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最終話 記憶があってもなくても
しおりを挟む「きゃーーーーリリア! 綺麗ね、これはロベルトも惚れ直すんじゃないかしら??」
スフィアが、弾けた笑顔で言う。
「スフィアったら、大袈裟だわ……」
「ううん、絶対よ! 元々リリアにベタ惚れだったけど、これは更に惚れちゃうわ! 間違いないわよ!」
「あ、ありがとう……?」
褒めすぎだと思うの。そんな私の気持ちが通じたのか、パチッと片目を瞑りながら、スフィアは続ける。
「今日の主役は、リリアなのよ? 世界一綺麗なお嫁さんよ!」
────今日は、私とロベルトの結婚式だ。
あの、記憶喪失事件&スフィア投獄事件の後、ロベルトからの再プロポーズを受け、再び婚約を結び直した私達は卒業と同時に式を挙げる事に決めて、準備をしてきた。
そして、今日──
やっとロベルトのお姫様になる日がやってきた。
「……元気だな」
「ロベルト!」
部屋に入ってきたのは、私だけの王子さま──ロベルト
「あぁ、リリア……綺麗だ! 世界一綺麗だ!! …………俺は本当に幸せだ!!」
ロベルトが興奮してそう言った。
…………あらやだ。ロベルトも大袈裟だわ。
「何を言ってるの? ロベルトの方こそ、いつも以上にカッコイイわ!」
「いや、リリアの方が!」
「ううん、ロベルトよ!!」
終わりの見えない私達の応酬に、スフィアが呆れたようにクスクスと笑いながら部屋から出ていく。
「全くもう! 相変わらずなんだから……後は二人で勝手にやってなさーい」
スフィアの去り際のその言葉を聞いた私達は、顔を見合わせてクスリと笑ってしまう。
「リリア、愛してる。俺のお嫁さんになってくれてありがとう」
ロベルトが、照れたようにはにかんで想いを伝えてくれる。
あれから、ロベルトは今まで口にしてこなかったのが嘘のように私に愛を囁くようになった。今じゃドキドキして心臓が大変な事になる毎日だ。
「ふふふ、ロベルト! 私もよ! 大好き!」
「俺も、大好きだ!」
私はギューっとロベルトに抱き着いた。
もうすぐ挙式開始だと言うのに、何やってるのかしらね、私達。
「そうだ……ねぇ、ロベルト?」
「ん?」
「私ね? 記憶を失くしてた時、あなたの事もすっかり忘れてしまっていたけど……」
「うん?」
ロベルトが優しい瞳で私を見つめながら首を傾げる。
「あの時、私はもう1度あなたに恋をしたの! ……きっと私は記憶を失くしても、何があっても何度でもあなたに恋をするのよ!」
「……!」
ロベルトが驚いた顔をして目を瞬かせる。そして、すぐに嬉しそうに笑った。
「なら、俺は何度だって、リリアに恋をして貰えるような男でいないといけないな」
「ふふふ、大好きよ!」
もうそのままで私には勿体ないくらい素敵なのに!
私は嬉しくて笑みが溢れた。
「さて、時間だな。行こうか…………俺のお姫様」
ロベルトが手を差し出してくる。
私は、その手に自分の手を乗せて笑顔で応える。
「えぇ、行きましょう、私の王子さま!」
──あの日々を思い返す度に私は考える。
あの記憶喪失が無かったら、私はロベルトの気持ちを知らないままだったかもしれない。
そして、ロベルトも今みたいに想いを口にするようにはならなかったかもしれない。
もし、何事も起こらずあのままの私達だったら、無事に結婚したとしても些細な事で私が勝手に不安になって衝突してしまったりして、関係は悪い方向に進んでしまったかも……なんて。
記憶喪失になった事が良かったとはさすがに思う事は出来ないけれど、
それでもロベルトの本当の気持ちを知る事が出来た。
記憶も日常も取り戻せた今となってはあの元王子に少しだけ感謝しても……
いや、無いかな。
あの人達はちゃんと罪を償うべきだ。
そして私は記憶があってもなくても何度でもロベルトに恋をする。
それだけは確信を持って言える。
───だから、これからは何があっても大丈夫。
これから訪れるであろう幸せな日々に、私はそっと思いを巡らせた。
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
これで完結です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
ただの言葉足らずだったカップルのモダモダ話だったので、地味だしあまり読まれないかな?
と、思っていたのですが、自分で想像していたよりも多くの人の目にとまっていたようで嬉しかったです。
本当にありがとうございました!
で、次の話なんですが……
せっかくなので、この話にも出てきたスフィア&フリード殿下のお話を。
二人の過去と、この話の事件の裏側(?)、そしてその後の二人に起きたもうひと騒動をお届け出来ればと思っています。
リリア目線では(必要無かったので)語られる事の無かった世界設定にも触れてます。
タイトルは、
『モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした』
……まんまですね。えぇ、今回も迷走しました。タイトルつけるの苦手です……
いつもは最終話と同時に次の話を投稿してますが、今回は一足早く投稿しています。
ひたすら、フリード殿下が溺愛して追いかけてるような話(となる予定)ですが、
もし興味と時間があれば、ぜひ!
それではここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
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