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第一部:第一章 夢への第一歩
(四)共に一歩②
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これらの審査内容は、事前通知されていないため、試験で困惑する者が多い。
そもそも、魔法使用に慣れていない者は制御すらできず、基本である魔力球さえ作れない。
今までの試験を終え、疲労した身には慣れない魔法使用は相当堪える。ここまでの試験によって蓄積した疲労のため、集中できずに苦労する者も多かった。
そんな中、魔法を得意とする者達は、難なく試験を終えていく。
グレイズはさも当たり前のように即座に終了させると、フンとひとつ鼻を鳴らして席を立つ。そのまま周囲を眺めていたが、ラーソルバールが視界に入ると、激しく睨みつけた。
先ほどまでの出来事で、完全に敵視するようになったのだろう。そんな事は知る由もないラーソルバールは、友人達の様子を心配そうに見詰めていた。
だがラーソルバールの心配などどこへやら、シェラは若干白色の強い、美しい球体を作り上げて、即時に試験を終了。ガイザも苦労はしたものの、無難な球体を作り、笑顔で終わる事ができた。そしてラーソルバールはというと……。模擬戦闘の出来を考慮されたのか、一番最後に行うようにと通達されていた。
いざ順番となると、当然だが注目が集まってしまい、本人は視線を気にしつつ非常にやりにくそうに試験を始めた。
周囲が固唾を飲んで見守る中、ラーソルバールは眉間にシワを寄せながらも、虹色に光る大きな球体を作り上げて、試験を終えることが出来た。
本人いわく「魔力制御なんてほとんどやったことが無いので、非常に焦った。むーん、という感じで頑張った」という事らしい。球体が完成した際に、周囲がどよめいたので失敗したのかと思った、と付け加えた。
「最後の締め、ご苦労さん」
ガイザはラーソルバールの肩をポンと叩くと、安心したのか自身も大きく息を吐いた。こうして悲喜交々、色々な思いが交錯する試験は全て終了となった。
あとは試験の結果発表まで、食堂で待機ということになっていたのだが……。
食堂で椅子に座るなり、ラーソルバールは開口一番「疲れた!」と言って、テーブルに突っ伏した。
「こらこら、お行儀が悪いよ」
「疲れたもん。精神的に!」
シェラの苦笑いを軽く流すと、顔を上げ顎を机につけて文句を言った。
「試験だから気が張るよな。でもこういう気の抜けたところも見られてるかもしれないぞ」
ラーソルバールは眉をしかめて「むー」と唸ると、ガイザを睨みつけた。
そんな視線に気付かぬふりをし、ガイザは顔を背ける。
「まあ、そんなんじゃお前は落ちないだろうけどさ」
ガイザはそのまま周囲を眺める。シェラはその意味するところを察した
「そうだね。ラーソルは大丈夫。と……少し人が減ってるね」
「途中で諦めて帰った連中が、結構居るからな。俺に大言壮語していた奴も、途中で帰っちまったらしいな」
「それってゲイル?」
テーブルに突っ伏したままの姿勢は変えない。
「ああ。来る前には『俺が騎士団長になって、お前をこき使ってやる』とか言いやがって」
ラーソルバールは思わず吹き出した。
「言いそうだわー」
話を聞いていて、不思議に思ったのかシェラが口を開く。
「その人は冗談で言ってたんじゃないの? どんな人か知らないけど」
「いやあ本気だよ。他人の事は言えないけど、金満貴族のろくでなし馬鹿息子でね。オーカス卿って聞いたことあると思うけど」
「……ああ! 領地内に主要街道があるのを良いことに、かなり酷い通行税を取ってるとか言う……。」
何となく察したように、シェラは苦笑した。
そもそも、魔法使用に慣れていない者は制御すらできず、基本である魔力球さえ作れない。
今までの試験を終え、疲労した身には慣れない魔法使用は相当堪える。ここまでの試験によって蓄積した疲労のため、集中できずに苦労する者も多かった。
そんな中、魔法を得意とする者達は、難なく試験を終えていく。
グレイズはさも当たり前のように即座に終了させると、フンとひとつ鼻を鳴らして席を立つ。そのまま周囲を眺めていたが、ラーソルバールが視界に入ると、激しく睨みつけた。
先ほどまでの出来事で、完全に敵視するようになったのだろう。そんな事は知る由もないラーソルバールは、友人達の様子を心配そうに見詰めていた。
だがラーソルバールの心配などどこへやら、シェラは若干白色の強い、美しい球体を作り上げて、即時に試験を終了。ガイザも苦労はしたものの、無難な球体を作り、笑顔で終わる事ができた。そしてラーソルバールはというと……。模擬戦闘の出来を考慮されたのか、一番最後に行うようにと通達されていた。
いざ順番となると、当然だが注目が集まってしまい、本人は視線を気にしつつ非常にやりにくそうに試験を始めた。
周囲が固唾を飲んで見守る中、ラーソルバールは眉間にシワを寄せながらも、虹色に光る大きな球体を作り上げて、試験を終えることが出来た。
本人いわく「魔力制御なんてほとんどやったことが無いので、非常に焦った。むーん、という感じで頑張った」という事らしい。球体が完成した際に、周囲がどよめいたので失敗したのかと思った、と付け加えた。
「最後の締め、ご苦労さん」
ガイザはラーソルバールの肩をポンと叩くと、安心したのか自身も大きく息を吐いた。こうして悲喜交々、色々な思いが交錯する試験は全て終了となった。
あとは試験の結果発表まで、食堂で待機ということになっていたのだが……。
食堂で椅子に座るなり、ラーソルバールは開口一番「疲れた!」と言って、テーブルに突っ伏した。
「こらこら、お行儀が悪いよ」
「疲れたもん。精神的に!」
シェラの苦笑いを軽く流すと、顔を上げ顎を机につけて文句を言った。
「試験だから気が張るよな。でもこういう気の抜けたところも見られてるかもしれないぞ」
ラーソルバールは眉をしかめて「むー」と唸ると、ガイザを睨みつけた。
そんな視線に気付かぬふりをし、ガイザは顔を背ける。
「まあ、そんなんじゃお前は落ちないだろうけどさ」
ガイザはそのまま周囲を眺める。シェラはその意味するところを察した
「そうだね。ラーソルは大丈夫。と……少し人が減ってるね」
「途中で諦めて帰った連中が、結構居るからな。俺に大言壮語していた奴も、途中で帰っちまったらしいな」
「それってゲイル?」
テーブルに突っ伏したままの姿勢は変えない。
「ああ。来る前には『俺が騎士団長になって、お前をこき使ってやる』とか言いやがって」
ラーソルバールは思わず吹き出した。
「言いそうだわー」
話を聞いていて、不思議に思ったのかシェラが口を開く。
「その人は冗談で言ってたんじゃないの? どんな人か知らないけど」
「いやあ本気だよ。他人の事は言えないけど、金満貴族のろくでなし馬鹿息子でね。オーカス卿って聞いたことあると思うけど」
「……ああ! 領地内に主要街道があるのを良いことに、かなり酷い通行税を取ってるとか言う……。」
何となく察したように、シェラは苦笑した。
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