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第一部:第四章 ラーソルバールの休暇(前編)
(二)カンフォール村①
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(二)
「色々とお気遣いありがとうございました」
ラーソルバールは隊商の面々に、深々と頭を下げた。
「お礼を言うのは、こちらの方ですよ。安物の衣類だけで申し訳ありません」
「いえ、そんな……」
「あらまあ、別嬪《べっぴん》さんがさらに別嬪さんになっちゃって」
メルーナがラーソルバールを見て、嬉しそうに声をあげた。
彼女らの馬車も、戦闘の終息を見て追い付いてきていた。メルーナと同様、男性達は楽しそうに、そして隊商の女性達は誇らしげに、ラーソルバールを見詰めている。
先程までと同様に旅装ではあるのだが、隊商の女性達の手によってより女性らしい衣装と髪型に、仕立て上げられていたからだ。
「また、いずれお会い出来れば幸いです。申し遅れました、私はアズワーンという者で、隊商『幸せを運ぶ者』の長でございます。そしてこちらが、護衛して頂いている隊のリーダー、ロカードさんです」
「私はラーソルバールと申します。またお会いすることが有りましたら、よろしくお願いします」
皆の視線が気恥ずかしい。顔を赤くし、うつむき加減で名乗った。
「ロカードだ。名乗るのが遅くなって済まない、ギルドで護衛や傭兵を請け負ってる。嬢ちゃんは、できれば俺達のような連中の居る世界には足を踏み込まない方がいい」
「ご忠告感謝します。……では皆様、失礼致します。今後の旅のご無事をお祈り致します」
そう言って頭を下げたあと、メルーナ達と一緒に馬車に乗り込んだ。
「お待たせしてしまってすみません」
「今日はカンフォール村までだし、気にしないでいいよ。それに行商人を助けてくれたんだ、誉めこそすれ、責めることなんて出来やしないよ」
言葉の通り、メルーナは全然気にしていないようで、にこやかにラーソルバールを見つめている。
「そうそう。ひょっとしたら、あっしらも襲われてたかもしれねぇし、嬢ちゃんには感謝しとるよ。……じゃ、出発しますぜ」
御者が同意する。
この道を通るときの危険がひとつ減った、それで十分なのだろう。
「大して時間も食ってないし、一休みして馬も元気になった。暗くなる前には着けると思いますよ」
馬車から身を乗り出し、空を見上げる。遠くに見える大きな虹が、ラーソルバールの気分を晴れやかにしていた。
「あのお嬢さん、ただの街娘じゃあ無さそうですね」
アズワーンが顎髭を撫でながら、遠ざかる馬車を見詰めていた。
「貴族としても、命に関わるようなこんな厄介事に首を突っ込むとも思えないし、乗り合い馬車とか無いだろうし、何より腰が低い」
そう答えるロカード自身、何だか良く分かっていない。
剣の腕は確かだが、鎧兜も身に付けていないし、荷にある様子も無い。かといって俗に言う冒険者と呼ばれる、自分達のような存在でもない。
「不思議な娘でしたね」
「ですねえ。恩人の名前くらいは、しっかりと覚えておきましょうか」
女達も先程の着せ替えが楽しかったらしく、話に花を咲かせている。人を笑顔にしてくれる娘だ、という事は何となく分かった。
「さあ、点検も終わったし準備もできた。我々も出発しましょうか」
『幸せを運ぶ者』の一団はラーソルバールと真逆、王都へ向かい出発した。
二人が『恩人』の名を再び耳にするのは暫く後の事になる。
「色々とお気遣いありがとうございました」
ラーソルバールは隊商の面々に、深々と頭を下げた。
「お礼を言うのは、こちらの方ですよ。安物の衣類だけで申し訳ありません」
「いえ、そんな……」
「あらまあ、別嬪《べっぴん》さんがさらに別嬪さんになっちゃって」
メルーナがラーソルバールを見て、嬉しそうに声をあげた。
彼女らの馬車も、戦闘の終息を見て追い付いてきていた。メルーナと同様、男性達は楽しそうに、そして隊商の女性達は誇らしげに、ラーソルバールを見詰めている。
先程までと同様に旅装ではあるのだが、隊商の女性達の手によってより女性らしい衣装と髪型に、仕立て上げられていたからだ。
「また、いずれお会い出来れば幸いです。申し遅れました、私はアズワーンという者で、隊商『幸せを運ぶ者』の長でございます。そしてこちらが、護衛して頂いている隊のリーダー、ロカードさんです」
「私はラーソルバールと申します。またお会いすることが有りましたら、よろしくお願いします」
皆の視線が気恥ずかしい。顔を赤くし、うつむき加減で名乗った。
「ロカードだ。名乗るのが遅くなって済まない、ギルドで護衛や傭兵を請け負ってる。嬢ちゃんは、できれば俺達のような連中の居る世界には足を踏み込まない方がいい」
「ご忠告感謝します。……では皆様、失礼致します。今後の旅のご無事をお祈り致します」
そう言って頭を下げたあと、メルーナ達と一緒に馬車に乗り込んだ。
「お待たせしてしまってすみません」
「今日はカンフォール村までだし、気にしないでいいよ。それに行商人を助けてくれたんだ、誉めこそすれ、責めることなんて出来やしないよ」
言葉の通り、メルーナは全然気にしていないようで、にこやかにラーソルバールを見つめている。
「そうそう。ひょっとしたら、あっしらも襲われてたかもしれねぇし、嬢ちゃんには感謝しとるよ。……じゃ、出発しますぜ」
御者が同意する。
この道を通るときの危険がひとつ減った、それで十分なのだろう。
「大して時間も食ってないし、一休みして馬も元気になった。暗くなる前には着けると思いますよ」
馬車から身を乗り出し、空を見上げる。遠くに見える大きな虹が、ラーソルバールの気分を晴れやかにしていた。
「あのお嬢さん、ただの街娘じゃあ無さそうですね」
アズワーンが顎髭を撫でながら、遠ざかる馬車を見詰めていた。
「貴族としても、命に関わるようなこんな厄介事に首を突っ込むとも思えないし、乗り合い馬車とか無いだろうし、何より腰が低い」
そう答えるロカード自身、何だか良く分かっていない。
剣の腕は確かだが、鎧兜も身に付けていないし、荷にある様子も無い。かといって俗に言う冒険者と呼ばれる、自分達のような存在でもない。
「不思議な娘でしたね」
「ですねえ。恩人の名前くらいは、しっかりと覚えておきましょうか」
女達も先程の着せ替えが楽しかったらしく、話に花を咲かせている。人を笑顔にしてくれる娘だ、という事は何となく分かった。
「さあ、点検も終わったし準備もできた。我々も出発しましょうか」
『幸せを運ぶ者』の一団はラーソルバールと真逆、王都へ向かい出発した。
二人が『恩人』の名を再び耳にするのは暫く後の事になる。
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