聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第三章 学校生活

(四)思い出と因縁(後編)①

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(四)

 突然、エラゼルに大きな声で呼び止められたラーソルバールは、飛び上がる程驚いた。
 エラゼルに何かした覚えもない。全く予期して居ない出来事だった。
「なんでしょうか?」
 恐る恐る、訳も分からぬまま聞き返すと、エラゼルは苛立ったように睨み付けた。
「私に何か言うことは無いのですか?」
 何かと言われても困る。
「私……、何かしました?」
 怯える訳でもなく、少し困ったよう答える宿敵を見て、エラゼルは悟った。
 きっと自分は意識されていないのだと。
「試験の結果などを見て何も感じないのですか?」
「結果? あ、すみません、私は掲示をいつも見てないんです。学内順位とか気にしたことがないので……。でも、エラゼルさんがとても優秀だという事は聞いてますよ」
 試験の結果さえ、気にしていなかったというのは、エラゼルにとっては想定外だった。
「違う、そうではない! もうよい!」
 怒りに任せて捨て台詞を吐き、去っていく相手をラーソルバールは呆然と見つめていた。

 そして幼年学校最終年。
 幼年学校最終年は運動能力測定では無く、代わりに剣術大会が催されるのが慣わしだった。
 試験の方は、この一年も相変わらずで終わり、幼年学校での催しは剣術大会のみとなっていた。
 剣の指導自体は護身用という目的で、幼年学校でも月に二度程度行われていた。従って、生徒達にとって剣は馴染みの無いものではない。
 だが、多くの貴族達は個人的に剣術師範を雇い稽古をするのが当たり前になっているため、貧富の差と同様に毎年優劣の差がはっきり出てしまっていた。剣術大会は、幼年学校最終年のみ学年全員で競う決まりで、一度きりの機会に多くの貴族の子らが、小さな名誉欲しさに優勝を狙っていた。
 そんな中、エラゼルには自信があった。
 自分の腕に勝る者は少ないと。
 名誉など要らないが、どんな物だろうと優劣をつけられるのであれば、一番上でなくてはならない。それがデラネトゥス家の者の有るべき姿だと思っていた。
 剣術指導では、稀に他クラスとの合同授業が行われていたが、エラゼルの目には強そうに見える相手が居なかった。
 注意すべきは一人。宿敵ラーソルバール・ミルエルシ。
 彼女が勝ち上がってくるだろうという、予感というよりは確信に近いものがある。
 剣の腕は見たことが無いので分からないが、運動能力が高いのは間違いが無い。だが、油断さえしなければ勝てるはずだ。
 ここで宿敵を倒して優勝すれば、きっと積年の気持ちも晴れるに違いない。そんな思いを胸に、エラゼルは剣術大会を迎える。

 大会は三日かけて行われる事になっていた。
 初日は一回戦が行われ、エラゼルとラーソルバールは共に勝ち上がる。
 エラゼルは開始直後に、胴切りを決めて勝利した。

 宿敵の実力はどの程度のものか。
 他者の試合を眺めながら、ラーソルバールの試合を待った。
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