スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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終わらないトーク

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「ちょっとそれじわる。じゃあ、ルイだったら?」
「わたしだったらどうしよう……うーん」
 
 いつの間にか話題はNTCの誰と付き合うのが一番良いかとの内容に変遷していた。

 ちょっと気を逸らしていたらすぐこれだ。
 でも、これが良い。
 会話に意味も深みも無くて良い。この瞬間だけのもの。次の瞬間には忘れてしまう程度のもの。その軽さが、知識にも哲学にも倫理にも論理にも繋がらないが、心の何かに作用することを私は知っている。
 
「でも、ドヨン虫とか集めてそうじゃん」
「なにその評価⁉︎」
「なんかわかる気がする」
「えー? 虫集めてそうってどんななの?」
「虫みたいな顔ってこと?」
「そういうことでもないよね。雰囲気?」
「どんな⁉︎」
「虫集めてたっていいじゃない! 大事にしてくれたらさあ」
「だから、虫優先にされちゃうから大事にされないって言ってんの」
「ね。虫の温度管理とかに気を使わなきゃいけないから。うちらなんかスーパー蔑ろだよ」
「おがくずの温度とか計ってるドヨンうける!」
「それは虫をちゃんと趣味とか仕事とか研究とかしてる人に失礼じゃ」
「まじめ!」
「まじめは良いことだよっ」
 
 アイドルグループのメンバー個々人に関するパーソナリティなんてほとんど知らなくても、勝手な想像で盛り上がっている。
 
「辛みチキン食べたいなー」
 ひいは話題に加わりながらもドリトススパイシーチキン味を開封している。
 
「うそでしょ⁉︎ まだ食べるの?」
「がんちゃんも遠慮しないで」
 更にからシーフードまで開封するひい。
 
「遠慮とかじゃないんだけど……」
 
「開けちゃったものは仕方ないし、食べよ?」
 
 せっかくだから私もつまませてもらう。がんちゃんもなんだかんだ言いながら手を伸ばしている。
 
「でもさぁ、じゃあジョンウが十億持ってたらどーすんの⁉︎」
「それはもはやジョンウ関係なくなってる。十億が本体だよね」
「でも、十億くらい持ってそうじゃない?」
「まー確かに」
 
 国民的なトップスターなら、億という単位の金額は現実的だろう。
 
「十億あったらどうしよう?」
「じゃがりこよりじゃがびー多めに買う」
「ささやかすぎて悲しくなる」
「スーパーカップからダッツくらいいかないと」
「あんま変わらん!」
「あ、サーティーワンでアイスじゃなくて敢えてケーキ買う!」
「アイス屋さんでアイスケーキ買うの、敢えてじゃなくない?」
「だって、行ったら普通にアイス買っちゃうし、あそこでケーキ買う機会あんまないじゃん」
「確かに」
「国買う!」
「それは無理!」
「町は?」
「無理だよ」
「夕張市は?」
「ワンチャンいけるのか?」
「いや、無理でしょ」
「そのそも町買ってどーすんの」
「サンバ町にする」
「でた! 独裁者! 市民は強制タンガ?」
「人口流出激しそう」
「意外とタンガ着たくて人口増えるかも」
 
 質量を伴わない言葉が止まらない。誰も止める気もない。疲れも知らない若者たちは、夜はずっと続くと思っている。
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