婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

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本編

20話 二人で食事

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 別邸から屋敷へと戻って来た翌日。
 私は、屋敷の厨房に立っていました。

「シルヴィア様、準備出来ました!」

「ありがとう、始めましょうか」

 今はサラと二人で、昼食の準備をしています。



 どうしてこんなことになっているかと言うと、それは昨日の馬車の中での出来事が関係しています。


 ◇


 馬車の中。
 ここには、私とレオン王子殿下の二人だけが乗っています。
 帰って来てほしいと言われた後、二人で屋敷へと戻っている最中のこと。

「その、シルヴィア」

「はい、レオン様」

「勝手なことを言うようですまないが、屋敷に帰ったらまた料理を作ってはくれないか?」

 レオン王子殿下は、指先で頭をかきながら言って来ました。

「ええ、任せてください!」

 私は、微笑ほほえみながらそう言いました。


 ◇


 こんな出来事があり、翌日の昼食をつくることになったのです。
 とは言っても、私がつくれるのはプリンとおにぎりしかありません。

 この二つの相性はとても良いとは思えないので、今回はおにぎりだけをつくることにしました。
 私がおにぎりをつくり、サラに協力をしてもらって別のものをつくってもらうことになりました。

「シルヴィア様、つくり終わりましたよ!」

「ええ、ありがとうサラ。私の方も終わったわ」

「シルヴィア様、これはなんですか? なんかゴツゴツしてますけど......」

 サラは、私のつくったおにぎりを指差しながら聞いて来た。

「おにぎりですわ!」

「おにぎり......うーん......」

 ここ数日、別邸でゴロゴロと過ごしていたこともあって、料理はしませんでした。
 そのせいか、私のつくったおにぎりは、以前のようには丸くはありません。

「またセバスチャンに見てもらう必要がありそうですね......」

「シルヴィア様、何か言いましたか?」

「なんでもないわ、さぁ料理を持って行きましょう」

 私とサラは、つくった料理をレオン王子殿下の待つ食堂へと持って行きました。


 ◇


 食堂。

「シルヴィア、その、わざわざありがとう」

「いいのですわ、レオン様。私も食べてほしくてつくるのですから」

 私は、サラと協力して机の上に料理を並べて行く。

「これは......なんだ......」

 レオン王子殿下は、私のつくったおにぎりをみながらそう言った。
 まるで、初めて見るものに遭遇したとでも言いたげな表情をしていました。

「お、おにぎりですわ」

「ふ、ははは。そうだったか、すまないなシルヴィア」

 レオン王子殿下は、今まで見たことのないような表情で笑いながらそう言いました。
 そこには、以前までのようなやさぐれ王子と言われる、レオン王子殿下はいませんでした。

 おにぎりを一つ手に取り、パクリと口にした。

「うん、うまい」

「まぁ、嬉しいですわ!」

「さぁ、シルヴィアも席に座って一緒に食べようじゃないか」

「ええ!」

 私は、食堂の席へと座ってレオン王子殿下と一緒に昼食を食べました。
 その様子をセバスチャンとサラは、温かい目で見守っています。


 ◇


 昼食も食べ終わった頃。
 サラが、後片付けを始めました。

 レオン王子殿下は、席に座ったまま私の方を見て来ました。

「シルヴィア、もう一度言わせてくれ。今回までのことは、全て私が悪かった。私は、シルヴィアのことを、王家の権力を狙う令嬢に過ぎないとしか考えていなかった」

「顔をあげてくださいレオン様。もう済んだことですわ」

「すまない。私は、シルヴィアとの誓いを破ることは決してしないと約束しようじゃないか、です」

 ん?
 なんか今、レオン王子殿下の語尾がおかしかったような気がします。
 けど、気のせいですよね。

「俺は、シルヴィアを幸せにしてやる、みせる! です!」

 んん?
 なんかみ噛みで、あやしい感じがします。
 一体、どうしたのでしょうか。

 そんなことを考えていると、レオン王子殿下の方からゴドンと何か大きな物音が聞こえて来ました。
 何かが落ちたのでしょうか。

「どうしたのですか? レオン様?」

「いや! 良いんだシルヴィア! 気にしないでくれ!」

「そう言うわけにもいきませんわ。何か落ちたのなら、拾いますわ」

 レオン王子殿下は、何やら挙動不審きょどうふしんであやしい感じがします。
 私が席を立とうとすると。

「あっ! シルヴィアの後ろでセバスチャンが裸踊はだかおどりをしているぞ!」

「ええっ!? セバスチャンがそんなことを?」

 私は、思わず後ろを振り返りました。
 そこには、微笑ほほえんでいるセバスチャンが立っています。
 裸踊りなんてしていませんでした。

「もう、ひどいで......」

 私が、文句を言おうと振り返ると、さっきまでいたはずのレオン王子殿下はいなくなっていました。

「もう、ひどいですわレオン様」

 レオン王子殿下のあやしい行動の理由は、わからずに終わってしまいました。

「シルヴィア様、なんと偶然にもここに先程レオン様が落としたものと、同じものがございます」

「えっ!」

 私は、また振り返る。
 セバスチャンは、一冊の本を手にしていました。
 その本には、王家秘伝・女性との付き合い方、と書かれています。

「......」

「シルヴィア様、レオン様は優しく不器用な方でございます。あやしいことはありませんので、これからも仲良くしてあげてください」

 私が、ポカンと口を開けていると、セバスチャンがそう言って来る。

「ええ、もちろんですわ」

 私は、そう答えながら、これからの生活がとても楽しいものになりそうだと感じていました——。
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