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第一部:第三章 学校生活
(四)思い出と因縁(後編)③
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五回戦以降は、毎回相手が抽選で決まるようになっており、先が読めない展開に誰もがやきもきさせられた。
二人は準々決勝まで勝ち進んだが、さすがにここまで残った生徒は強かった。
ソードマスターと名高いジェイル・ノーフィスの長男、オーガーハンターとして名の売れた冒険者マッドンの次男など、他者を圧倒してきた骨のある者達ばかりだった。
誰もがこの少年二人のうち、どちらかが優勝すると信じて疑わなかったが、エラゼルが前者を、ラーソルバールが後者をそれぞれ破り、人々を驚かせた。
この後も二人は勝ち、遂に誰もが予想していなかった女子生徒同士の決勝戦を迎える事になった。
「約束通りに、エラゼルと戦うまで負けなかったよ」
ラーソルバールの純粋な笑顔につられるように、エラゼルも笑みを浮かべた。待ちに待った宿敵との直接対決。嬉しくない訳がない。
連戦しているが、二人にそれほど疲労の色は無い。
試合開始後すぐに勝負を決めてきたエラゼルと、練習のように長い戦いをしてきたラーソルバール。対照的な戦いをしてきたように見えたが、実際ラーソルバールとしては楽な戦いだったのかもしれない。
「貴女は私が倒します」
エラゼルは剣を握る手に力を入れた。
二人が試合場に立つと、すぐに開始の合図が響き渡った。
エラゼルが先手を取り、素早く切りつけた。
しかし、その剣はラーソルバールの身体を捉える事無く、軽々と受け流される。エラゼルはそのまま、反撃を許す事無く横薙ぎする。
ラーソルバールは事も無げにそれをかわすと、予備動作無しでエラゼルの胸元への突きを繰り出した。エラゼルはそれを間一髪で弾くと、間合いを取る。
さすがのエラゼルも肝を冷やしたようで、即座に反撃するだけの切り替えが出来なかった。
対するラーソルバールは、嬉しそうにエラゼルを見つめていた。
エラゼルならば、避けるか捌くだろうと信じていたのだろう。
「ふざけるな!」
怒りのままに、次々と攻撃を繰り出すが、ラーソルバールには届かない。
エラゼルは攻撃の速度を上げた。閃く剣が沈み掛けた夕日を受けて、ほんのりと赤い線を描く。
「くっ!」
渾身の剣を受け止められて、エラゼルは美しい顔を歪めた。
「ここからが勝負だ」
相手の剣を力一杯剣を弾くと、エラゼルは大きく息を吸った。
他人の目を気にしていては勝てない。泥臭くても、勝てば良い。いや、勝ちたい。
エラゼルは体を低くして飛び込み、勢いよく切り上げる。ラーソルバールが半歩退がってそれを受け流すと、周囲から大歓声が上がった。
幼年学校の生徒達の試合だということを忘れてしまいそうな、高度な技の連続だった。
エラゼルは受け流された剣の勢いを殺さずに、弧を描いて横薙ぎの剣へと変える。ラーソルバールの胴を捉えると思われた剣は、次の瞬間には跳ね上げられていた。
「な!」
思わずエラゼルは驚きの声を上げる。気付けばラーソルバールの剣が首元に突き付けられていた。
「……私の負けだ」
認めるしかなかった。
精一杯やって負けたのだ。だが悔しくないはずが無い。もっと鍛えて再戦すれば良い。この先どこかでその機会があるはずだ。
「お疲れ様。楽しかったよ」
そう言われて、エラゼルは戸惑った。
楽しかったという言葉は、敗者には屈辱のようなもの。だが自分の中にも「楽しかった」という気持ちが有ることに気が付いたからだ。
「またやろうね」
ラーソルバールの本心から出た言葉だったが、この言葉を先々後悔することになるとは、この時は全く考えもしなかった。
「分かった」
