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第一部:第三章 学校生活
(四)思い出と因縁(後編)②
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想定通り見た限りでは、それほど大した相手は居なかった。だが、実際にラーソルバールの試合を見た時には判断に困った。
確かに予想通りラーソルバールは勝ったが、強いのか弱いのか分からなくなった。明らかに格下と思われる相手に手こずって居たかと思えば、最後は鮮やかな剣捌きで勝利してみせたのだ。
「何なのだ?」
エラゼルには理解ができなかった。
翌日の二回戦、三回戦も同様だった。エラゼルは試合開始直後に圧勝し、ラーソルバールは勝利したものの、前回と同様に手間取っているように見えた。
だが、今度は試合の内容を良く見た。ラーソルバールは相手の攻撃は全て余裕をもって処理していて、攻撃時も手を抜いていた。
相手に合わせてそれなりに時間をかける。それは何を意味するのか。
目立たないようにしているのか、はたまた遊んでいるのか。
エラゼルは理解できずに悩んだ。
三日目。四回戦から決勝までが行われる。
この頃になると、ようやく実力差が無くなり好勝負が増えてきた。だが、エラゼルは男子生徒を相手にしても余裕の勝利を決めて、四回戦を終える。
対してラーソルバールは相変わらず、手間取っているように見える試合を続けた。
「何故、わざわざあんな手ぬるい試合を続けるのか!」
エラゼルは、試合を終えて引き上げてきたラーソルバールを捕まえて、疑問をぶつけた。
「何故と言われても……、いつも一人で練習してばかりで、対人の経験があまり無いから、良い機会だと思って」
突然の事に驚いたが、ラーソルバールは素直に自分の考えを伝え、笑顔でエラゼルの顔を見た。
「なに……師と手合わせせんのか?」
「ん……。貴族とは名ばかりの我が家に、剣の先生なんて雇う余裕は無いよ」
意外な答えの連続だった。
エラゼルは相手を、自分と同じ基準で考えていたことを恥じた。
「だが……。何でもない。済まなかった」
「だが」の後に続けたかった言葉を、飲み込んだ。
エラゼルはミルエルシという名について、調べたことが有った。
その時に知ったのは、ラーソルバールの父が名の通った騎士であった事、そして病で職を辞した事だった。
騎士であった父ならば、剣の相手をしてくれるのではないか。であれば、なぜ「一人で練習している」などと言ったのか。
それは病の父親がそれさえ叶わぬ状態だから、ということではないか。言葉の途中で気付いたエラゼルは、問い続ける事が出来なかった。
「エラゼルさんも頑張ってね」
「『エラゼル』で良い!」
拳を握りしめ、歯を食い縛った。
この宿敵は自分と同じ道、同じ階段を昇ってきた訳ではない。その事を、今更ながらに思い知った。
「私と当たるまで負けるな」
今のエラゼルには、この言葉を捻り出すのが精一杯だった。
「努力します」
これはエラゼルの期待した答えだっただろうか。去っていく背を見詰め、ラーソルバールは自問した。
確かに予想通りラーソルバールは勝ったが、強いのか弱いのか分からなくなった。明らかに格下と思われる相手に手こずって居たかと思えば、最後は鮮やかな剣捌きで勝利してみせたのだ。
「何なのだ?」
エラゼルには理解ができなかった。
翌日の二回戦、三回戦も同様だった。エラゼルは試合開始直後に圧勝し、ラーソルバールは勝利したものの、前回と同様に手間取っているように見えた。
だが、今度は試合の内容を良く見た。ラーソルバールは相手の攻撃は全て余裕をもって処理していて、攻撃時も手を抜いていた。
相手に合わせてそれなりに時間をかける。それは何を意味するのか。
目立たないようにしているのか、はたまた遊んでいるのか。
エラゼルは理解できずに悩んだ。
三日目。四回戦から決勝までが行われる。
この頃になると、ようやく実力差が無くなり好勝負が増えてきた。だが、エラゼルは男子生徒を相手にしても余裕の勝利を決めて、四回戦を終える。
対してラーソルバールは相変わらず、手間取っているように見える試合を続けた。
「何故、わざわざあんな手ぬるい試合を続けるのか!」
エラゼルは、試合を終えて引き上げてきたラーソルバールを捕まえて、疑問をぶつけた。
「何故と言われても……、いつも一人で練習してばかりで、対人の経験があまり無いから、良い機会だと思って」
突然の事に驚いたが、ラーソルバールは素直に自分の考えを伝え、笑顔でエラゼルの顔を見た。
「なに……師と手合わせせんのか?」
「ん……。貴族とは名ばかりの我が家に、剣の先生なんて雇う余裕は無いよ」
意外な答えの連続だった。
エラゼルは相手を、自分と同じ基準で考えていたことを恥じた。
「だが……。何でもない。済まなかった」
「だが」の後に続けたかった言葉を、飲み込んだ。
エラゼルはミルエルシという名について、調べたことが有った。
その時に知ったのは、ラーソルバールの父が名の通った騎士であった事、そして病で職を辞した事だった。
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それは病の父親がそれさえ叶わぬ状態だから、ということではないか。言葉の途中で気付いたエラゼルは、問い続ける事が出来なかった。
「エラゼルさんも頑張ってね」
「『エラゼル』で良い!」
拳を握りしめ、歯を食い縛った。
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「私と当たるまで負けるな」
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「努力します」
これはエラゼルの期待した答えだっただろうか。去っていく背を見詰め、ラーソルバールは自問した。
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