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結び
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裁定を受け容れる準備を済ませた者も。
「……沙汰は社長に任せています。まあ、機会があればこの後の人生の進め方を考えるくらいはしますよ」
事柄も計画も会社も人も仕事も。全てを見て、見極めて判断を下さなくてはならない者も。
「もちろん、会社として責任を持って処断はくだす。が、委ねるのもまた、楽な行為だぞ? お前がどうしたいか、どうすべきだと思っているのか、それを訊かせてほしい。まあ、後でよく話そうか」
思いも感情も思惑も理屈も背景も希望も、それぞれから一通り吐き出された空間の中。
掻き回したコーヒーの中に垂らしたミルクのように。
渦巻き混ざり合ってていた渾沌はその激しさを顰め、空気は一種の空虚さをも伴う平坦で平静なものへと移行しつつあった。
「さて、河内さんのお考えもよくわかりました。感情でモノを言っているとおっしゃられていましたが、いちいち尤もでした。御社と弊社共通の利益となるプロジェクトにとってよりよくなるご提案でもあります。必ずご要望に沿う形にさせてください」
金津社長は河内さんに向けていた目線を私に移す。
「色部さんはそれでよろしいですか? なくなると言ったり、やっぱりやると言ったり、なんならレギュラー化を目指すなんて話になったりと、振り回してしまっておりますが」
バラエティには私も出る予定になっていた。確かに、レギュラー化なんて話になってくると、いろいろと状況は変わる。
「はい、もともと出させていただくというお話でしたから、そこは問題ありません。レギュラーとかは……もしそうなるのでしたら、その時考えさせてください」
「ええ、それはもちろん」
バラエティに関しては、当初はそれほど乗り気ではなかった。成り行きでそうなっただけだった。
でも今、『雲霓』をほとんど撮り終えて、結構充実感があったりして、『アズレージョの欠片』の制作が進んでいって、そのうちメディアで演奏なんて話も少し楽しみになっていたりして……どんどんこのプロジェクト全体への愛着が増している中で、連動し相乗効果が見込めるなら、バラエティにも積極的に参加したいなと思うようになっていた。
相変わらず、この業界で生きていこうとは思っていなく、あくまでもこのプロジェクトのためだけのことではあるから、学校や就職への影響のない範囲にとどめたいが、そこの調整が利くならやってみたい。
「番組の規模が大きく、且つ『雲霓』との連携がより緊密なものになるとしたら、高梨さんにもご依頼が入るかもしれません。その際はぜひご検討をお願いします」
金津社長はすでに河内さんの要望に、前向きに乗ることにしているようだ。
「うちの高梨はバラエティは得意ではないのですが……」
「そうだね。だから、誉がきっと助けてくれるね」
一瞬怪訝な顔を見せたマネージャーの保科さんの言葉に間髪入れずに言葉を乗せて微笑む妃夜さん。それは肯定の返事か。
うん、一緒に出るなら、私がもしその時すでにバラエティに慣れていたら、妃夜さんのこと、助けるよ。
本日お伝えしたかったこと、伺いたかったご意見、今後のこと。弊社からはすべて提示させていただきましたと金津社長。
最後にもう一度、意見や質問、クレームなども遠慮なく、と参加者に募ったが、特に発言する者はなく、その場は散会となった。
「……沙汰は社長に任せています。まあ、機会があればこの後の人生の進め方を考えるくらいはしますよ」
事柄も計画も会社も人も仕事も。全てを見て、見極めて判断を下さなくてはならない者も。
「もちろん、会社として責任を持って処断はくだす。が、委ねるのもまた、楽な行為だぞ? お前がどうしたいか、どうすべきだと思っているのか、それを訊かせてほしい。まあ、後でよく話そうか」
思いも感情も思惑も理屈も背景も希望も、それぞれから一通り吐き出された空間の中。
掻き回したコーヒーの中に垂らしたミルクのように。
渦巻き混ざり合ってていた渾沌はその激しさを顰め、空気は一種の空虚さをも伴う平坦で平静なものへと移行しつつあった。
「さて、河内さんのお考えもよくわかりました。感情でモノを言っているとおっしゃられていましたが、いちいち尤もでした。御社と弊社共通の利益となるプロジェクトにとってよりよくなるご提案でもあります。必ずご要望に沿う形にさせてください」
金津社長は河内さんに向けていた目線を私に移す。
「色部さんはそれでよろしいですか? なくなると言ったり、やっぱりやると言ったり、なんならレギュラー化を目指すなんて話になったりと、振り回してしまっておりますが」
バラエティには私も出る予定になっていた。確かに、レギュラー化なんて話になってくると、いろいろと状況は変わる。
「はい、もともと出させていただくというお話でしたから、そこは問題ありません。レギュラーとかは……もしそうなるのでしたら、その時考えさせてください」
「ええ、それはもちろん」
バラエティに関しては、当初はそれほど乗り気ではなかった。成り行きでそうなっただけだった。
でも今、『雲霓』をほとんど撮り終えて、結構充実感があったりして、『アズレージョの欠片』の制作が進んでいって、そのうちメディアで演奏なんて話も少し楽しみになっていたりして……どんどんこのプロジェクト全体への愛着が増している中で、連動し相乗効果が見込めるなら、バラエティにも積極的に参加したいなと思うようになっていた。
相変わらず、この業界で生きていこうとは思っていなく、あくまでもこのプロジェクトのためだけのことではあるから、学校や就職への影響のない範囲にとどめたいが、そこの調整が利くならやってみたい。
「番組の規模が大きく、且つ『雲霓』との連携がより緊密なものになるとしたら、高梨さんにもご依頼が入るかもしれません。その際はぜひご検討をお願いします」
金津社長はすでに河内さんの要望に、前向きに乗ることにしているようだ。
「うちの高梨はバラエティは得意ではないのですが……」
「そうだね。だから、誉がきっと助けてくれるね」
一瞬怪訝な顔を見せたマネージャーの保科さんの言葉に間髪入れずに言葉を乗せて微笑む妃夜さん。それは肯定の返事か。
うん、一緒に出るなら、私がもしその時すでにバラエティに慣れていたら、妃夜さんのこと、助けるよ。
本日お伝えしたかったこと、伺いたかったご意見、今後のこと。弊社からはすべて提示させていただきましたと金津社長。
最後にもう一度、意見や質問、クレームなども遠慮なく、と参加者に募ったが、特に発言する者はなく、その場は散会となった。
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