婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

文字の大きさ
25 / 45
本編

21話 王宮での出来事

しおりを挟む
 王都にある王宮。

 私は、レオン王子殿下の付き添いで王宮に来ていました。

 初めて見ますが、とてもきらびやかでどても高そうな物ばかりが置かれています。
 アーヴァイン公爵家も、高価なものはありましたけど、ここはその比ではありません。

 それに、たくさんのメイドが働いていて、皆何かしらの作業をしています。
 レオン王子殿下の屋敷には、メイドはサラしかいなかったので、なんだか新鮮な感じがします。

「ではシルヴィア、すまないが少し待っていてくれ」

「分かりましたわ、レオン様」

 レオン王子殿下は、父上である国王陛下との話しをするために王宮に来たのです。
 さすがの公爵令嬢の私でも、事前の連絡もなしに会うわけにもいかないので、ここで待機することになります。

 私は、レオン王子殿下の育った王宮を見て歩きたいと思います。



 ◇


 私は、一人で王宮を見て回りました。

 壁には、何だかよく分からない絵画が飾られています。
 中庭は、管理が行き届いているのか色彩豊かな花が咲きほこっています。
 廊下は、ゴミひとつ落ちていないほどの徹底っぷりで、とても清潔です。

 どこを見ても完璧で、さすが王国の国王陛下の住んでいるだけのある王宮です。
 私は、そんな感じであちこちを見て回りました。



 王宮を見て回っているうちに、どのメイドも活気がなく顔には暗いのが分かりました。
 王族の住む王宮での仕事は、それほど激務なのでしょうか。

 そんなことを考えて廊下を歩いていると、バタンっと勢い良く扉か開けられる音が聞こえて来ました。

「ひぃ」

 メイドの一人が、小さな悲鳴をあげました。
 それだけでありません。
 別のメイドは、悲鳴こそあげませんでしたが、体をガクガクと震わせています。

 それも一人や二人だけではなく、視界に映るメイド全てが同じように震えています。
 一体、どうしたと言うのでしょうか。

 すると、一人の男性がこちらへとやって来ました。
 ここに若い男性がいるということは、レオン王子殿下の親族の方かもしれません。

「初めまして、私はシ......きゃあっ!」

 挨拶あいさつの途中で、突然力強く手をつかまれてしまいました。

「ほぅ、まだ俺の知らない、こんなに美しいメイドがいたのか」

「そ、その......」

 男性は、私のことをメイドだと勘違いしているようです。
 顔をあげて姿をみると、豊満な体型におでこからあぶらぎった汗を流しながら、私のことを見ています。

「私はちが......きゃぁ」

 否定をしようと声を出すも、つかまれたうでを力強く引っ張られてしまいました。

「よし、決めた。この俺の今日のとぎの相手にしてやろう」

 伽ですって!? 冗談ですよね。
 私は、周囲のメイドたちに助けを求めようと見ました。
 けれど、メイドたちはガクガクと震えて、うつむいて下を見て私の方を見ようとはしません。

「聞いてください、私は......きゃあ」

 話そうとしても、ものすごい力で腕を引っ張られてしまいます。

「拒もうと言うのか? 不敬であるぞ......まぁだが、その容姿に免じて許してやろう」

 男性は、そう言いながら私のことを引っ張り続けました。
 そして、ついには部屋の前まで連れてこられてしまいました。

 もうダメだ、もう終わった。
 私は、そんな諦めの感情を抱き始めて、抵抗する力さえなくなってしまいました。

 ついに部屋の扉が開けられてしまい、本当にダメだと思いました。

 その時、突然、私のことを引っ張っていた男性が、ものすごい勢いで吹っ飛んで行きました。

「おい兄上、何をしているんだ」

「レオン様っーー!!」

 声のした方を見ると、レオン王子殿下が立っていました。
 私は、驚きと恐怖心のあまりレオン王子殿下に抱きつきました。

 そんな私を見て、レオン王子殿下は優しく腕を背中へと回して、包み込むように抱擁ほうようしてくれました。

「安心しろ、もう大丈夫だシルヴィア」

「怖かったですわレオン様」

 私は、目から涙を流しながら先ほどよりも力を込めて抱きついた。
 こうしていると、少しだけですが安心出来ます。

「お前、レオンどう言うつもりだ!」

「兄上こそ、私の婚約者に手を出すとは、どう言うことだ」

「お前に婚約者がいたとはな。だが、今回のことは父上にも報告させてもらう」

 男性は、ふんっと言いながらフラフラと歩きながら去って行ってしまった。


 少し経って、私も落ち着いた頃、抱きつくのを辞めました。

「おいっ、大丈夫か」

 レオン王子殿下は、私の手を優しく掴むと声をかけて来た。
 私の手は、力強く引っ張られたせいで、真っ赤になっていたのです。

「痛いですけど、レオン様がいるから大丈夫ですわ」

 レオン王子殿下は、優しく腕をさすりながら言う。

「すまない、王宮には連れてこない方が良かったな。ここにいては、何をされるか分かったものじゃない、早く帰ろう」

「ええ、レオン様」

 こうして、私とレオン王子殿下は、王都の外れにある屋敷へと戻ることにしました。
 王宮では、良いところを見たり嫌なことを体験しました。
 出来れば、二度と来たくはないと思いました。

 帰りの馬車では、レオン王子殿下と手を繋ぎながら屋敷へと戻りました——。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?

しょくぱん
恋愛
「お前の魔法は石を積むだけの土木作業だ」と婚約破棄されたので、城を支えていた『構造維持結界』をすべて解除して出て行きますね。今さら「城が崩れる!」と泣きつかれても、私は隣国で氷結の皇帝陛下と「世界最高の聖域」を造っていますので、一切知りません。 王国唯一の建築魔導師アニエスは、その地味な見た目と能力を理由に、王太子シグムンドから婚約破棄と国外追放を言い渡される。 彼の隣には、派手な光魔法を使う自称聖女の姿があった。 「お前の代わりなどいくらでもいる。さっさと出て行け!」 「……分かりました。では、城にかけていた『自動修復』『耐震』『空調』の全術式を解約しますね」 アニエスが去った直後、王城は音を立てて傾き、噴水は泥水に変わり、王都のインフラは崩壊した。 一方、アニエスは隣国の荒野で、呪われた皇帝レオンハルトと出会う。彼女が何気なく造った一夜の宿は、呪いを浄化するほどの「聖域」だった。 「君は女神か? どうか私の国を救ってほしい」 「喜んで。ついでに世界一快適な住居も造っていいですか?」 隣国がアニエスの力で黄金の国へと発展する一方、瓦礫の山となった母国からは「戻ってきてくれ」と悲痛な手紙が届く。 だが、アニエスは冷ややかに言い放つ。 「お断りします。契約外ですので、ご自分で支えていればよろしいのでは?」 これは、捨てられた万能建築士が隣国で溺愛され、幸せを掴む物語。 そして、彼女を捨てた者たちが、物理的にも社会的にも「崩壊」し、最後には彼女が架ける橋の『礎石』として永遠に踏まれ続けるまでの、壮絶な因果応報の記録。

ヤンキー、悪役令嬢になる

山口三
恋愛
岸田和華(きしだわか)は異世界に飛ばされた。自分が読んでいた小説の悪役令嬢ジュリエットに憑依してしまったのだ。だが和華は短気でガサツで、中学高校と番を張ってたヤンキーだ。高貴な身分の貴族令嬢なんてガラじゃない。「舞踏会でダンス? 踊りなんて盆踊りしか知らないからっ」 一方、リアル世界に残された和華の中にはジュリエットが入っていて・・。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

処理中です...