【完結】可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~

Rohdea

文字の大きさ
8 / 66

8. 無能はいらない

しおりを挟む


 その後、パーティーはクリフォード様とサヴァナの婚約が正式に発表され、会場は大盛り上がりを見せていた。
 腕を組んで幸せそうに笑い合う二人を私は遠くから見つめる。
 お父様とお母様も嬉しそうでその様子にまた胸がチクリと痛んだけれど、大丈夫、大丈夫……と自分に言い聞かせた。

 ふと、外をみたら雨はかなり強くなっていて土砂降りになっていた。




 そうして、パーティーが終わり屋敷に戻るために乗り込んだ馬車の中は、私にとって苦痛でしかなかった。

「──サヴァナったら婚約したばかりなのに、雨がすごいから今夜は王宮に泊まるわ。それにクリフォード殿下ともずっと一緒にいたいんだもん、ですって。誰に似たのかしら?  ねぇ、あなた?」
「全く言い出したら聞かない子だな、サヴァナは」

 お父様とお母様はサヴァナの行動を窘めつつも、仕方がないなぁで済ませている。
 きっと、これが私だったら引きずってでも家に連れ帰ったでしょうに。

(未来の王妃になろうというのに婚約の段階でそんなことを口にするなんて、はしたない!  変な噂が立ったらどうするの?  とかなんとか言って)

 ───なのに、どうしてサヴァナはなんでも許されるの?
 私にはそれがどうしても分からない。

「それよりも、サヴァナの力よ!  素晴らしいわ!  守護よ、守護の力!」

 はしゃぐお母様に対してお父様も大きく頷いた。

「ああ。力を受け継いで来た者なら誰もが憧れる力だ」
「そんな最強の力を持ったサヴァナはきっと殿下にも王家にも大事にされて、きっと幸せになれるわね」
「───ああ、そうだな。そこの出来損ないの無能とは違ってな」

 お父様にジロリと睨まれて、私はビクッと身体を震わせる。

(───ついに来た!)

「……まさか、長子のくせに力が発揮出来ない無能が存在するとはな。前代未聞だ」
「あら、あなた。クリフォード殿下とサヴァナが言っていたじゃない、そこの無能は頑張っている振りをしていただけで実は裏で遊んでいたって。つまり私たちを騙していたんでしょう?」
「──違うわ!  私は本当にずっ…………っっ!」

 二人の冷たい視線が私に向けられる。その目は反論するなんて生意気な。
 そう言っていた。

「サヴァナがいなかったら、この無能のせいでローウェル伯爵家は信頼を失っていたかもしれんな」
「ええ、本当にね。だからマルヴィナ、あなたは可愛い妹に感謝することね」
「お父様……お母様……」

 それっきり二人が私の方を見ることは無かった。


❋❋❋


「ふふ、今日もいってきま~す」

 それから、サヴァナは毎日のように王宮へと通うようになった。

 私はてっきりサヴァナはお妃教育を受けているのだとばかり思って少しだけ同情していた。
 なぜなら、マナーはもちろん、王妃になるなら外交も重要。そうなると他国語の勉強だって……と覚えること勉強しなくてはいけないことはたくさんあるから。


『お妃教育はやること多くて大変じゃない?  大丈夫?』

 毎日、毎日、今日も疲れたわ~と言って帰ってくるサヴァナについついそんな声をかけた。
 なのに、サヴァナはあっけらかんとした顔で言った。

『お妃教育?  クリフォード殿下はそういう難しいことはゆっくりで構わないって言ってくれているわ』
『え?』
『だって、私の授かった守護の力は、クリフォード殿下と愛し愛されることで大きな力を発揮するんですって!  だから、今は殿下と仲良くすることの方が大事らしいの、ふふ』

 サヴァナはそう言って意味深に笑う。けれど、私は疑問だった。
 その話……本当かしら?  
 ただ勉強を怠けるための言い訳なんじゃないかしら?

