聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第三章 学校生活

(一)魔法と気晴らし③

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 武器の販売は制限されていて、武器の所持には許可が必要になる。
 店としては、武器を買うはずの無い娘四人の来店に、最初は乗り気でない接客だった。
 ところが途中で態度が変わった。私達が付けていた騎士学校のバッチが目に入ったのだろう。あまり熱心に勧められても困るので、素っ気無い態度を取りつつ、並べられた武器をゆっくりと眺めて回る。
 剣や斧、槍、棍棒、槌、弓、そして鎧と盾。
 さすがは王都最大と言われる店、様々な種類が並べられている。
 剣にしても、型に流し込んで作られた量産品から、職人が手がけた逸品まであった。前者は粗悪品と言えそうな物もあり、後者は金額が桁違いの物ばかりで、とても手の出せる代物ではなかった。
 四人それぞれが、好みのものがある様で、眺めているものが違う。私は直剣も気になったが、やはり片刃の剣を探していた。
 探し物は見つけたが、種類も少なく、私の趣味に合うものでは無かった。
 十分に店内を歩き回ったところで、三人の様子を伺うと、私と同じように、大体満足したように見えた。
 結局、店側の期待を裏切って何も買わずに外に出ると、背後から店員の舌打ちのようなものが聞こえた。
「面白かったけど、良い物なかったね」
 舌打ちに対する仕返しだろうか、シェラが目配せをしながら言った。
「品揃えの割には、欲しい物なかったよ」
 シェラに応えるように、少し大きな声で言う。
「店員の態度もあまり良くなかった」
 意外にもフォルテシアが続いた。彼女の場合、思った事を口にしただけだろう。そういえば、店員を邪魔そうにしていた気がする。
「おなか減ったよ。昼食にしましょう」
 エミーナの言葉に全員が頷いた。
「そうだね、お昼にしよう」
 お昼は、私のお気に入りの店に案内すると、予め言ってある。
 案内したのは「熊の子亭」という食堂。これは父と私が時折利用していた店だ。
 騎士団で父と同期だった人がオーナーをしている。
 先代は熊のような方で、現オーナーが店を継いだ時に名前を今のものに変えたらしい。聞く話だと、以前は「穴熊亭」だったそうだ。
 このお店、私が言うのも何だけど、何を食べても美味しい。
 お勧めはシチューだけど、川魚の料理なんかも人気のメニューだ。
 最近は、魔法の有効活用ということで、王都から少し離れた港町から、海産物を凍らせて輸送することが可能になったらしい。
 今ではそちらを調理したものも、評判になっているようだ。
 魔法で食材を冷凍、保冷するなんて事、考えもしなかったけど、便利な事もできるんだね。
 魔法様々だ。
 私達は今のまま鍛錬しても系統が違うから、そういう魔法使えるようにはならないんだけどね。魔法の有用性というものを感じたし、生活に直結しているんだということを知る事ができた。
 しかし、これは輸送中の保冷効力維持のために、魔法使いが一人付きっ切りになるのだろうか。であれば、その食材を使用したメニューの値段が跳ね上がるということは、今なら理解できる。
 魔法の事を忘れるつもりで出かけてきて、魔法に関心させられるというのも皮肉なものだ。
 帰ったら頑張ることにして、まずは大好きなシチューを食べたい。
「おや、ラーソルちゃんか。久しぶりだな」
 客の様子を見に出てきたオーナーが、私に気付いたのか声をかけてくれた。
「騎士学校の友達と来たんです。よろしく御願いします」
「おう、じゃあ、お友達のためにも気合を入れて作るぜ。今日は食材が揃ってるから、何でもいいぞ」
 愛想よく応対すると、調理場に戻っていった。
 全員が注文を終えて暫くすると、それぞれの料理が運ばれてきた。
 私の前には当然シチュー。
 シェラは私と同じ物、フィルテシアとエミーナは川魚の香草蒸しが、目の前に運ばれてきた。
 それからお店からのおまけ、ということで蟹の焼き物が一皿置かれた。全員で分けろという事らしい。
 川蟹ではなく、海の蟹。早速魔法の恩恵にあずかる事になるとは思わなかった。
 出てきた料理を三人が美味しそうに食べるのを見て、私はひと安心した。
 おまけして頂いた蟹は、水揚げした直後に氷結させたのだろう。全く生臭さは無く、とても美味しかった。そして美味しい食べ物は、皆の会話を弾ませた。
 学校が始まってからの、それぞれの思いを語り合う、いい機会になったんじゃないかと思う。
 いい一日だった、と言えるんじゃないかな。
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