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思わず前世の言葉が飛び出しそうになった。
しおりを挟む「え! ビーブル殿下が来るのですか?」
シュナイダー様から話を聞いた後、私は王宮のセイラ様の部屋を訪ねて隣国の王子様がやって来ることをセイラ様に告げた。
まさかの訪問にセイラ様は目を丸くして驚いていた。
「はい、ですが、目的が分からないのです。手紙ではセイラ様については何も言及していなかったそうなのですが」
私がそう伝えるとセイラ様はしばし考え込んだ。
「そうですか……ビーブル殿下にとっては、もう私などどうでもいいんだと思います」
それはつまり、もう “真実の愛”のお相手がいるから?
あぁ、もう! 本当に浮気だけでなく薄情な人だわ!
王子様のそのお相手は国のためになるであろう“聖女”を捨ててまで選ぶ程の人なのかしら?
と、そこでふと疑問に思う。
(ビーブル殿下は聖女と婚約破棄して国王陛下に怒られなかったのかしら?)
公の場で「婚約破棄だ!」と叫ぶバカ王子のよくあるざまぁの一つには、国王陛下の許可を得ておらず、独断で勝手な事をした……と後でお咎めをくらう事もあるわ! (キャロライン調べ・改 Ver.2)
とっても気になってきた。
「セイラ様、ビーブル殿下に婚約破棄された時は、国王陛下はその場にいらっしゃったのですか?」
「陛下ですか? いいえ。あのパーティーの参加者の中で王族だったのはビーブル殿下だけでした」
「……」
これはもしかしてもしかする?
ビーブル殿下は国王陛下に連れ戻せと怒られたのではないかしら?
それで、今回聖女に話があるわけではないですよーって顔をしながらやって来て、本当のところ、聖女を国に連れ戻すつもりなんじゃ……
(ダメよ! そんな勝手な事はさせないわ!)
セイラ様と私はシュナイダー様を巡るライバルかもしれないけれど、セイラ様に不幸になって欲しいとは思わないもの。
連れ戻されてビーブル殿下と無理やり結婚させられてしまったらセイラ様が不幸にしかならないのは目に見えている。
(これはセイラ様が会いたいと言っても会わせるわけにはいかない!)
「あの、私はセイラ様は無理してビーブル殿下と会う必要は無いと思うのですが、セイラ様はどう……」
「会いたくないです!」
セイラ様はキッパリとそう言った。
しかも私に最後の言葉まで言わせない程の全力否定とは!
「今更、帰って来てくれと言われても私は帰る気もありませんから」
「セイラ様……」
そう力強く語るセイラ様を見て私もウンウンと頷く。
「だって、私にはもう他に……あ! いえ、何でもありません……」
セイラ様は何かを言いかけて途中でやめてしまった。なんなら頬がほんのり赤い。
「セイラ様、今なんて?」
「いえ! ほ、本当に何でもないのです! すみません……」
えぇ!? その先が、すごーく気になるのだけど!?
──だって、私にはもう他に……
やっぱりこの続きは、
他に好きな人がいる? そして、その相手はシュナイダー様だと言うのかしら?
「……」
モヤッとした気持ちが生まれる。
絶対に譲らないし負けない!
そう思っているし、早くそれを問い質したい気持ちはあるけれど今は……
(そうね……隣国の王子様が帰られたらセイラ様としっかり話そう)
シュナイダー様は譲れません!
ってはっきり言うの。それで申し訳ないけれど諦めてもらわなくちゃ。
そして、とうとうビーブル殿下のやってくる日が来た。
と言っても私は日中は学園があるので、ビーブル殿下をお出迎えするわけではない。
(帰りに王宮に寄る事にはなっているから、そこでご挨拶する事になるのかしら?)
「キャロライン様。ビーブル殿下は今日、到着予定なのですよね?」
「そうですね」
セイラ様もどこかソワソワしているように見える。分かるわ。気持ちが落ち着かないのね。
「大丈夫ですよ、今頃、シュナイダー様達がお出迎えしてくれていますよ!」
「そう……ですよね」
セイラ様はとにかく不安そうだった。
そして、学園の授業も終わり私は王宮へと立ち寄る。
セイラ様はまだ学園に残りやる事があるそうなので私だけが先に王宮に来た。
隣国の王子様はもういらしてるのかしら?
だけど……
(何やら騒がしい……??)
何かしら? そう思っていると慌てた様子で人が走ってくる。
エディ様だった。
走って来たからかハァハァと息を切らしている。
彼の取り乱すようなこんな姿は珍しい。
「あぁ、キャロライン様!? 来てしまったのですね……」
「え?」
来てしまった?
何故? これではまるで私に王宮に来るなと言っているように聞こえるわ。
「キャロライン様に今日は……いえ、暫くは王宮に来ない方がいいと連絡を出したのですが、行き違いになってしまったか」
エディ様が、ぐあぁぁと頭を抱える。
「と、とりあえず、キャロライン様は見つからないように静かに王宮から逃がすしかない! 危険だ。危険すぎる! 混ぜたら危険!」
「危険!?」
聞き捨てならない言葉だった。
何なの、その物騒な発言は!
何があったの!? そして、この騒ぎは一体……
私が何が何だか分からず呆然としていると、エディ様は必死な声で私に言った。
「キャロライン様! 説明は後です! 今、今はとにかく、一刻も早く王宮からあなた様を逃がさねば! 血の雨が降る!」
「??」
混ぜたら危険の次は血の雨が降るの!?
本当に何なの? 後じゃなく今すぐ説明してーー?
さっきから物騒な言葉ばかりよ!?
エディ様がそう言って慌てて私を王宮から逃がそう? とした時だった。
「──見つけた!! 俺の運命の人!!」
──へ?
聞いた事の無い声で、これまた前世でこれでもか! とよく目にして来たとんでも言葉“運命の人”が聞こえた。
何ともベタベタなセリフを叫んだのは、赤みがかった茶髪に黒目の男性だった。
一件見た目は地味に見えるけれど、服装、そして漂わせている雰囲気はその辺の貴族の男性とはどこか違う。
(……この方はまさか!)
「あぁ……終わった」
「終わっ!?」
エディ様がその場で膝から崩れ落ちた。
そんなエディ様の絶望した声に驚いていたら、目の前に現れた男性は私の方へと向かって来て──……
そして、その人は突然私を抱きしめた。
「!?!?!?」
「ようやく会えた!! 俺の運命の人!! 会いたかった!!」
「~~!?」
すごい力で抱きしめてくる。
(え? やだ! 何これ!? 気持ち悪……それに)
─────これって、セクハラでしょーーーー!?
思わず前世の言葉が飛び出しそうになった。
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