【完結】私は落ちこぼれで構いません! ~未来の大魔術師様が今日も私を困らせて来ます~

Rohdea

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15. 魅了が効かなかった理由

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「フィーリーに魅了が効かなかったのは、無効化のスキルがあったからだったんだな」

  私の心臓を何度も跳ねさせたルシアンは、こっちの気も知らずに呑気に話題を変えて来た。

  (助かったようなそうでないような……複雑)

「そうだと思うわ。彼女がどのタイミングで力を使ったか分からないから、意識的にしたわけじゃないけれど」
「無意識に発動させてんのかよ……」
「ほ、本能よ!  多分……でも、そうなると私は良いとしても、ルシアンは何で無事なのかしらね」

  前にも話し合ったけど答えは出なかった。

「……それなんだけどさ」
「あ、何か心当たりでもあった?」
「んー……さっきフィーリーのスキルを知ってようやく“もしかして”と思ったんだけどさ」
「?」

  そう言ってルシアンは、着ていた服の首元を緩め、ゴソゴソと何かを取り出した。
  そして、取り出された物を見て私は驚いた。

「ルシアン!  それ!」
「これ、覚えてるか?」
「覚えてるも何も……」

  (どうして持っているの?)

  思わずそんな声が出そうになった。



  ────ルシアンの持っているそれは……



  多分、1年くらい前の授業だった。その時の授業内容は『魔力付与』
  魔石と呼ばれる石に自分の魔力を込めるというもの。

「何であんたとペアなのよ」
「それは俺のセリフだ!」
 
  石に魔力を込めた後はペアになって石を贈り合う事になったのだけど、何故か私の贈る相手はルシアンだった。

  ちなみに、この魔力付与で魔石に込められる力は属性やスキルはあっても無くても関係が無く、魔力さえあれば良いので私にも可能。

「俺の魔力を込めた魔石が貰えるなんてお前は幸せ者だな」
「あー、はいはい、そーですねー」
「……棒読みかよ!!」

  相変わらずキャンキャン吠えるルシアンを軽く受け流し、私は石に魔力を送り込む。

  (……ルシアンに必要な力って何だろう?)

  そうだ!
  どうせならこっそり……

  この時の私はを思いついた。

  (ふふ、ルシアンは気付くかしら?)

  そんな気持ちで私は魔力を込めた。


「俺からはコレだ」

  はいよっと軽い感じで魔石を渡された。

「ん?  ……これって」
「何だ?  何か文句あるか?」
「な、無い」

  ルシアンから渡された魔石に込められていた力は“守護”だった。
  しかも、私の無効化のような魔術耐性ではなく、物理攻撃に効くタイプ。

  (なぜ物理?)

「お前からはー」
「……どうぞ」

  私はそっと自分の魔力を込めた魔石をルシアンに渡す。

「これは“増幅”か?」
「他にルシアンに適当な力が思い浮かばなかったのよ!」
「ふーん、ますます俺が最強になりそうだな」
「!!」

  そんな事を言いつつもルシアンが嬉しそうに笑ったので驚いてしまった。

  (……だけど、やっぱり気付かないか……)

  私が石に込めた力は“増幅”で間違いない。
  だけど、それは表向き。
  私はこっそり2つ目の力をあの石に込めていた。

  もしかしたら、ルシアンなら気付くかもと思ったのだけど。
  やっぱりそこまでは無理ね。

  あの時、私はそう思った──……





  ルシアンが取り出したのは、その時の授業で私が贈った魔石だった。
  チェーンに通してわざわざペンダントにして首にかけていたらしい。

「まさか、あれからずっと持っていたの?」
「うっ……だって…………だったから」

  ルシアンの声が小さ過ぎて聞こえない。あと何で頬が赤いの?
  つられて私も赤くなる。

「フィ、フィーリーが!  く、くれた物だった……から」
「え?  それは授業で……」
「それでも!  特別な意味なんて……無くても、その……ずっと持っていたかったんだ」
「……!」

  また子犬の顔!!

