スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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罪と後悔

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 兄が関係者数人に聴いて回ったところ、何人かから様子を聞けた。

 単純で分かりやすいいじめやハラスメントの実態が明らかになった。
 やっている方に自覚がないからか、陰湿で狡猾なものではなく、隠すつもりもないようなあからさまな内容だった。
 そんなことが、すぐそばで行われていたことに気づかなかった事実に、小国さんは少なからずショックを受け、自己嫌悪に陥った。

 情報は比較的容易に得られたことも、却って自らの愚鈍さを証明しているように思えたのだと、小国さんは自嘲気味に語っていた。

 
 何がおこなわれていたのか。

 
 小国さんはほどなくして、全容を把握できる程度の情報を手に入れていたが、その時には対策を打つには既に遅きに失していたことも把握できてしまった。

 日々の仕事に忙殺されていた小国さんが、近いとはいえ別担当別プロジェクトの中で行われていた問題に気づけなかったことは罪だろうか。
 しかし、知ってからの動きは早かった。
 知らされた時点で、既に手遅れだったのだ。では、知らせた母が、もっと早く気付くべきだったのだろうか。
 娘を育てるため、日々懸命に働いていた母親のことは、病んでいく過程に気づいてもらえなかった娘ですら、責任を求めたりはしないだろう。

 小国さんやその母親や、妹のアコさん本人それぞれが、抱える後悔や罪悪感や怒りや悲しみはあるだろう。
 だが、責任は誰にあるか。悪いのは誰か。
 という問いならば、小国家の面々にそれはないはずだ。紛うことなく、加害者に足る者たちへと集約される。
 
 だから、小国さんが復讐に近い動きをとることは、客観的には理解ができた。

 復讐のためなら、何をしても良いというわけではないと思うけれども。
 
 
 しかし、小国さんは言った。

「別にそこまで妹思いの兄などではなかった」と。
 復讐などといった、大仰で大袈裟でドラマティックなものなんかではないのだと。

 
「怒り、怒りか……無かったとは言えない。が、『大事な妹を傷つけやがって!』なんて、妹思いの兄らしい義憤ではなかったよ。もちろん、身内が被害を受けたんだ。多少の怒りはあったがね。それ以上に、自分の不甲斐なさ、節穴が過ぎるほどの凡眼には心底呆れ果て腹は立ったし、己が信じ夢見て青春をかけたと思っていた世界のくだらなさには、はっきりと失望した。むろん、その感情そのものは誰のせいでもない。勝手に理想を描き、勝手に期待していたのはこちらの都合で、世界は俺なんかが気付く前から、そのままの在り様でそこに在ったのだから」
 
 どことなく卑屈な物言いだった。

 例えばそれが、いじけている子どもだとしたら、その裏にはやはり「期待」はあるのではないだろうか。

 普段の爽やかな好青年は、仮面だったのでも言わんばかりの小国さんの態度と言動は、私にはどこか露悪的に見えた。
 
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