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第一部:第五章 ラーソルバールの休暇(後編)
(四)魔力循環①
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(四)
「おはよ、休暇どうだった?」
朝一番の挨拶に混ぜて聞かれても、即答できるような休暇では無かった。まさか、素直に『危うく国王陛下に謁見する事になるところでした』と言えるはずもない。
実際、フェスバルハ伯爵から登城に同行するように言われたのだが、それは丁重に断った。もし雰囲気に流されて、適当に相槌を打っていたら本当に危ういところだった。
「まあまあだったよ。お土産も有るから後であげるね」
とりあえずは濁した答えだが、この場は切り抜けたい。
登城はしなくとも、かなり中身の濃い休暇になったことは、間違いない。だが、賊との一件も含め、事が事だけに軽々と教えられるようなものでは無い。
「ただかなり、体が痛い」
これは本当の事だ。
馬での移動で、鞍擦れが出来てしまった事に加え、馬車での移動も多く、身体中が悲鳴を上げている。伯爵家の馬車も質が良いとはいえ、長時間揺られていれば、どうしても体に負荷がかかる。できれば、この痛みを抱えたまま実技授業を受けるのは避けたい。
「何か無理したの?」
「移動が結構あって、馬にも乗ったりしたものだから」
と言って誤魔化したが、実は馬で移動した時が、一番体に負担になった。騎士になれば、馬に乗る機会も増えるので、できれば、馬を理由にしたくない。
騎兵として任務をこなす事も有り得るのだから、乗馬に慣れておく必要がある。この二日間で痛感した事だった。
「何処か痛めたのなら、治療室に行けば良いんじゃない?」
言われるまで思い付かなかった。
騎士学校には、治療室と呼ばれる施設がある。模擬戦闘、落馬、運動中の怪我、病気などに対処するため、医者や治療術師が常駐している。擦り傷や簡単な怪我であれば、すぐに治して貰うことが出来るという話だ。
「私的な理由なんだけど、大丈夫かな」
「訓練に影響が出るようなものなら、仕方ないんじゃないかな」
そう言いつつも、シェラは興味本位だということが顔に出ている。
「じゃあ、次の休み時間に行ってくるよ」
シェラの意図を知りつつも、ラーソルバールは素っ気なく言ってみる。
「うん」
そう答えてはいるが、シェラからは「連れていけ」という圧を感じる。まだ行ったことが無いので、見てみたいのだろう。
「じゃあ、一人で行くのも心細いから、付いてきてくれる?」
「いいよ!」
シェラの顔が輝いた。
分かりやすいなぁ、ラーソルバールは表情に出ないように、笑いを必死に堪えた。
「おはよ、休暇どうだった?」
朝一番の挨拶に混ぜて聞かれても、即答できるような休暇では無かった。まさか、素直に『危うく国王陛下に謁見する事になるところでした』と言えるはずもない。
実際、フェスバルハ伯爵から登城に同行するように言われたのだが、それは丁重に断った。もし雰囲気に流されて、適当に相槌を打っていたら本当に危ういところだった。
「まあまあだったよ。お土産も有るから後であげるね」
とりあえずは濁した答えだが、この場は切り抜けたい。
登城はしなくとも、かなり中身の濃い休暇になったことは、間違いない。だが、賊との一件も含め、事が事だけに軽々と教えられるようなものでは無い。
「ただかなり、体が痛い」
これは本当の事だ。
馬での移動で、鞍擦れが出来てしまった事に加え、馬車での移動も多く、身体中が悲鳴を上げている。伯爵家の馬車も質が良いとはいえ、長時間揺られていれば、どうしても体に負荷がかかる。できれば、この痛みを抱えたまま実技授業を受けるのは避けたい。
「何か無理したの?」
「移動が結構あって、馬にも乗ったりしたものだから」
と言って誤魔化したが、実は馬で移動した時が、一番体に負担になった。騎士になれば、馬に乗る機会も増えるので、できれば、馬を理由にしたくない。
騎兵として任務をこなす事も有り得るのだから、乗馬に慣れておく必要がある。この二日間で痛感した事だった。
「何処か痛めたのなら、治療室に行けば良いんじゃない?」
言われるまで思い付かなかった。
騎士学校には、治療室と呼ばれる施設がある。模擬戦闘、落馬、運動中の怪我、病気などに対処するため、医者や治療術師が常駐している。擦り傷や簡単な怪我であれば、すぐに治して貰うことが出来るという話だ。
「私的な理由なんだけど、大丈夫かな」
「訓練に影響が出るようなものなら、仕方ないんじゃないかな」
そう言いつつも、シェラは興味本位だということが顔に出ている。
「じゃあ、次の休み時間に行ってくるよ」
シェラの意図を知りつつも、ラーソルバールは素っ気なく言ってみる。
「うん」
そう答えてはいるが、シェラからは「連れていけ」という圧を感じる。まだ行ったことが無いので、見てみたいのだろう。
「じゃあ、一人で行くのも心細いから、付いてきてくれる?」
「いいよ!」
シェラの顔が輝いた。
分かりやすいなぁ、ラーソルバールは表情に出ないように、笑いを必死に堪えた。
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