【完結】続・転生したら悪役令嬢になったようですが、肝心のストーリーが分かりません!! ~聖女がやって来た!~

Rohdea

文字の大きさ
5 / 13

彼女……ピンクの残した爪痕は大きかった。

しおりを挟む


   以前、ピンクの彼女メリダ様が現れた時の私は、すっかり“悪役令嬢”に囚われていたから、とうとう来たわ……そんな気持ちだったけれど。

  (あの時は私だけがそう思っていて、周囲の人達はメリダ様をシュナイダー様のお相手になんて思っていなかった……)

  ──でも、今度は違う。
  国として私より“聖女”を望んでいる──……

  (分かっていても……分かりたくない)

「……嫌です」
「キャロライン?」
「……我儘だと言われても、シュナイダー様の隣にいるのは私でありたい……です」

  私は何かに秀でているわけでもない。
  私にあるのは公爵令嬢という身分だけ。

  ──それでも、私はシュナイダー様が好きだから。
  シュナイダー様とこの先の未来を共に歩んでいきたいから。

「キャロライン……」

   シュナイダー様が涙を堪えている私の目尻にそっとキスを落とす。

「僕だってキャロラインだけだ。キャロラインがいるからこうして毎日頑張れているんだ」
「シュナイダー様……」
「キャロラインに会う前は、自分の結婚なんて自由に出来るものではないし、政略結婚を受け入れるのが当たり前……そう思っていたんだけどね」
「!」

  そうだった。
  そもそも私達の婚約だって政略結婚。

「でも、僕は一目でキャロラインを気に入ってしまったから」
「……」
「その時から、キャロラインは政略結婚の相手なんかじゃない。僕のたった一人の最愛の人になったんだ」

  シュナイダー様は、そう言いながらチュッチュとあちこちにキスを落とす。

「……ん、シュナイダー……様」
「キャロライン」
「私もです……シュナイダー様の事が、大好きなのです」
「うん、僕もだよ」
「あ……」

  そう言うなり、今度は顔を上向きにされそのまま唇が奪われる。
  いつもは、ちょっと激しかったり濃厚だったりするキスが今日はどこか優しい。


  いつもなら、ただただ甘いだけのシュナイダー様との時間だったけれど、
  何だかほろ苦いものになってしまった。
  シュナイダー様は、どうにか周りを黙らせると言ってくれたけれど……
  
  (私も私で甘えてばかりではいられない……)

  シュナイダー殿下の隣に並ぶのはキャロラインが相応しい。
  そう思って貰える人にならないと。

  私は改めて決意した。





「キャロライン様」

  シュナイダー様は公務に戻られたので、私も勉強してから帰ろうと思って部屋を出たところで声をかけられた。

「エディ様?」

  私に声をかけて来たのは、シュナイダー様の側近のエディ様。
  学園に通っていた頃からシュナイダー様の友人だった方で、学園卒業後から正式に側近になられた方。

  (シュナイダー様がメリダ様ピンクに近付いていた頃も、よくシュナイダー様と共に過ごしていたから、よく死んだ魚のような目になっていたわ)

「何かありましたか?」
「……こんな事を私が言うのは出過ぎた真似だと分かっておりますが、キャロライン様にどうしてもお願いがありまして」
「お願い?」

  ……嫌だわ。
  まさか、側近エディ様まで、私に身を引けとか言い出すのではないわよね?
  何だか暗い気持ちになる。

「どうか!  どうか、殿下を見捨てないでやって下さい!」
「へ?」

  思っていた事と真逆の事を言われてしまい驚いた。
  見捨てる?  私が??  シュナイダー様を?

  (そんな事は天地がひっくり返っても有り得ないわ!)

  エディ様は私に頭を下げながら続けた。

「殿下は所謂、“キャロライン様バカ”なんです」
「……え」

  えーー?  ちょっと、ちょっと!?
  何か凄い事を言い出したのだけど!?

「殿下は朝起きてから寝るまでに考えている事は“キャロライン様”の事ばかりなんです」 
「……えっと?」

  いえいえ、それはさすがに大袈裟でしょう?

「公務を頑張るのもキャロライン様がいるから。貴女にカッコイイと思われたい!  それが殿下の全ての原動力となっています」
「……国の為、そこに暮らす人々の為……では?」
「それはもちろん!  ですが、まずはキャロライン様に笑って過ごしてもらう事が殿下の中では一番なのです」
「!」
「殿下が将来、賢王になれるか否かは、キャロライン様にかかっています!」 
「!?」

  ──そんなに!?
  まさか私、そんな重要人物だったの!?

