【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました

Rohdea

文字の大きさ
20 / 20

最終話 記憶があってもなくても

しおりを挟む


「きゃーーーーリリア!  綺麗ね、これはロベルトも惚れ直すんじゃないかしら??」

  スフィアが、弾けた笑顔で言う。

「スフィアったら、大袈裟だわ……」
「ううん、絶対よ!  元々リリアにベタ惚れだったけど、これは更に惚れちゃうわ!  間違いないわよ!」
「あ、ありがとう……?」

  褒めすぎだと思うの。そんな私の気持ちが通じたのか、パチッと片目を瞑りながら、スフィアは続ける。

「今日の主役は、リリアなのよ?  世界一綺麗なお嫁さんよ!」




  ────今日は、私とロベルトの結婚式だ。




  あの、記憶喪失事件&スフィア投獄事件の後、ロベルトからの再プロポーズを受け、再び婚約を結び直した私達は卒業と同時に式を挙げる事に決めて、準備をしてきた。


  そして、今日──
  やっとロベルトのお姫様になる日がやってきた。



「……元気だな」
「ロベルト!」

  部屋に入ってきたのは、私だけの王子さま──ロベルト

「あぁ、リリア……綺麗だ!  世界一綺麗だ!!  …………俺は本当に幸せだ!!」

  ロベルトが興奮してそう言った。

  …………あらやだ。ロベルトも大袈裟だわ。

「何を言ってるの?  ロベルトの方こそ、いつも以上にカッコイイわ!」
「いや、リリアの方が!」
「ううん、ロベルトよ!!」

  終わりの見えない私達の応酬に、スフィアが呆れたようにクスクスと笑いながら部屋から出ていく。

「全くもう!  相変わらずなんだから……後は二人で勝手にやってなさーい」

  スフィアの去り際のその言葉を聞いた私達は、顔を見合わせてクスリと笑ってしまう。

「リリア、愛してる。俺のお嫁さんになってくれてありがとう」

  ロベルトが、照れたようにはにかんで想いを伝えてくれる。
  あれから、ロベルトは今まで口にしてこなかったのが嘘のように私に愛を囁くようになった。今じゃドキドキして心臓が大変な事になる毎日だ。

「ふふふ、ロベルト!  私もよ!  大好き!」
「俺も、大好きだ!」

  私はギューっとロベルトに抱き着いた。
  もうすぐ挙式開始だと言うのに、何やってるのかしらね、私達。

「そうだ……ねぇ、ロベルト?」
「ん?」
「私ね?  記憶を失くしてた時、あなたの事もすっかり忘れてしまっていたけど……」
「うん?」

  ロベルトが優しい瞳で私を見つめながら首を傾げる。

「あの時、私はもう1度あなたに恋をしたの!  ……きっと私は記憶を失くしても、何があっても何度でもあなたに恋をするのよ!」
「……!」

  ロベルトが驚いた顔をして目を瞬かせる。そして、すぐに嬉しそうに笑った。

「なら、俺は何度だって、リリアに恋をして貰えるような男でいないといけないな」
「ふふふ、大好きよ!」

  もうそのままで私には勿体ないくらい素敵なのに!

  私は嬉しくて笑みが溢れた。

「さて、時間だな。行こうか…………俺のお姫様」

  ロベルトが手を差し出してくる。
  私は、その手に自分の手を乗せて笑顔で応える。

「えぇ、行きましょう、私の王子さま!」




  ──あの日々を思い返す度に私は考える。

  あの記憶喪失が無かったら、私はロベルトの気持ちを知らないままだったかもしれない。
  そして、ロベルトも今みたいに想いを口にするようにはならなかったかもしれない。

   もし、何事も起こらずあのままの私達だったら、無事に結婚したとしても些細な事で私が勝手に不安になって衝突してしまったりして、関係は悪い方向に進んでしまったかも……なんて。

  記憶喪失になった事が良かったとはさすがに思う事は出来ないけれど、
  それでもロベルトの本当の気持ちを知る事が出来た。
  記憶も日常も取り戻せた今となってはあの元王子に少しだけ感謝しても……
  いや、無いかな。
  あの人達はちゃんと罪を償うべきだ。


  そして私は記憶があってもなくても何度でもロベルトに恋をする。
  それだけは確信を持って言える。


  ───だから、これからは何があっても大丈夫。


  これから訪れるであろう幸せな日々に、私はそっと思いを巡らせた。



~完~





✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


これで完結です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ただの言葉足らずだったカップルのモダモダ話だったので、地味だしあまり読まれないかな?
と、思っていたのですが、自分で想像していたよりも多くの人の目にとまっていたようで嬉しかったです。
本当にありがとうございました!

で、次の話なんですが……
せっかくなので、この話にも出てきたスフィア&フリード殿下のお話を。
二人の過去と、この話の事件の裏側(?)、そしてその後の二人に起きたもうひと騒動をお届け出来ればと思っています。
リリア目線では(必要無かったので)語られる事の無かった世界設定にも触れてます。

タイトルは、

『モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした』

……まんまですね。えぇ、今回も迷走しました。タイトルつけるの苦手です……

いつもは最終話と同時に次の話を投稿してますが、今回は一足早く投稿しています。
ひたすら、フリード殿下が溺愛して追いかけてるような話(となる予定)ですが、
もし興味と時間があれば、ぜひ!

それではここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
しおりを挟む
感想 13

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(13件)

ダンク30
2022.10.08 ダンク30
ネタバレ含む
解除
ジャースミン
ネタバレ含む
2021.04.03 Rohdea

ありがとうございます(*´▽`人)

あっちを先に!
こちらもお読み下さりありがとうございます!
そうなんです。こちらと繋がっております!!
(単体でも分かるようにしていますが)
こっちを読むと先の展開が軽くネタバレして申し訳ないのですが、
この話にあった事件の裏側をもっと掘り下げる形になりますので、
ぜひ、楽しんで頂けたら嬉しいです!
また、タイミング的にあちらも、この話の時間軸に入る辺りとなりましたので、より楽しめるかと!
リリアとロベルトも登場しますよー

お読み下さり、本当にありがとうございました!
あちらの話の更新頑張ります( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧

解除
リコ
2021.03.28 リコ
ネタバレ含む
2021.03.28 Rohdea

ありがとうございます(*゚▽゚*)

お久しぶりです!
お忙しい中、お読み下さりありがとうございました!

はい。出ましたクズ王子! コイツに同情はいりません!
もちろん生ゴミ転生ヒロイン(笑)にもです!
そして、更新中のあちらではこの2人もっと登場します。
今は過去編なので、登場はもう少し先になりますが……
自滅していく2人の登場をぜひ、お待ちください。

ありがとうございました!
引き続きあちらの更新を頑張ります( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧

解除

あなたにおすすめの小説

私の何がいけないんですか?

鈴宮(すずみや)
恋愛
 王太子ヨナスの幼馴染兼女官であるエラは、結婚を焦り、夜会通いに明け暮れる十八歳。けれど、社交界デビューをして二年、ヨナス以外の誰も、エラをダンスへと誘ってくれない。 「私の何がいけないの?」  嘆く彼女に、ヨナスが「好きだ」と想いを告白。密かに彼を想っていたエラは舞い上がり、将来への期待に胸を膨らませる。  けれどその翌日、無情にもヨナスと公爵令嬢クラウディアの婚約が発表されてしまう。  傷心のエラ。そんな時、彼女は美しき青年ハンネスと出会う。ハンネスはエラをダンスへと誘い、優しく励ましてくれる。 (一体彼は何者なんだろう?)  素性も分からない、一度踊っただけの彼を想うエラ。そんなエラに、ヨナスが迫り――――? ※短期集中連載。10話程度、2~3万字で完結予定です。

【短編】記憶を失くした令嬢が、二度目の恋に落ちるまで

夕凪ゆな
恋愛
 ある雪の降る日の朝、ヴァロア伯爵家のリディアのもとに、信じられない報せが届いた。  それは、愛する婚約者、ジェイドが遠征先で負傷し、危篤であるという報せだった。 「戻ったら式を挙げよう。君の花嫁姿が、今から楽しみだ」  そう言って、結婚の誓いを残していったジェイドが、今、命を落とそうとしている。  その事実を受け入れることができないリディアは、ジェイドの命を救おうと、禁忌魔法に手を染めた。

不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら

柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。 「か・わ・い・い~っ!!」 これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。 出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。

花言葉は「私のものになって」

岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。) そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。 その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。 美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。 青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。

勇者様がお望みなのはどうやら王女様ではないようです

ララ
恋愛
大好きな幼馴染で恋人のアレン。 彼は5年ほど前に神託によって勇者に選ばれた。 先日、ようやく魔王討伐を終えて帰ってきた。 帰還を祝うパーティーで見た彼は以前よりもさらにかっこよく、魅力的になっていた。 ずっと待ってた。 帰ってくるって言った言葉を信じて。 あの日のプロポーズを信じて。 でも帰ってきた彼からはなんの連絡もない。 それどころか街中勇者と王女の密やかな恋の話で大盛り上がり。 なんで‥‥どうして?

偽りのの誓い

柴田はつみ
恋愛
会社社長の御曹司である高見沢翔は、女性に言い寄られるのが面倒で仕方なく、幼馴染の令嬢三島カレンに一年間の偽装結婚を依頼する 人前で完璧な夫婦を演じるよう翔にうるさく言われ、騒がしい日々が始まる

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。