(だって、国を守護するっていうのはもっと……)

 ───ズキンッ

『────いっ!』
『お姉様?  どうかしたの~?』

 突然、頭に鋭い痛みが走って思わず頭を押さえた。

『だ……大丈夫。なんでもないわ』
『そう?  変なお姉様~』
『……』

 ───ズキズキズキ……

(どうして、また頭痛が……?)

 結局、この時は私の頭痛が酷すぎて話は打ち切るしかなかった。




(頭痛も気になるけど、それより今、私が最も気になっていることは……)

 サヴァナが誕生日を迎えてから数日がたっても、お父様は私の今後について何も話してくれない。そのことがすごく気になっていた。

(……もうローウェル伯爵家を継ぐのは私しかいないはずなのに……どうして何も言わないの?)

 てっきり、婿候補となる人をすぐにでもあてがわれて、強引に結婚させられるくらいのことは考えていたのに、不気味なくらい静かだった。


 ───そして、その疑問の答えは、ちょうどサヴァナの誕生日から約一ヶ月後に判明した。
 その日、朝食を食べ終えた私は何故かお父様の執務室に呼ばれていた。
 そして衝撃的な一言を告げられた。


「お、お父様……?  もう一度お願い、します……」
「はぁ、一度では分からなかったのか?  お前の今後が決まった────この家、いや、この国から出て行け」

 ───コノクニカラデテイケ?

 どうして?  
 だって私はこのローウェル伯爵家を───……

「ん?  ああ、その顔。マルヴィナ、もしかしてお前は自分がローウェル伯爵家を継ぐのだと思っていたのか?」
「だって!  サヴァナが王家に嫁ぐと決まった今、……私、しかいません」

 私がそう訴えるとお父様はお腹を抱えて笑いだした。

「ははは!  誰が無能で出来損ないのお前なんかにこの家を継がせるものか!」
「え……」
「この一ヶ月、王宮の魔術師や、王家とも話し合ってローウェル伯爵家の後継についてはじっくり話し合ってきたのだ」
「……」
「確かにお前は間違いなく我がローウェル家の娘だ。一族の特徴でもある、人より多い魔力量がそれを物語っている」
「……」
「だが、お前は長子なのに力を授かれなかった前代未聞の無能なんだぞ?  そんな奴にこのローウェル伯爵家を託せるはずがないだろう?」

 その言葉を聞いた瞬間、私は目の前が真っ暗になった気がした。
 唯一残っていた希望がガラガラと崩れていく音がする。
 そして、同時に理解した。

(───もう、私の居場所なんてどこにもない)


「マルヴィナ、知っているか?  サヴァナが力を授かった直後は、突然、天候が大きく変わったり、嵐が起きて、地域によっては災害が発生したりと、実は国の守護の力が発揮出来ていなかったのだ」
「……」

 確かにこの一ヶ月……特に前半は天候が不順だった。今は落ち着いているけれど。

「実はな。サヴァナの力が不安定な理由──その原因はお前にあるのでは?  そんな話になったのだ」
「っ!  ……ど、どうして私、のせいなのですか?」

 聞き返した私にお父様は冷たい目で私を見た。そしてため息を吐く。

「お前が散々嫌がらせをしてきたからだろう?  親にまで隠れてコソコソと」
「──!」
「そのことがサヴァナの精神的負担になっているのでは?   そんな話になったというわけだ」
「……」

 聞かなくても分かる。
 それを強く進言したのはクリフォード様なのだろう。
 私は自分の心の中に強い怒りの感情が湧き上がってくるのを感じていた。

「まぁ、サヴァナの力は最近はもう安定したと聞くが、ここはやはり、な。この先のことを考えて……」
「……」
「無能なお前など、いた所で害はあってもなんの役にも立たんからな!」
「……」

(いても役には立たない……だから、私はいらない)

「───お前をこの国から追放することは満場一致で可決された!  反対する者はゼロだった!  さあ、荷物をまとめてさっさとこの家からもこの国からも出て行け!」

しおりを挟む
感想 417

あなたにおすすめの小説

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

処理中です...