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パストーク
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さて、ボールはいつまでも手元に置いていても場が滞る。次に回してしまおう。
「じゃあさ、みことのカレシ、元カレか、が、悪かったとこ直して復縁求めてきたらどうする?」
仮定の話×質問。この形式でボールを回せば、後は自然と転がっていくものだ。
「弱点を克服した完全体カレシか!」
「なにそのアヴェンジャーズみたいな設定」
みことの元カレの顔はみんな知っている。
ルイの突っ込みに、みんななんらかの完全体カレシをイメージしたのか、げらげらと笑っている。
男子は女子と関わる以上、本人が与り知らぬところで無茶なネタにされることは、覚悟しておいた方が良いと思う。好きでも嫌いでも、関係性が濃くても薄くても関係ない。思いつきで結構な槍玉に上げられることなんて日常茶飯事だ。
ちなみに私はアイアンマンのたくましくいかつい金属ボディーにちょっと丸顔で優し気に微笑んでいるみことの元カレの顔が載っている姿をイメージしてしまい、バンホーテンココアを拭き出しそうになった。耐えたが変なところに入ってしまい、涙と鼻水が出てしまった。
ほづみがそんな私の様子を見て更に笑いながらも、「大丈夫?」と言いながら背中をさすってくれた。
「べつに、悪かったところを直しても完全ってのには程遠いけどなぁ。
別れた原因直したからって、元に戻るかって言ったらそうはならないと思うー」
感情の話だから。
条件や環境など、物理的な問題ではないのだ。
友だちであっても恋人であっても、人と人とが結び付くのは大いなる偶然の産物だ。離れることもまた然り。
その日その時、何らかの要因によって心が動き、双方が合致して新たな関係性が始まる。
天気ひとつ、服装ひとつ、使った言葉ひとつ、なにかが一つでも異なっていれば異なる結果になっていたかもしれない不安定なもの。
別れを告げられた側のみが条件を整えても、その瞬間には戻れない。まったく同じ環境は創れない。そもそも告げた側が既にその時とは状態が異なっている。
これがもっとわかりやすい「借金が理由で別れた」だったとしても、「借金を返した」からと言って必ずしも復縁に至るとは限らないだろう。
本当に借金のみがネックだったなら戻れるかもしれない。借金をしたということも含めて原因になっているなら、精神性や収支状況など、性格や生活まで大幅な改善が必要かもしれない。物理的な原因で離れた心は、原因が解消されたからと言って戻ってくるという保証もない。
みことの話は、追求すればなかなか奥の深い話だ。
これは人間関係総てにも当てはまり、さらに言えば社会にも当てはまる。人と人との結びつきだけでなく、人と組織であっても同様だ。
縁あり入った会社で、何らかの理由で辞めたとして、理由が解消されたら再度その会社に戻るというケースはむしろ稀少ではないだろうか。
辞めた者も、会社も、時間の経過に従って状況は変わっていく。やり直しなんてできないのだ。
サンバやエスコーラにしても同じことが言えた。せっかく出会ったサンバ、入会したエスコーラ。
新たに入ってくるひとが居る一方、残念ながら退いてしまうひとも居る。
戻ってきやすい状況、戻ってきたいと思える環境を作ることは非常に大切だけど、その手前の流出そのものを防ぐことが肝要だ。
やり直しは、できないのだから。
やり直しなど、必要の無いように。
「じゃあさ、みことのカレシ、元カレか、が、悪かったとこ直して復縁求めてきたらどうする?」
仮定の話×質問。この形式でボールを回せば、後は自然と転がっていくものだ。
「弱点を克服した完全体カレシか!」
「なにそのアヴェンジャーズみたいな設定」
みことの元カレの顔はみんな知っている。
ルイの突っ込みに、みんななんらかの完全体カレシをイメージしたのか、げらげらと笑っている。
男子は女子と関わる以上、本人が与り知らぬところで無茶なネタにされることは、覚悟しておいた方が良いと思う。好きでも嫌いでも、関係性が濃くても薄くても関係ない。思いつきで結構な槍玉に上げられることなんて日常茶飯事だ。
ちなみに私はアイアンマンのたくましくいかつい金属ボディーにちょっと丸顔で優し気に微笑んでいるみことの元カレの顔が載っている姿をイメージしてしまい、バンホーテンココアを拭き出しそうになった。耐えたが変なところに入ってしまい、涙と鼻水が出てしまった。
ほづみがそんな私の様子を見て更に笑いながらも、「大丈夫?」と言いながら背中をさすってくれた。
「べつに、悪かったところを直しても完全ってのには程遠いけどなぁ。
別れた原因直したからって、元に戻るかって言ったらそうはならないと思うー」
感情の話だから。
条件や環境など、物理的な問題ではないのだ。
友だちであっても恋人であっても、人と人とが結び付くのは大いなる偶然の産物だ。離れることもまた然り。
その日その時、何らかの要因によって心が動き、双方が合致して新たな関係性が始まる。
天気ひとつ、服装ひとつ、使った言葉ひとつ、なにかが一つでも異なっていれば異なる結果になっていたかもしれない不安定なもの。
別れを告げられた側のみが条件を整えても、その瞬間には戻れない。まったく同じ環境は創れない。そもそも告げた側が既にその時とは状態が異なっている。
これがもっとわかりやすい「借金が理由で別れた」だったとしても、「借金を返した」からと言って必ずしも復縁に至るとは限らないだろう。
本当に借金のみがネックだったなら戻れるかもしれない。借金をしたということも含めて原因になっているなら、精神性や収支状況など、性格や生活まで大幅な改善が必要かもしれない。物理的な原因で離れた心は、原因が解消されたからと言って戻ってくるという保証もない。
みことの話は、追求すればなかなか奥の深い話だ。
これは人間関係総てにも当てはまり、さらに言えば社会にも当てはまる。人と人との結びつきだけでなく、人と組織であっても同様だ。
縁あり入った会社で、何らかの理由で辞めたとして、理由が解消されたら再度その会社に戻るというケースはむしろ稀少ではないだろうか。
辞めた者も、会社も、時間の経過に従って状況は変わっていく。やり直しなんてできないのだ。
サンバやエスコーラにしても同じことが言えた。せっかく出会ったサンバ、入会したエスコーラ。
新たに入ってくるひとが居る一方、残念ながら退いてしまうひとも居る。
戻ってきやすい状況、戻ってきたいと思える環境を作ることは非常に大切だけど、その手前の流出そのものを防ぐことが肝要だ。
やり直しは、できないのだから。
やり直しなど、必要の無いように。
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