【完結】可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~

Rohdea

文字の大きさ
46 / 66

46. 呪いと愛

しおりを挟む


(……なに?  今の音……)

 今、私の中で明らかに何かが壊れた。
 だけど、それが何なのかはよく分からない。

「……マルヴィナ?  どうした?」

 トラヴィス様は私の様子がおかしいと感じたみたい。
 私を抱きしめたまま、心配そうな表情を浮かべている。
 私自身も何が起きたのかよく分からないので、感じたことをそのまま伝えることしか出来なかった。

「あ、頭の中で……音がしました」
「音?」
「はい。それで、何かが……割れました」
「割れた?  ………………リリー!!」

 最初は首を傾げていたトラヴィス様が、すぐに何かに気付いてハッとした。
 そして、なぜか慌ててリリーベル様のことを呼んだ。

「な、何でそこで私を呼ぶんですの?  お兄様、ご覧になって?  愛の大告白のおかげでクロムウェル王国の方々、みーんな石像みたいにカチカチに固まっていますわよ?」

 突然、名指しされたリリーベル様も戸惑いを隠せていない。
 あと、ついでにサヴァナやクリフォード様たちの様子まで説明してくれた。

(妙に静かだったのは固まっていたからだったのね……?)

 トラヴィス様はリリーベル様の言葉を無視して叫んだ。

「リリー!  いいから今すぐマルヴィナを……マルヴィナをその瞳で視てくれ!」
「は?  お兄様ったらマルヴィナさんのお兄様への気持ちを私の力で知ろうと?  それはさすがに……ヘタレにも程がありましてよ?」
「ヘタ……ち、違う!  そうじゃない!  いいから。すぐに確認して欲しいことがあるんだよ!  あと、俺はヘタレじゃない!」
「え、違いましたの?」

 リリーベル様は真顔で聞き返した。
 さすがのトラヴィス様も、真顔で聞き返され少しショックを受けた様子。

「なんでだよ!  ……と、とにかくヘタレの話は後だ……後にしてくれ!  今はマルヴィナを……」
「そうは仰いますけれど、どこまで視れるかは不明ですわよ?」
「分かっている。だが、奥深くまで視る必要はない。俺の考えている通りなら、すぐに違いが感じ取れるはずだから」

(……二人はいったいなんの話をしているの?)

 兄妹の、そんなある意味微笑ましいやり取りを経て、リリーベル様が戸惑い気味の私に訊ねてくる。

「えっと ───マルヴィナさん、お兄様があんなこと言っていますけれどよろしくて?」
「は、はい……」
「分かりましたわ」

 私が頷くとリリーベル様の瞳が金色に変わった。
 トラヴィス様があそこまで言うんだもの。
 きっと、リリーベル様に視てもらわないと分からない“何か”があるのだと思う。

(それに、私はいつだってトラヴィス様のことを信じているわ)

 もちろん、リリーベル様のことも!
 そう思って私はリリーベル様の美しい金色の瞳をじっと見つめ返した。

「!?」

(何かしら?  私の身体が熱くなった気がする……)

 それは、リリーベル様に視られているからなのか、なのか……私にはよく分からなかった。

「……」
「……」

 少しして、リリーベル様の瞳の色がいつもの青色に戻る。
 ふぅ、と大きな息を吐いたリリーベル様は困惑した表情でトラヴィス様に向かって言った。

「……お兄様!  マルヴィナさんの周りにあった黒いモヤが……消えて無くなっています」
「やっぱりそうか!」

 トラヴィス様は大きく頷きながら答えた。

(……私の周りにあった黒いモヤ?)

