【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea

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16. お父様が語るところによると……

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  お父様は語る───

「あ、ある日……アドルフォ殿から手紙が届いた」
「手紙?」

  そうだ、とお父様は頷く。

「大事な話があるので自分と会って欲しい……そんな内容だった。なのでアドルフォ殿に会いに行ったんだ」
「え!」

  驚いた私は少々間抜けな声を上げてしまう。

  (会いに行った……つまりそれは旦那様(仮)とお父様は会話をした……という事?)

  そう思った私はうっかり呟いてしまう。

「お父様……旦那様……アドルフォ様の声とはどんな……」
「は?  ミルフィ、何か言ったか?」
「コホン……な、何でもありません……話の続きを……」

  お父様は怪訝そうにしながらも話を続ける。

「アドルフォ殿の大事な話とは、娘と結婚したい……そういう話だった」
「その娘って?」
「…………ミルフィ。お前だった。もし、ミルフィを嫁に迎えさせてくれるなら代わりに我が家が抱えている借金の返済に協力してくれる、と言って」
「……はぁ……」

  私は大きくため息を吐く。
  だって、こんなの話が違うじゃないの!

  お父様はあの時、

  ──すまないが、お前達のどちらか、ロイター侯爵家のアドルフォ殿の元に嫁いでくれないか?  ただし、本物の花嫁じゃなくて、契約の花嫁としてなんだが

  驚く私とシルヴィに対しては、

  ──からかってなどいない!  その……ロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ殿が花嫁を必要としている……のだが……本物の花嫁は要らない、と……

  と口にしていたのに!

「ならば、私とシルヴィに向けたあの話は何だったのですか……」
「……」
「お父様!!」
「うっ!」

  お父様は言いにくそうにしていたけれど、ここまで来たのだから洗いざらい吐いてもらわないと。

「……アドルフォ殿が妹に邪魔される事の無いようにしてくれと言ったんだ」
「……はい?」
「間違っても妹が来る事の無いようにしろと」
「え!?」

  (だ、旦那様(仮)……)

「アドルフォ殿の噂は聞いていたから、契約の花嫁と言えば、シルヴィは嫌がってミルフィに押し付けるだろう……そう思ったのだが」
「!」

  シルヴィは泣いて嫌がり、結局それは確かにその通りとなった。
 
  (もしかして、旦那様(仮)は私とシルヴィを知っていた?)

「やっぱり私が……望まれていた……それだけでなく……これは」 
  
  (契約の花嫁……では無い?)

  私の胸がドキドキと大きく高鳴る。
  お義父様とお義母様の話を聞いてもそこだけは分からなかった、契約の花嫁……

  (……本物の花嫁?  旦那様(仮)はずっと私を本物の花嫁だと思っていた?)

  ドクンッ

  ───どうしよう。
  嬉しい……
  胸はドキドキするし、ジンワリと温かくもなって来た。

  本当に私を望んでくれていたのですか?
  それはどうして?
    
  (全部、旦那様(仮)に訊ねたら……ナデナデしながら答えてくれるかしら?)

「でも、お父様。結果は確かに私が花嫁になりましたが……」

  もっと他にやりようがあったのでは?
  と言いたくなったけれど、最初から私が指名されていたら嫁ぐ前にシルヴィに奪われていた可能性は高い。

  (そう思うと確かにこの方法しか無かったのかも……)

  でも、結局シルヴィは現れてしまったし……
  
「……ハッ!  そうよ……シルヴィ」
「ん?」

  (浮かれている場合では無かったわ!)

「お父様、旦那様の件はとりあえず置いておいて……シルヴィの事なのですが!」
「……なっ」

  お父様が、そろっと目を逸らす。

「……お父様!!」
「いや、ほらシルヴィはいつも甘えて来て可愛いだろう?  つい……な」
「そんな事だからあの子は!  お願いですからもう甘やかすのはやめて下さい!」
「……」
「お母様にもよーーーく伝えて下さい!」
「いやぁ……」

  お父様の顔は全力で無理!  と言っている。

「それでもです!  それから!」
「……」

  私はたじろぐお父様に向かってハッキリキッパリと言う。

「シルヴィは今後、ロイター侯爵家への出入りは禁止です!!」
「え?」
「本人にもよーーーく言い聞かせておいて下さいませね、お父様!」
「……」

  再び目が泳ぐお父様。

「……ロイター侯爵家を敵に回したいのなら……どうぞ、ご自由に?」
「うっ」
「……借金の件もあるでしょう?  旦那様、手を引くかもしれませんわよ?」
「…………うぅっ」


  ──結局、どうにかお父様を頷かせてお帰り頂いた。



   (後は旦那様(仮)が帰って来たら確かめるだけ───)
 

────


「旦那様!  おかえりなさいませ!」
「……」

  そうしてようやく夜。
  待ちに待った旦那様(仮)が仕事から戻られた。
  私はいつものように笑顔で出迎える。
  そして、旦那様(仮)はすかさず私の頭の上に手を……

  ……ナデナデ
  (ただいまのナデナデ)

「はい、おかえりなさいませ!」

  …………ナデナデナデ
   (疲れたよと言ってるナデナデ)

「お疲れ様でした」

  ナデナデナデナデ
   (ありがとうのナデナデ)

「いいえ、こちらこそ……」

  私はポッと頬を染めて言う。

「!」

  ナデナデナデナデ!!

  (ナデナデが加速!  何かに照れた!?)

  どうもいつもそうなのだけど、照れナデナデの場合だけは理由がよく分からない。
  突然始まるのよね。

「旦那様……」

  えいっとばかりに私も旦那様(仮)の頭に手を伸ばす。

  そして、ナデ、ナデ……
  と、旦那様(仮)の頭をそっと撫でる。
  すると、旦那様(仮)のお顔はどんどん赤くなっていく。

  (ふふ、旦那様(仮)はやっぱりナデナデされる方にはまだまだ、慣れないみたい)

「まずはゆっくり身体を休めて下さいね?」
「……」

  コクリと静かに頷いた旦那様(仮)が、今度はギューッと私を抱きしめる。

「だ、旦那様?  私は身体を休めるよう言ったのであってギューッてして下さいと言ったわけでは!」
「……」

  ギューッ!

  (聞いてなーい!)

  仕方が無いので私はギューッと抱き着いている旦那様(仮)の背中に腕を回して軽くボンポンしながら言う。

「それと、旦那様……夜、寝る前……で構いません。お話があります……お時間をくださいませんか?」
「……?」

  旦那様(仮)のギューッと私を抱きしめていた手が止まる。

「大事な……お話です」
「!」

  私から身体を離した旦那様(仮)がじっと私の目を見つめるので、私も見つめ返す。

「……」
「……っ」

  一瞬、旦那様(仮)の瞳が不安に揺れたように見えた。

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