【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea

文字の大きさ
31 / 32

31. ナデナデと甘い……夜

しおりを挟む


  シルヴィとお母様の事を考えていた為に、私の表情がどこか曇っていたせいなのか、旦那様の手が再び動く。

   ───ナデナデ

  慣れ親しんだ旦那様とのナデナデ。
  私はここまで旦那様と過ごして、ふと思った事があったので訊ねてみた。

「そう言えば旦那様、屋敷に戻って私と二人っきりになると、また無口になってしまったのですね」
「……」

  ───ナデナデ……ナデ

  旦那様は申し訳なさそうな顔でナデナデの手は止めずに言う。

「努力……はする。でも……やっぱり、うまく話せ…………ない」
「旦那様……」

  顔は真っ赤で手の動きはナデナデ!  そして、口ごもる旦那様!
  先程までは熱いキスまで交わしていたというのに!  
  旦那様という人が大胆なのか照れ屋なのか私にはさっぱり分からない。(でも好き!)

「ミ、ミ、ミルフィ!  俺の態度、げ、幻滅する、か?  ……あと、俺の声……」

  ……ナデナデ……ナデ

「!」

  旦那様の不安そうな発言と共にナデナデする手も不安そうになっていく。

  (あぁ、今までの私が感じ取っていたナデナデの感情は間違っていなさそう!)

  何だか答え合わせをしているみたいな気持ちになった。
  旦那様はこれまで口を聞かなかった事や、自分の声に関して私がどう思っているのか不安みたい。

「無理に話さなくても大丈夫ですよ?  ナデナデで旦那様の気持ちは分かりますから」
「……」
「だから、ナデナデされないと少し寂しくなるんです」
「……!」
 
  すっかり、ナデナデ結婚生活の虜となっている私には、もうナデナデが無いと、どこか物足りない身体になってしまった。

  (ナデナデ……なんて恐ろしいの)

「で、ですが!  たまにはその素敵な声も……聞きたいです……」
「!」

  ───ナデナデ!!

  (ナデナデが加速したわ!  これは驚いているのね!)

「だ、旦那様のその声……ず、ずっと聞いていたいくらい素敵で、あ、いえ、ずっと聞いているとうっとりしすぎて頭の中がおかしくなってしまいそうに……なるのですけど」
「…………」

  ───ナデナデナデナデ!

「…………」
「大好きなんです……!  ナデナデされるのも旦那様の声も……」
「!!」

  私は自分の発言に恥ずかしくなって両手で顔を覆いながらそう話す。
  すると、旦那様は無言のままそっとその手を剥がしにかかってくる。
  手を剥がされるとそこから見えるのは旦那様の麗しいお顔!  
  近ーーい!

  (~~っっ!  ダ、ダメだわ!  私のドキドキはもう止まらない!)

  旦那様の顔を見るだけでも、ドキドキ。
  ナデナデされても、ドキドキ。
  声を聞いても、ドキドキ。

  ───ほら、ドキドキしかないわ!?

「…………ミルフィ。俺の、か、かわ、可愛い、可愛い奥さ……ん」
「だんな……さま」

  完全にもう私の頭の中の思考がドロンドロンに溶けている。
  そんな私の様子が分かっているのかいないのか、甘く優しく微笑んだ旦那様の美しい顔がどんどん近付いて来てそっと私達の唇が重なる。

  ───キスはドキドキだけでないわね、心臓がバクバクだわ……

  チュッチュと旦那様のキス攻撃は止まらない。

  旦那様はギューッと私を抱きしめながらたくさんたくさんキスをくれるので、私もギュッとその身体を抱きしめ返しながら懸命にキスに応えた。

  (あぁ……ここに帰ってこられて本当に良かったわ)

  こうして旦那様と過ごせる幸せな時間を失わずに済んでよかったと私は改めて心からそう思った。





  そして、その日の夜───

  いつものようにおやすみなさいのナデナデの為に、旦那様が私の部屋を訪ねて来た。
  入口で出迎えながら私は笑いながら言う。

「旦那様が一日に何度も訪ねて来るのは珍しいので何とも不思議な感じですね」
「……」
  
  ……ギュッ

  私がそう言うと旦那様が優しく微笑んで私を抱きしめる。

「あたたかいです。私、旦那様の温もり……大好きです」
「……俺も、だ」
「!」
「ミルフィ……はあたたかくて、柔ら、かい」

  まさかのナデナデでは無い口での回答!
  旦那様、頑張ってくれている!

「ふふ、このまま、ずーっと旦那様とこうしていたい……」
「……」
「!?」

  旦那様はその言葉と共に突然、私を横抱きにして抱える。

「だ、だ、旦那様!?」
「……」

  そのままスタスタと部屋の中央に向かった旦那様はそっと私をベッドに降ろした。

  (……あ!)

  そうこうするうちに、私の身体はいつの間にか旦那様に押し倒されていた。

「……」
「……」

  無言のまま互いに暫く見つめ合う。
  すると旦那様の手が私の頬に触れそっとスリスリしてきた。そんな私を見つめるその目には熱を感じる。

  (あぁ、旦那様の目が……私を欲しいって言っている……)

「……旦那様……」

  私もそっと手を伸ばして旦那様の頬に触れる。

「………………ミ、ミルフィ……」

  顔を真っ赤にした旦那様の低くて甘いその声に痺れながら私も微笑む。
  すると旦那様の手がそっと私が今日もきちきちに着込んだガウンに触れ……

  (はっ!  ……そう言えば、今日はこの間よりも一段とスケスケの夜着だったわ)

  何でこんなに今日は生地が薄いのかしら?  と、思ったものだけど、もしかしてルンナはこうなる事を予測していた?
  何やら気合満タンであれでもないこれでもないと夜着を物色していた事を思い出す。

  (うー……こ、これはとても照れるわ……)

  そして、ゆっくりゆっくり旦那様の手で私のガウンが脱がされていく……

  (は、恥ずかしい!  私の顔も真っ赤だわ。そう、目の前の旦那様も真っ赤…………って、あれ?  違う赤……!?)

「きゃっ!?  だ、旦那様……!  大丈夫ですか!?」
「…………!!?」

  ……ポタッ

  だけど、私のガウンを脱がして悩殺スケスケ夜着姿の私を見た旦那様が、そのすぐ後に鼻血をふいてしまった──……


しおりを挟む
感想 382

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚

ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。 ※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

処理中です...