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第二部:第十九章 シルネラ共和国へ
(三)順調ならざる日②
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一歩ごとに金属音や悲鳴が大きくなり、急げ急げと心ばかりが先走る。
「あれは元貴族の雇われ兵士か?」
「多分そうだと思う。装備の充実っぷりはただの賊じゃないでしょ」
「ならば、気を抜けぬ相手ということか。状況によっては、命を奪うことを躊躇するな。村人だけでなく、後ろにも守るべき者が居るということを忘れるな」
視線は前方に据えたまま、走りながら会話を続ける。
「ありがとう、そのつもりで行く。けれど、もう一人忘れてるよ。エラゼルもだからねっ!」
剣を抜き放ち、最初の攻撃を加えたのはラーソルバールだった。
剣の背で首筋を叩くようにして振り抜くと、村人を襲っていた元兵士は、そのまま地面に倒れ込んだ。
「ありがとうございます!」
救われた男性は、ほっとしたように息を吐くと、恩人の二人を見る。それが少女達だと知ると、少し驚いたような表情を浮かべた。
「賊はどれ程居る?」
「あ、分かりません。私も山から戻ったばかりでしたので……」
エラゼルは賊の持っていた剣を拾い上げ、男性に手渡す。自衛しろ、という事なのだろう。
この間に後ろの五人が追い付いてきた。
「何人居るんだろう……?」
シェラが不安そうな声を出す。
「なあに、三十人居たとして、私とラーソルバールで十人ずつ。そうすれば残りは一人が二人を倒せば良い計算になる。大した事はない」
シェラにはその言葉の何処までが冗談なのか分からなかったが、エラゼルらしい考え方に緊張を解された気がした。
「もう少し頼ってくれてもいいんじゃないか?」
不満げにガイザが言う。その左手には固定式の小型盾を装備しており、仲間を庇う防御役を買って出ている。これが機能すれば、大型盾に持ち替えようと考えていた。
「例え話だ、許せ」
「皆が助けて助けられる。それが、冒険者になる、ってことでしょ。ちょっと騎士とは心構えが違うね……って、言ってる暇は無いね。行こう!」
七人は男性を置き去りにして、村の中へ駆け出す。
「相手を見誤ったりせぬようにな」
「心配性なんだから」
苦笑いしつつ、賊を見定める。
「正面に六人、右手に三人。私は正面に行くね」
言うや否や、村人を捕らえて殺そうとしている一団を目掛け、ラーソルバールは一気に駆け込む。その突撃に気付いた賊達は、剣を構えて迎え撃つ態勢に入る。
「若い女だ捕らえろ!」
賊の一人が声を上げた。その直後だった。
ラーソルバールの前を塞いだ三人がほぼ同時に倒れた。全て剣の背を使った強力な一打を受けて、意識を飛ばされた様子だった。
「な……」
「例え、職を失った元兵士が生きるためにやっている事とは言え、略奪や殺人を犯すようならば容赦はしない!」
罪も無い人々が蹂躙され、殺されるのは見たくない。王都が燃えたあの日の悔しさは忘れない。
剣を握りなおし、次の相手に切りかかる。
「動くな、コイツがどうなっても……」
賊の一人が捕らえていた老婆を人質にしようとした瞬間、顔面に火の玉が直撃した。
「ギャー!」
悲鳴をあげると、老婆を手放し顔面を押さえて転倒する。
「つまらん真似するんじゃねぇよ」
モルアールが吐き捨てるように言った。そして、次の相手に魔法を、と思った時には、既にその目標となる者は全て倒されており、誰も居なかった。倒れている者達も全員気絶しており、目覚めたとしてもしばらくは動けないだろう。
「なんだ、俺の援護いらなかったんじゃないのか?」
苦笑いしつつ、モルアールは更に次へと走るラーソルバールを追いかけ、走り出した。
「あれは元貴族の雇われ兵士か?」
「多分そうだと思う。装備の充実っぷりはただの賊じゃないでしょ」
「ならば、気を抜けぬ相手ということか。状況によっては、命を奪うことを躊躇するな。村人だけでなく、後ろにも守るべき者が居るということを忘れるな」
視線は前方に据えたまま、走りながら会話を続ける。
「ありがとう、そのつもりで行く。けれど、もう一人忘れてるよ。エラゼルもだからねっ!」
剣を抜き放ち、最初の攻撃を加えたのはラーソルバールだった。
剣の背で首筋を叩くようにして振り抜くと、村人を襲っていた元兵士は、そのまま地面に倒れ込んだ。
「ありがとうございます!」
救われた男性は、ほっとしたように息を吐くと、恩人の二人を見る。それが少女達だと知ると、少し驚いたような表情を浮かべた。
「賊はどれ程居る?」
「あ、分かりません。私も山から戻ったばかりでしたので……」
エラゼルは賊の持っていた剣を拾い上げ、男性に手渡す。自衛しろ、という事なのだろう。
この間に後ろの五人が追い付いてきた。
「何人居るんだろう……?」
シェラが不安そうな声を出す。
「なあに、三十人居たとして、私とラーソルバールで十人ずつ。そうすれば残りは一人が二人を倒せば良い計算になる。大した事はない」
シェラにはその言葉の何処までが冗談なのか分からなかったが、エラゼルらしい考え方に緊張を解された気がした。
「もう少し頼ってくれてもいいんじゃないか?」
不満げにガイザが言う。その左手には固定式の小型盾を装備しており、仲間を庇う防御役を買って出ている。これが機能すれば、大型盾に持ち替えようと考えていた。
「例え話だ、許せ」
「皆が助けて助けられる。それが、冒険者になる、ってことでしょ。ちょっと騎士とは心構えが違うね……って、言ってる暇は無いね。行こう!」
七人は男性を置き去りにして、村の中へ駆け出す。
「相手を見誤ったりせぬようにな」
「心配性なんだから」
苦笑いしつつ、賊を見定める。
「正面に六人、右手に三人。私は正面に行くね」
言うや否や、村人を捕らえて殺そうとしている一団を目掛け、ラーソルバールは一気に駆け込む。その突撃に気付いた賊達は、剣を構えて迎え撃つ態勢に入る。
「若い女だ捕らえろ!」
賊の一人が声を上げた。その直後だった。
ラーソルバールの前を塞いだ三人がほぼ同時に倒れた。全て剣の背を使った強力な一打を受けて、意識を飛ばされた様子だった。
「な……」
「例え、職を失った元兵士が生きるためにやっている事とは言え、略奪や殺人を犯すようならば容赦はしない!」
罪も無い人々が蹂躙され、殺されるのは見たくない。王都が燃えたあの日の悔しさは忘れない。
剣を握りなおし、次の相手に切りかかる。
「動くな、コイツがどうなっても……」
賊の一人が捕らえていた老婆を人質にしようとした瞬間、顔面に火の玉が直撃した。
「ギャー!」
悲鳴をあげると、老婆を手放し顔面を押さえて転倒する。
「つまらん真似するんじゃねぇよ」
モルアールが吐き捨てるように言った。そして、次の相手に魔法を、と思った時には、既にその目標となる者は全て倒されており、誰も居なかった。倒れている者達も全員気絶しており、目覚めたとしてもしばらくは動けないだろう。
「なんだ、俺の援護いらなかったんじゃないのか?」
苦笑いしつつ、モルアールは更に次へと走るラーソルバールを追いかけ、走り出した。
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