 なんのことが分からず首を傾げていると、トラヴィス様が私に向かって説明をしてくれる。
 けれどなぜか、ルウェルン語だった。

 《───マルヴィナ。君の魔力を封じていた呪い……が解けたかもしれない》
 《え?》
 《今、リリーが言っただろう?  黒いモヤが消えて無くなっている、と》
 《はい、聞きましたけど……》

 トラヴィス様は、続けて更に説明してくれた。
 以前、リリーベル様が私の心の奥底を視てしまった時に、私の周りには黒いモヤがあったという。
 だけど今、そのモヤが消えているという。

 《……もしかして、その黒いモヤが私の呪いの正体だったのでしょうか?》

 私の魔力を半分ほど封印していたらしい呪い。
 さっき、頭痛がした時に色々と考えてみて私は思った。
 この“呪い”をかけたのは他の誰でもない。私自身だったのではないかと。

 愛情が欲しくても、誰からも省みられることがなく、それが苦しくて耐えられなくて全てに蓋をしたかった私は、そう思った時、自分自身で魔力も一緒に封印したんじゃないかって。

 ……そして、ずっと心が隙だらけだった私は、あの日、サヴァナにその封印していた半分を奪われてしまった。

 《そういうことだろうな》
 《呪い……》
 《だけど、どうして急に解けたんだ?  解呪の魔法は使った形跡は無いし……》
 《……それ、は》

 それが解けたのは……
 トラヴィス様が私が一番欲しかったもの……愛をくれたから……!

 私はギュッとトラヴィス様を抱きしめ返す。

 《え!?  マ、マルヴィナ!?》

 私に抱きつかれて戸惑っているトラヴィス様に私は目元に涙を付かべながら微笑んだ。

「トラヴィス様が私を……愛していると言ってくれたからです……」
「え?」
「“ローウェル伯爵家の長子である”マルヴィナわたしではなく、ただの“マルヴィナ”である私を……」
「そんなの当たり前だ!」

 キュン!
 即答してくれるトラヴィス様に対して私の胸がキュンとする。

「……好き」

 そうしたら、自然とこの言葉が私の口からこぼれた。
 私はトラヴィス様の耳元でそっと囁く。

「マル……ヴィナ?」
「好き、です。私もあなたが……トラヴィス様のことが好きなのです」
「………………え?」
「私もあなたと家族になりたい……新しい家族を一緒に作りたい、です」

(───ああ、不思議)

 トラヴィス様に愛の言葉や私の気持ちを告げるたびに、じんわりと身体が温かくなっていく。
 そして身体が……すごく軽いわ?

「マルヴィナ……」
「……トラヴィス様」

 私たちは互いの目を見つめて微笑み合う。

(幸せ……)

 私がずっとずっと欲しかったものがここにある───

 互いの顔がそっと近づこうとしたその時、部屋の中に悲鳴が上がった。

「う、嘘よーーーー」

 声のする方向に視線を向けなくても分かるサヴァナの悲痛な声。

「どうしてあんなにカッコいい人が私ではなくてお姉様を選んだとか言っているの?  ……そんなのおかしい」

 そっと振り向いてみると、サヴァナの目は心ここに在らずでどこか虚ろだった。

(……あ!  今なら───)

 そんなサヴァナの姿を見た私はトラヴィス様に訊ねた。

 《トラヴィス様……今なら、サヴァナから“奪い返せる”でしょうか?》
 《え?》
 《…………自分で分かるのです。“今の私”にはまだまだ魔力の入る余地がある、と》

 きっと今の私なら、サヴァナから魔力を奪い返してもちゃんと私の力として収めることが出来る……そんな気がするの。

 《大丈夫だ……マルヴィナならやれる》
 《トラヴィス様……!》

 大好きな人に背中を押された私は、サヴァナの元に近付く。

「なんで?  ……違う……こんなのおかしい……有り得ない、お姉様のくせに……」

(すごい、恨み節だわ)

「───サヴァナ」
「お姉様……?」

 私はまだ、どこか虚ろな表情のサヴァナに向かって言った。

「あなたに奪われた私の“魔力”…………全て返してもらうわ!」
しおりを挟む
感想 417

あなたにおすすめの小説

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

処理中です...