【完結】記念日当日、婚約者に可愛くて病弱な義妹の方が大切だと告げられましたので

Rohdea

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45. 初夜とは

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 エドゥアルト様は困惑しながらも、私の言う通りにカーペットの上にうつ伏せになる。

(でも……どうして、エドゥアルト様はこんなに困惑しているのかしら?)

 初夜は夫の望むことをする───
 ズリズリは結婚式で披露したから、やることと言えば踏み踏みしかないと思うのだけど?
 私はうーんと首を傾げる。

(ま、いっか)

 私はエドゥアルト様の元に近付いて片足を上げる。

「……レティーシャ!  一応、君の声に従ってみたがやはり“これ”は何かが違うと思うん…………」
「───えいっ!」

 ムニュッと私の足がエドゥアルト様の背中を踏みつける。

「……だぁぁあぁ!?」

(まあ!  とてもいい声!  これはいい感じの位置に入ったようね!)

 ガーネット様の教えによると背中は背中でも場所によって侯爵様の反応が違うという。
 好みは人によって違うので、それは実際に踏んでみないと分からないらしい。
 そして大事なのは力加減。
 ジェローム様を踏みつけた時とは違う。
 痛めつけたいわけじゃない。

(悦んでもらいたいの!)

「レ……」
「どうです?  エドゥアルト様。次は少し強めにいきますわ!  ───えいっ!」

 ───ムニュッ、グリッ

「ティ~~~~っ!」
「ふふ、どうです?  これがガーネット様直伝の夫が喜ぶ踏み踏みですわ!」
「…………ケホッ、これ……は」
「エドゥアルト様?」

 私が横からエドゥアルト様の顔を覗き込むと、エドゥアルト様はうっとりしたような恍惚の表情を浮かべていた。

「懐かしい…………んグッ!」

 私がグリッを追加するとエドゥアルト様は更に嬉しそうな声を上げる。
 懐かしい、そう言ってくれた。
 これはエドゥアルト様を初めて踏みつけたというジョエル様の感覚を思い出してくれている───
 そう思ったら嬉しくなった。

(幸せ……夫に悦んでもらうって)

 こんなに幸せなことだったんだわ!!

「エドゥアルト様────大好きですわ」
「んっ……!  ぐぅっ」

 グリグリグリグリ……
 また更に別の刺激を与えながら私は素直に感じた言葉を口にする。

「レ、レティーシャ……」
「わたくし!  これからも!  あなたをもっともっと悦ばせられるように……」
「うぉうッ!」
「───精進いたしますわ!!」

 ムギュッ!!
 私は最大限に力を込めた。
 エドゥアルト様は声にならない声を上げてとっても幸せそうにぐったりしていたので、私も嬉しくなった。

(初夜とは────夫の望むことをする……その通りですわ!)  

 ふふっと私は笑った。


─────


 翌朝。

「おはよう、エドゥアルト。そしてレティーシャさん」
「お、おはようございます!」

 先に朝食の席に着いていた公爵夫人───義母が微笑む。

「改めて、我が家にようこそ」
「お、お義母……さま!」

 私が感激しているとお義母さまはエドゥアルト様を見る。

「ふふふ、朝からエドゥアルトがこんなに静かだなんて…………ねえ、あなた」
「ああ。いつもなら朝から、どこにそんな元気があるんだと言わんばかりにペラペラ喋るのに」

 公爵様──お義父さまも頷きながらそう言った。
 昨夜、エドゥアルト様はだんだん無口になっていった。
 今はどこかぼんやりしている。

「本当にレティーシャさんと出会ってからのエドゥアルトは面白いわね」
「ギルモア家の嫡男に出会った時を思い出す」
「ええ。あれも面白かったわね────“ともだちとはふむものだった!”とか言い出して」

 懐かしそうに語る義両親。

「ボクはおもいっきりふまれた!  これはもうしんゆーだ!  とか言い出していたな」

 可愛かったと思い出し笑いする義父。

(何それ!  ……エドゥアルト様、可愛い!)

「……レティーシャ。念の為に聞く。それはなんの震えだ?」
「もちろん!  エドゥアルト様の可愛さに、ですわっっ!」

 ようやくここで言葉を発したエドゥアルト様。
 昔話が聞けた私は悶えながらも満面の笑みで答えた。



 その日の午後。
 私は昨夜の成果をガーネット様に伝えるべく、エドゥアルト様とギルモア家に向かった。

「昨日、やんちゃに暴れていましたが今日もジョシュアくんは相変わらずでしょうか?」
「まあ、ジョシュアだからな」

 ようやくいつもの調子を取り戻した様子のエドゥアルト様とそんな会話をしながら馬車を降りる。
 すると思った通り元気な声が聞こえてきた。

「あうあ、あうあ、あうあ!」
「オーホッホッホ!  今日も元気ねぇ、ジョシュア?」
「あうあ、あうあ、あうあ~!!」

(ん?)

 ───お祖母様!  僕は待ってたです!  ずっと!

(これはジョシュアくんの抗議の声?)

「エドゥアルトとレティーシャさんもそろそろ到着するんじゃないかしら?」

 ───お祖母様!  誤魔化すダメです!  僕は惑わされません!

「はいはい、お腹がすいたのね?」
「あうあ!」

 ニパッ! 
 ───いいえ、僕のお腹はいっばいです!