「私はキャロライン様の事で一喜一憂するシュナイダー殿下をずっと側で見て参りました」
「……」

  それは、私が7年間もシュナイダー様からのアプローチをスルーし続けた事や、その為に起きたあの学園での日々の事を指しているのだと思われた。

「正直、殿下の頭の中は大丈夫か?  と思う事もございました」
「え」
あの女ピンクと過ごした日々は本当に苦痛でした。えぇ、本当に苦痛で苦痛で苦痛で……私の嫌いな色はピンクになりました。今でもピンク色を見ますとですね……何かこう……」
 
  そう語るエディ様の顔はまるで仇でも見るようで。
  ……まさかのピンクがトラウマになっている!?
  申し訳ない気持ちでいっぱいになった。彼女……ピンクの残した爪痕は大きかった。

「ご、ごめんなさい……あれは、あの日々は私の為に……」
「いえ、拗らせた殿下のせいですから。ですが、とにかく殿下はキャロライン様の事が大切なのです」
「……私もです」

  今の私だってあの頃とは違う。
  あの時みたいに簡単に身を引いたりはしないんだから!!





  それからも日々は変わらず過ぎて行く。
  学園でのセイラ様の人気はうなぎ登りだし、シュナイダー様は今までと変わらず隙あらば私を溺愛してくるのは変わらない。
  “聖女”を殿下の妃へ!
  と口にしているという人達も今はまだ大きく騒ぎ立てることなく沈黙を保っていた。


  ──そんな頃、気付いた。私は気付いてしまった!


「……セイラ様」
「……」
「セイラ様!」
「は、はい!?」

  私の二度目の呼び掛けでセイラ様がようやくハッと気付いてくれた。

「キャ、キャロライン様?」
「セイラ様、どうかされたのですか?」
「え?」
「最近、少し心ここに在らずと言いますか……」

  そう。最近のセイラ様は王宮にいる時、とある一点を見つめてぼぉ……っとしている事が多い。

「そ、そうですか?  気のせいですよ」
「……」

  セイラ様はそう言って笑うけれど、私は知っている。
  その視線の先に誰がいるのか。
  そして視線を向けている時のセイラ様の表情がまるで恋する乙女のようである事も。

  セイラ様が熱い視線を送っている先はシュナイダー様。
  同じ人に視線を向けていれば嫌でも気づくもの。
  
  本当に何かのストーリーかってくらいの展開だわ。

   (セイラ様……ごめんなさい。それでもあなたにシュナイダー様は譲れない!!)

  私は、あなた聖女ヒロインにとって悪役令嬢になるかもしれないけれど、シュナイダー様を諦めたくない。






  そんな複雑な気持ちを抱えた頃の事だった。
  

「え?  隣国の王子様が?  我が国にいらっしゃるのですか?」
「そうなんだ。訪問の連絡があってね」

  その日、シュナイダー様は深刻な顔で私にそう告げた。
  隣国の王子がやって来ると言う。
  ビーグ……ビーブル殿下は何をしに来るの!?

「まさか、セイラ様……聖女様絡みで?」
「それが分からないんだよ、手紙には聖女の事は特に触れられていなくて」

  シュナイダー様が首を横に振る。

  (では何故?  何をしに……?)

  何なの?  この嫌な予感は。
  胸がザワザワする……

  ……嵐の予感しかしなかった。 

 
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

形式だけの妻でしたが、公爵様に溺愛されながら領地再建しますわ

鍛高譚
恋愛
追放された令嬢クラリティは、冷徹公爵ガルフストリームと形式だけの結婚を結ぶ。 荒れた公爵領の再興に奔走するうち、二人は互いに欠かせない存在へと変わっていく。 陰謀と試練を乗り越え、契約夫婦は“真実の夫婦”へ――。

没落令嬢は僻地で王子の従者と出会う

ねーさん
恋愛
 運命が狂った瞬間は…あの舞踏会での王太子殿下の婚約破棄宣言。  罪を犯し、家を取り潰され、王都から追放された元侯爵令嬢オリビアは、辺境の親類の子爵家の養女となった。  嫌々参加した辺境伯主催の夜会で大商家の息子に絡まれてしまったオリビアを助けてくれたダグラスは言った。 「お会いしたかった。元侯爵令嬢殿」  ダグラスは、オリビアの犯した罪を知っていて、更に頼みたい事があると言うが…

十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。

er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——

処理中です...