  (何よ……もう本当に本当に何なのよぉ……)

  頬が熱いしドキドキする。
  私は火照る頬を抑えながら訊ねる。

「あ、あの時の魔石がなんだと言うの?」
「……なぁ、ずっと俺はこれをお前と交換した時から不思議に思っていたんだが」
「?」

  ルシアンの表情も真面目なものに変わる。

「お前これの効果は“増幅”とか言ってたけど、本当はそれだけじゃないよな?」
「!!」
「貰った時から何か二重の力を感じていたんだけど、どうしてももう1つの力が分からなくてさ。だけど今日確信したよ。お前、これに“無効化”の力を入れただろ?」

  (その通りよ!)

  ルシアン、なんの力なのか分からなかっただけで、2つの力を込めていたのは気付いていたんだ。

  (さすが、未来の大魔術師様だわ……)

「うっ……その通り。無効化の力を入れました……」
「だよな。なら俺が魅了にかからなかったのはこれのおかげもあるだろ」
「あ!」

  ようやく納得した。
  ルシアンはご丁寧にチェーンまで通して毎日この魔石を持ち歩いていた。けれど、今まで力が発動する機会は無いままここまで来て、この度、エリィ様と対峙した時にきっと初めて発動したんだわ。
   そうよ!  前に一瞬、意識を持っていかれそうになったと言っていた。きっとあの時だ。

  (でも、おそらく、ルシアンは魔力量も多いから元々掛かりにくいというのもあったとは思うけれど)

「まぁ……俺はそれだけでは無いと思っているけどな」
「え!?  そうなの?  他にも?」

  その言葉に驚いた私がルシアンの顔をじっと見つめると、ルシアンはフッと小さく微笑んで、私に向かって手を伸ばす。
  そして、その手はそっと私の頬に触れた。

  私の胸がドキッと高鳴る。

「……俺の中にフィーリーがいたから、だよ」
「?」

  (どういう意味──?)

  目をぱちくりさせる私に向かってルシアンはまた、微笑んだ。

「ルシ……」
「それにしてもすごい力だよなぁ」

  ルシアンはそのまま私の言葉を遮って話を変えると呑気に感心し始めた。

「万能そうな力だけど、これ1度かかった魔術を打ち消す力は無いんだろ?」
「そうよ」

  私のこの“無効化”の力は、既にかかってる魔術を無効にする力は無い。
  だから、闇の力に囚われているリシェリエ様を“無効化”の力で目覚めさせる事は出来なかったし、エリィ様に魅了されているであろう人達を元に戻す力も残念ながら……無い。

「そうなると、どうやってアイツらを正気に戻すかだよな」
「そこよね。リシェリエ様が闇の力で眠っていたように属性の力によるものなら、反対の属性をぶつける事で解けるけど、スキルによる力は……」
「……本人に解かせる以外、手は無いって事か?」
「おそらく」
「……」
 
  私の言葉にルシアンは無言だったけど、それが肯定の意味だと私には分かった。

「でも、私が無効化のスキルで魅了にかからなかったり、ルシアンも魔石の力で魅了にかからなかったという事は、スキルの力でなら対抗出来るという事よね?」
「……確かに」

  私やルシアンのスキルでは無理でも誰か他の人のスキルを使えば魅了は解けるのでは?

「誰か魅了に対抗出来るスキル持ちの人っていないのかしら?」
「スキルは誰もが持っているものじゃないからな」
「それでも探してみるしかないと思う」
「……となると、魔術師協会の本部に行くしかない、か」

  判明したスキルは鑑定士により鑑定された場合は記録されている。
  もちろん、私やおそらくエリィ様のように隠してる場合もあるので、全てでは無いけれど。
  それでも現在判明しているスキルの記録された物を管理をしているのが魔術師協会だ。

  (ちなみに大魔術師様は、その魔術師協会の会長となるのでルシアンは未来の会長でもあるんだっけ)

「仕方が無い………か」

  ルシアンは何故か魔術師協会に行く事に気が乗っていない様子。
  けれど、今は他に方法が無いので協会を訪ねる事にした。

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