはずだ。


 スルドでまた、同じような思いなんてしたくない。
 みんなに負けないくらい、私は努力を厭わない。厭いたくない。

 
 そんな私たち四人。
 ここ一年以内に入会した新人で、学生の女性バテリアメンバー。
 先のイベントでは『スルド女子』のユニット名で、イベントの開催を告げる『エスタケンタ』(ポルトガル語で「着火する」などの意味)を披露した四人。

 この四人で、スルドの自主練の機会をよく設けていた。
 場所は、姫田家、いのりのスタジオだ。
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