5 / 28
レラニア・アボット(毒薔薇視点)
しおりを挟む私の名前はレラニア・アボット。
伯爵家の長女よ!
私のお母様は亡くなってしまったのだけど、その昔“社交界の薔薇”と呼ばれるほどの美貌を持った人だった。
そんな誰もが見惚れるほどのお母様の結婚相手が、これまたなーんの特徴も無い、すっごく“平凡”って言葉がお似合いなお父様だったんだから笑っちゃう!!
お父様って見た目も冴えないけど、運だけは良かったみたいね。
だけど、運が良いのは私よ! だって私は恵まれたわ! 私の容姿はお母様に似たんだもの!!
それに比べて、妹と来たら……これもまた笑っちゃう!
私には2つ下の妹、リラジエがいるんだけど、これがまた……
容姿はお父様に似て、冴えない! なんなの? あの地味っぷり。
本当に私の妹かしら? って言いたくなっちゃう。
見た目も中身も、本当に平凡! つまらない子。
お母様に似なかった事だけはちょ~っとだけ可哀想だとは思うけどね!
社交界デビューがこれからだとはいえ、家で大人しくしてるだけのつまらない妹が私は嫌いなのよね。
あんなのが妹だなんて私の価値が下がるでしょ。
だから、あの子が幼馴染のグレイルの事を好きだと知った時、思いついたのよ。
──あの子の好きなものを奪ってやったらどんなに気分が良いかしらってね。
グレイルは何でかは知らないけど、リラジエをやたらと可愛がっていたわ。
妹だとでも思っていたのかしら?
見た目も中身もお父様みたいに冴えない男だけど、私にかかればイチコロよね!
そう思って、グレイルを呼び出した。
「レラニア? 何だよ。珍しいな。改めて話があるって何の用だ?」
「あぁ、グレイル。ごめんなさいね、急に呼び出したりして」
私はニッコリ微笑む。
男なんて笑っておけばたいてい頬を染めて……ふふ。ほらグレイルったら単純ね!
「い、いや? 構わないが……」
「そう? 良かったわ。…………それで、あのね? こんな事、私から言うのも恥ずかしいのだけど……」
「?」
「グレイルに私の恋人になって欲しいの! ……ダメかしら?」
あら、嫌だ。グレイルが驚きで固まったわ。面白~い!
バカな男よねぇ……
「な、な、な!?」
「私ね……実はずっとあなたの事が好きだったの……」
「は? 本当に!?」
「本当よ。でも、あなたどちらかと言うと……リラジエを可愛がっていたから……」
私が伏し目がちにそう口にするとグレイルは慌て出した。
「いや、リラジエは単に妹のように可愛がってただけで……!」
「なら……私とお付き合いしてくれる?」
「喜んで!!」
グレイルは秒で乗ってきたわ。
うふふ、あはは! 男って単純ね~
これで良いわ。後は……リラジエにこの事を報告して……
と思ったら私が話す前にグレイルが伝えてたみたい。
何も知らないって罪ね~。残酷な男!
ふふふ、リラジエのあの絶望した顔! 愉快だわぁ……この顔が見たかったのよ!
日に日に元気の無くなるリラジエを見て私は一人で楽しんだ。
そうして私は数日後、計画通りグレイルに別れを告げたわ。
あのグレイルの驚いた顔ったらもう!
やっぱり残念な男だわ。
リラジエの好みって分かんないわ。
そして、さらに数日後、別れ話に納得していなかったグレイルを「もう一度話をしましょう?」と言って我が家に呼び出した。
「ごめんなさいね? グレイル。リラジエがどうしてもって聞かなくて……私はやめなさいって言ったのだけど」
こうして私は予め決めていたセリフを言う。
「リラジエはあなたの事が好きだったみたいなの……だから、私……」
言外に私があなたに別れを告げたのはリラジエの気持ちを知ったから……と匂わせる。
すると、単純なグレイルは、リラジエにお前のせいか! って視線を向けたわ。
その時のリラジエの顔!!
私が笑いを堪えて震えているのを、悲しくて泣いていると思ったグレイルがリラジエを詰り問い詰め責め出した時はどうしようかと思ったわ。笑いが止まらなくて。
やっぱり極めつけはグレイルのこの言葉よね!
「俺がお前なんかを選ぶわけないだろ!」
当然だけど、この言葉にリラジエはかなりのショックを受けたみたい。
あぁ、面白い!!