エラゼルはニヤリと笑って、手を差し出した。ラーソルバールはその手を握って、健闘を称える。
差し出された手に、どんな意味が有るのかを考えもせずに。
二人は準々決勝まで勝ち進んだが、さすがにここまで残った生徒は強かった。
ソードマスターと名高いジェイル・ノーフィスの長男、オーガーハンターとして名の売れた冒険者マッドンの次男など、他者を圧倒してきた骨のある者達ばかりだった。
誰もがこの少年二人のうち、どちらかが優勝すると信じて疑わなかったが、エラゼルが前者を、ラーソルバールが後者をそれぞれ破り、人々を驚かせた。
この後も二人は勝ち、遂に誰もが予想していなかった女子生徒同士の決勝戦を迎える事になった。
「約束通りに、エラゼルと戦うまで負けなかったよ」
ラーソルバールの純粋な笑顔につられるように、エラゼルも笑みを浮かべた。待ちに待った宿敵との直接対決。嬉しくない訳がない。
連戦しているが、二人にそれほど疲労の色は無い。
試合開始後すぐに勝負を決めてきたエラゼルと、練習のように長い戦いをしてきたラーソルバール。対照的な戦いをしてきたように見えたが、実際ラーソルバールとしては楽な戦いだったのかもしれない。
「貴女は私が倒します」
エラゼルは剣を握る手に力を入れた。
二人が試合場に立つと、すぐに開始の合図が響き渡った。
エラゼルが先手を取り、素早く切りつけた。
しかし、その剣はラーソルバールの身体を捉える事無く、軽々と受け流される。エラゼルはそのまま、反撃を許す事無く横薙ぎする。
ラーソルバールは事も無げにそれをかわすと、予備動作無しでエラゼルの胸元への突きを繰り出した。エラゼルはそれを間一髪で弾くと、間合いを取る。
さすがのエラゼルも肝を冷やしたようで、即座に反撃するだけの切り替えが出来なかった。
対するラーソルバールは、嬉しそうにエラゼルを見つめていた。
エラゼルならば、避けるか捌くだろうと信じていたのだろう。
「ふざけるな!」
怒りのままに、次々と攻撃を繰り出すが、ラーソルバールには届かない。
エラゼルは攻撃の速度を上げた。閃く剣が沈み掛けた夕日を受けて、ほんのりと赤い線を描く。
「くっ!」
渾身の剣を受け止められて、エラゼルは美しい顔を歪めた。
「ここからが勝負だ」
相手の剣を力一杯剣を弾くと、エラゼルは大きく息を吸った。
他人の目を気にしていては勝てない。泥臭くても、勝てば良い。いや、勝ちたい。
エラゼルは体を低くして飛び込み、勢いよく切り上げる。ラーソルバールが半歩退がってそれを受け流すと、周囲から大歓声が上がった。
幼年学校の生徒達の試合だということを忘れてしまいそうな、高度な技の連続だった。
エラゼルは受け流された剣の勢いを殺さずに、弧を描いて横薙ぎの剣へと変える。ラーソルバールの胴を捉えると思われた剣は、次の瞬間には跳ね上げられていた。
「な!」
思わずエラゼルは驚きの声を上げる。気付けばラーソルバールの剣が首元に突き付けられていた。
「……私の負けだ」
認めるしかなかった。
精一杯やって負けたのだ。だが悔しくないはずが無い。もっと鍛えて再戦すれば良い。この先どこかでその機会があるはずだ。
「お疲れ様。楽しかったよ」
そう言われて、エラゼルは戸惑った。
楽しかったという言葉は、敗者には屈辱のようなもの。だが自分の中にも「楽しかった」という気持ちが有ることに気が付いたからだ。
「またやろうね」
ラーソルバールの本心から出た言葉だったが、この言葉を先々後悔することになるとは、この時は全く考えもしなかった。
「分かった」
エラゼルはニヤリと笑って、手を差し出した。ラーソルバールはその手を握って、健闘を称える。
差し出された手に、どんな意味が有るのかを考えもせずに。
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