「うん?  ジョシュアがガーネット様に抗議しているな?」
「笑顔のせいで全く伝わってませんけど……」

 ジョシュアくんって怒る時もニパッ!  なのね。

「あうあ、あうあ……あうあーーーー!」
「あ、こらジョシュア!」

 ───お祖母様、いいですか?  僕は昨晩…………あ、お兄さーん、お姉さーんーー!!

 プリプリしていたジョシュアくんは私とエドゥアルト様の姿を見つけると、話を打ち切って目を輝かせて興奮した。
 そして勢いよく駆け出す。

「あうあ~~!」

 ニパッ!

「待ってたです?  いいところに?  ジョシュアくん。どうしたの?」

 ジョシュアくんは私たちの側に到着するなりそう言った。
 私たちは顔を見合わせる。

「うん?  そんなに興奮するなんて珍しいな?」
「あうあ!」
「なるほど。ジョルジュ様とジョエルが覚醒前でガーネット様との会話が成立しなくて困っていたのか」
「あうあ!」

 ────さあ、お兄さん!  僕の熱い思いを余すことなく伝えるです!

 ジョシュアくんがばーんと胸を張った。
 私たちはまた顔を見合わせる。

「僕の熱い思いって?」
「説明が足りないところは、ジョエルそっくりだな」
「あうあ!」

 ニパッ!
 ジョシュアくんは語った。

「昨夜、ボクはずっといい子でドアの前でお座りして待ってました?」
「ジョシュアくん?」
「あうあ!」
「───お父様の眉間のシワが増えても、お母様がもう寝なさい、と天使の顔で言っていても……?  つまりそれって怒られたのよね?  ジョシュアくん……」
「あうあ!」

(ジョシュアくんはは一晩中、怒られながら何を待って───)

 そう思ったところで思い出す。

 ─────ホーホッホッホッ!  分かったわ。なら今夜、この私がジョシュアを引きずってあげるわよ!
 ─────だって、今日はとーってもめでたい日ですもの!  大サービスよ、ジョシュア!

(あれだ!)

 ベビーの僕には早いって言いながら、ちゃっかり待ってたんだ!

(ガーネット様、ガブガブとお酒飲んでたからなぁ……)

 きっと記憶にない。
 私がそう思いながら横目でチラッとガーネット様を見ると、まるで二日酔いなど微塵も感じさせない出で立ちでジョシュアくんと私たちの会話に首を傾げている。

「はいはい、ジョシュア。私はレティーシャさんとお話があるからエドゥアルトと遊んでなさい!」
「あうあ」

 ガーネット様が手をパンパンと叩きながら、ジョシュアくんをひょいっと持ち上げてエドゥアルト様に渡す。
 ジョシュアくんは手足をパタパタさせながら、お兄さーんと訴えている。

「はっはっは!  ジョシュア、気持ちは分かるがもう少し大きくなるまで我慢だ」
「あうあ!」
「そう落ち込むな……まずは大きな男になるため、今日も走り込むぞ!」
「あうあ!」
「はっはっは!  それに、だ。僕も少し走ってスッキリしたい気分なんだ!  付き合ってくれ!」
「あうあ!」

 ───合点承知です!  

(ってどこの言葉よ、それ……)

 ところでエドゥアルト様もスッキリしたいって何だろうと不思議に思った。

「ホホホ!  二人とも元気ねぇ~。さあ、レティーシャさん。昨夜は踏み踏みの成果を聞かせてもらいましょうか」
「は、はい!」

 私は気を取り直して張り切ってガーネット様に昨夜の出来事を伝える。
 踏み踏みの話を最初は笑顔でウンウンと頷いていたガーネット様。
 しかし、途中から顔色が段々曇ってゆく。

「それで、空が明るくなって来る頃になったので、わたくしは───」
「……っ!  待って、レティーシャさん!」

 何故かストップをかけられた。

「ガーネット様?」

 ガーネット様がガシッと私の両肩を掴む。

「まさかとは思うけど…………」
「はい?」
「もしかして昨晩は、ずーーーーっとエドゥアルトの背中を踏んで、た?」

 私は目をパチパチさせた後、満面の笑みで頷いた。

「はい!  もちろんです」
「!」

 何故かガーネット様が息を呑む。

「…………レティーシャさん。あなた“初夜の作法”はお母様からうかがってるって言っていたわよ……ね?」
「はい!  母からは夫の望むことをしなさい、と!」
「ホホホ、そうね。それで?」
「え?  それだけですわ?」
「は?  …………それ、だけ?」

 またガーネット様が息を呑んだ。

「え?  それで……レティーシャさんは一晩中、踏み踏み?」
「はい!  踏み踏みですわ!  さすがに明け方は少し眠かったですけど」
「ホホ、ホホホ。一晩中……エドゥアルト……は?  何か言って、た?」

 私はうーんと考える。

「あ、本にそんなことは書かれていなかった……!  みたいなことは最初に」
「───っっっ!」

 何故かエドゥアルト様の名前を叫んで天を仰ぐガーネット様。

「ガーネット様?」
「───レティーシャさんっっ!」


 ────その後、私は初夜の作法をガーネット様にみっちり叩き込まれた。

 とりあえず……
 穴を掘ってもらってその場に埋まりたくなった。
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