グレイルのこの言葉を聞いて私は思ったわ。
──もっとこの気持ちをリラジエに味合わせてやりたい、ってね!
だから、私は私に寄ってくるバカな男達を使ってみる事にしたの。
そしたら、みーんな私の予想通りの行動を取るんだもの。最高よね!
まぁ、そんなバカな男達の相手をしていたせいで、“社交界の毒薔薇”なんて呼ばれるようになってしまったけど!
何よ、毒薔薇って。お母様みたいに薔薇だけでいいのに。失礼しちゃうわ!
まぁ、おそらくこの名は私の美貌に嫉妬した愚かな女達が呼び始めた事なのでしょうけど。
嫌ね、醜いわねぇ、女の嫉妬は。
──ただ、ちょっと迷惑。このままじゃ、私に釣り合った最高の男が近寄って来ないじゃないの。困るわ。
寄ってくるのは格下の雑魚ばかり。
最高の男といえば、普通は王子なんだけど、残念ながら我が国の王子様は、現在御年5歳。
18歳の私ではさすがに無理!
そうなると狙いは高位貴族の令息!
そんなある日の事よ。
「失礼……君が、レラニア・アボット嬢?」
「……!!」
とあるパーティーで私にそう話しかけて来たのは、
「え! ジークフリート・フェルスター様……?」
「そうです。初めまして」
まさかのフェルスター侯爵家令息のジーク様だった。
さすが私ね! “釣れたわ!” そう思った。
その時は。
128
あなたにおすすめの小説
可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした
珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。
それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。
そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。
私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。
でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。
私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います
***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。
しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。
彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。
※タイトル変更しました
小説家になろうでも掲載してます
姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました
珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。
そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。
同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。
姉に婚約破棄されるのは時間の問題のように言われ、私は大好きな婚約者と幼なじみの応援をしようとしたのですが、覚悟しきれませんでした
珠宮さくら
恋愛
リュシエンヌ・サヴィニーは、伯爵家に生まれ、幼い頃から愛らしい少女だった。男の子の初恋を軒並み奪うような罪作りな一面もあったが、本人にその自覚は全くなかった。
それを目撃してばかりいたのは、リュシエンヌの幼なじみだったが、彼女とは親友だとリュシエンヌは思っていた。
そんな彼女を疎ましく思って嫌っていたのが、リュシエンヌの姉だったが、妹は姉を嫌うことはなかったのだが……。
姉の歪んだ愛情に縛らていた妹は生傷絶えない日々を送っていましたが、それを断ち切ってくれる人に巡り会えて見える景色が様変わりしました
珠宮さくら
恋愛
シータ・ヴァルマは、ドジな令嬢として有名だった。そして、そんな妹を心配しているかのようにずっと傍らに寄り添う姉がいた。
でも、それが見た目通りではないことを知っているのといないとでは、見方がだいぶ変わってしまう光景だったことを知る者が、あまりにも少なかった。
旦那様が遊び呆けている間に、家を取り仕切っていた私が権力を握っているのは、当然のことではありませんか。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるフェレーナは、同じく伯爵家の令息であり幼馴染でもあるラヴァイルの元に嫁いだ。
しかし彼は、それからすぐに伯爵家の屋敷から姿を消した。ラヴァイルは、フェレーナに家のことを押し付けて逃げ出したのである。
それに彼女は当然腹を立てたが、その状況で自分までいなくなってしまえば、領地の民達が混乱し苦しむということに気付いた。
そこで彼女は嫁いだ伯爵家に残り、義理の父とともになんとか執務を行っていたのである。
それは、長年の苦労が祟った義理の父が亡くなった後も続いていた。
フェレーナは正当なる血統がいない状況でも、家を存続させていたのである。
そんな彼女の努力は周囲に認められていき、いつしか彼女は義理の父が築いた関係も含めて、安定した基盤を築けるようになっていた。
そんな折、ラヴァイルが伯爵家の屋敷に戻って来た。
彼は未だに自分に権力が残っていると勘違いしており、家を開けていたことも問題ではないと捉えていたのである。
しかし既に、彼に居場所などというものはなかった。既にラヴァイルの味方はおらず、むしろフェレーナに全てを押し付けて遊び呆けていた愚夫としてしか見られていなかったのである。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる