195 / 439
第一部:第十七章 真実は突然に
(一)追悼②
しおりを挟む
多くの涙と決意と共に、死者の魂は送り出される。
楽隊の奏でる静かな悲しい音楽が、余計に生徒達の涙を誘う。
「友よ、またあの世で会おう。だが、我々は君たちを待たせるかもしれない。その時は遠慮なく、新たなる生を受け、地上に舞い戻るといい。そして出来れば君たちを守れなかった我々にも、笑顔を向けてくれないだろうか…」
追悼の言葉が大講堂に響く。
二年生の代表は書面を用意する事無く、自らの想いを口にしたが、その言葉は最後には涙で止まった。
ラーソルバールは重く痛切な追悼の言葉を、涙と共に心にしっかりと刻んだ。
式の後、この生徒は無二の親友と互いに呼び合った相手を、爆発で喪ったのだと教えられた。この追悼の言葉を述べたとき、その心中はいかばかりであったろうか。
遺体はそれぞれ家族に引き取られたため、この場には無い。
だが、彼らの存在を示す模擬剣には名札が添えられ、その代わりとなっている。
生徒たちが剣のそばに花を一輪ずつ供え、校長が最後に一言述べて、追悼式は終了となった。
だが友を喪った者達の悲しみは暫く消える事はないだろう。
そして追悼式が終了した直後、反乱軍の鎮圧と首謀者捕縛の報が学校に届けられた。
「これで、死者に対する報告は一つ出来るな」
校長は皆をその場に止め、その報告を生徒にも伝える事にした。
報を知った生徒らは、歓声と、安堵のため息と、拍手と、涙でそれに応えた。
「我々も前を向かねばならぬな」
エラゼルはラーソルバールに歩み寄り、悲しげな表情を浮かべたまま言った。
「そうだね」
そう答えたものの、心ここに在らずといった様子に、シェラが首を傾げた。
「どうしたの、ラーソル?」
「……うん、まだ終わってないんだよ」
「終わってないとは?」
エラゼルが聞き返す。
「エラゼルはあの場に居て、疑問に思わなかった?」
「疑問?」
一瞬動きを止めると、何かを思いついたようにラーソルバールの目を見詰める。
「私と同じかな? 大講堂の壁にあんな大きな穴を空ける爆発というのは…」
「魔法以外にありえんな。だが、あの時それらしい姿は無かった」
「誰かが昨日、兵士の突入の手助けをした事になる。そして退却も」
「消えた兵士……。門《ゲート》……。奴か!」
合点がいったというように、エラゼルは手を叩く。
「奴?」
事情が飲み込めないシェラだったが、話の腰を折る訳にはいかない。
「黙っておったが、因縁のある魔法使いがおるのだ。其奴は年始の騒動の主でもある」
シェラの表情が曇る。街の破壊については怪物が荒らし回ったが、退治されたと聞いている。
またラーソルバールが大怪我をしたと後で聞かされたが、治癒により完治した後だったので、あまり深刻には受け止めていなかった。
「自分の手を汚さず、背後で操る。恐らく、昨日の成否はどうでも良かった。この国を混乱させるのが目的」
「となれば、帝国あたりが背後に居るのか。厄介だな」
大きなため息が漏れる。
「背後が国内か国外かも分からず、単独の愉快犯かとも、と思っていたけど、その線が強いね」
「フォンドラーク家も北方、帝国と領地を接しておる。何かと介入しやすかろうな」
「まずは確証が欲しいね。まだ兵士の足跡残っているかな」
ラーソルバールが気落ちして動けないのでは、と思っていたエラゼルだったが、それが杞憂だったと安堵した。
その原動力が、怒りであろう事も分かっている。良くは無いが、潰れてしまうよりはましだ。今は見守ろう。
エラゼルは拳を握り締めた。
楽隊の奏でる静かな悲しい音楽が、余計に生徒達の涙を誘う。
「友よ、またあの世で会おう。だが、我々は君たちを待たせるかもしれない。その時は遠慮なく、新たなる生を受け、地上に舞い戻るといい。そして出来れば君たちを守れなかった我々にも、笑顔を向けてくれないだろうか…」
追悼の言葉が大講堂に響く。
二年生の代表は書面を用意する事無く、自らの想いを口にしたが、その言葉は最後には涙で止まった。
ラーソルバールは重く痛切な追悼の言葉を、涙と共に心にしっかりと刻んだ。
式の後、この生徒は無二の親友と互いに呼び合った相手を、爆発で喪ったのだと教えられた。この追悼の言葉を述べたとき、その心中はいかばかりであったろうか。
遺体はそれぞれ家族に引き取られたため、この場には無い。
だが、彼らの存在を示す模擬剣には名札が添えられ、その代わりとなっている。
生徒たちが剣のそばに花を一輪ずつ供え、校長が最後に一言述べて、追悼式は終了となった。
だが友を喪った者達の悲しみは暫く消える事はないだろう。
そして追悼式が終了した直後、反乱軍の鎮圧と首謀者捕縛の報が学校に届けられた。
「これで、死者に対する報告は一つ出来るな」
校長は皆をその場に止め、その報告を生徒にも伝える事にした。
報を知った生徒らは、歓声と、安堵のため息と、拍手と、涙でそれに応えた。
「我々も前を向かねばならぬな」
エラゼルはラーソルバールに歩み寄り、悲しげな表情を浮かべたまま言った。
「そうだね」
そう答えたものの、心ここに在らずといった様子に、シェラが首を傾げた。
「どうしたの、ラーソル?」
「……うん、まだ終わってないんだよ」
「終わってないとは?」
エラゼルが聞き返す。
「エラゼルはあの場に居て、疑問に思わなかった?」
「疑問?」
一瞬動きを止めると、何かを思いついたようにラーソルバールの目を見詰める。
「私と同じかな? 大講堂の壁にあんな大きな穴を空ける爆発というのは…」
「魔法以外にありえんな。だが、あの時それらしい姿は無かった」
「誰かが昨日、兵士の突入の手助けをした事になる。そして退却も」
「消えた兵士……。門《ゲート》……。奴か!」
合点がいったというように、エラゼルは手を叩く。
「奴?」
事情が飲み込めないシェラだったが、話の腰を折る訳にはいかない。
「黙っておったが、因縁のある魔法使いがおるのだ。其奴は年始の騒動の主でもある」
シェラの表情が曇る。街の破壊については怪物が荒らし回ったが、退治されたと聞いている。
またラーソルバールが大怪我をしたと後で聞かされたが、治癒により完治した後だったので、あまり深刻には受け止めていなかった。
「自分の手を汚さず、背後で操る。恐らく、昨日の成否はどうでも良かった。この国を混乱させるのが目的」
「となれば、帝国あたりが背後に居るのか。厄介だな」
大きなため息が漏れる。
「背後が国内か国外かも分からず、単独の愉快犯かとも、と思っていたけど、その線が強いね」
「フォンドラーク家も北方、帝国と領地を接しておる。何かと介入しやすかろうな」
「まずは確証が欲しいね。まだ兵士の足跡残っているかな」
ラーソルバールが気落ちして動けないのでは、と思っていたエラゼルだったが、それが杞憂だったと安堵した。
その原動力が、怒りであろう事も分かっている。良くは無いが、潰れてしまうよりはましだ。今は見守ろう。
エラゼルは拳を握り締めた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
主人公はあまり戦ったりはしません。
まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました
菱沼あゆ
ファンタジー
妹の婚約者を狙う悪女だと罵られ、国を追い出された王女フェリシア。
残忍で好色だと評判のトレラント王のもとに嫁ぐことになるが。
何故か、輿入れの荷物の中には、勇者の剣が入っていた。
後宮にも入れず、魔王を倒しに行くことになったフェリシアは――。
(小説家になろうでも掲載しています)
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる