婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

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本編

22話 反逆罪

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 王都の王宮での一件から、一週間ほどが経った。

 私、シルヴィア・アーヴァインは、あの日のおそろしい体験のこともあって、数日間休養していました。
 さいわいにも、レオン王子殿下が兄である王太子殿下を殴ったことは、今まで追求されていません。

 王太子殿下のあの物言いだと、すぐにでも何かして来そうでしたが、そんなことはありませんでした。

「今帰った」

 レオン王子殿下の声が聞こえて来ます。
 どうやら、出先から帰って来たみたいです。

 彼が、どのような仕事をしているかは分かりませんが、たまに外に出ているのは知っています。

「おかえりなさい、レオン様」

「っ! シルヴィア、もう大丈夫なのか?」

「ええ、少し休めたからもうだいぶ良いわ」

 レオン王子殿下は、私の手を見てきました。
 王太子殿下に、強くつかまれた手にも運良くあとが残ることはありませんでした。

「それなら良かった。シルヴィア、すまないが先に部屋へと戻る」

 レオン王子殿下は、それだけ言うと歩いて行ってしまいました。
 その顔は、どこか疲れているような気がします。
 何かあったのでしょうか。


 ◇


 レオン王子殿下の部屋の前。

 コンコン

 私は、部屋の扉を叩いた。

「誰だ?」

「シルヴィアですわ」

「すまない、手を離さないから入ってくれ」

 私は、部屋へと入る。
 レオン王子殿下は、椅子に座って書類を片手にしていた。
 そして、椅子から立ち上がって言った。

「どうしたんだシルヴィア」

「その、レオン様がお疲れの様子だったので......何かあったのではないかと、心配になってしまいましたわ」

「それは悪かった。まさか心配させてしまうとはな」

 レオン王子殿下は、また椅子へと腰掛けて、私の方へ書類を差し出した。

「これを見てくれ」

 私は、差し出された書類の内容を確認する。

反逆罪はんぎゃくざいですか!? レオン様がっ?」

 書類には、先日の王宮の出来事が書いてありました。
 王太子殿下に対して、レオン王子殿下が下克上げこくじょうを目的とした行為をしたとあります。

「もしかして、私のせいでしょうか......」

 私が、レオン王子殿下の兄上の王太子殿下に構われてしまったせいなのですか。

「ふ、ははは。それはないよシルヴィア」

 レオン王子殿下は、笑いながらそう言いました。

「私と兄上はあまり仲が良くなくてね。いずれは、こうなるだろうとは思ってはいたんだ。それが、こんな手段で来るとはね」

 書類には、王国の国王陛下のサインが記入されています。
 つまりは、国王陛下がレオン王子殿下の反逆罪を認めたということです。

 コンコン

 部屋の扉が叩かれました。



「入れ」

「失礼します、レオン様」

「やっと来たかセバス」

 部屋の扉を開けて、セバスチャンが入って来ました。
 何やら、話し合いでもするのでしょうか。

「レオン様、私は部屋の外へと出ますわね」

 私は、邪魔じゃまにならないようにそう言いました。

「いや、この際丁度良い。シルヴィアも話し合いに参加してくれないか」

 こうして、私もレオン王子殿下とセバスチャンの話し合いに参加することになりました。


 私たちは、机を囲むようにして椅子に座りました。

「セバス、これを読んでくれ」

「かしこまりました」

 セバスチャンは、渡された書類に目を通して行く。
 少し経つと、読み終えたのか書類を机へと置いた。

「で、どう思う」

「とても不味い状況なのは間違いありません」

「だろうな、仮に書類の通りに王宮へと出向いたとすると、どうなると思う?」

「良くて幽閉ゆうへい、悪くて死刑だと思います」

 私は、死刑と聞いて立ち上がる。

「そんなっ!? レオン様が死刑ですって!」

 そんな私を見ながらレオン王子殿下は笑う。

「大丈夫だよ、シルヴィア。そうならないための話し合いだ」

「そうでしたか......」

 私は、少しだけ冷静さを取り戻して席へと座った。

「ならこの書類には従うことは出来ないな。もとより、そうするつもりはないが」

 書類には、レオン王子殿下は反逆罪を認めて財産を全て差し出した上で、王宮へと来いと書かれています。

「兄上も父上も、俺に頼りたくなるほど金銭的にピンチらしいな」

 ははは、と笑いながら言った。

「それでセバス、従わないとするならどうするのが良い?」

「身を隠すのが良いと思われます。それも、レオン王子殿下や王家との縁のある所ではいけません。縁のある場所では、すぐに見つかってしまいます」

 セバスチャンは、私のことを一瞬見て言葉を続ける。

「そして、シルヴィア様の安全のためにも、レオン王子殿下と縁のある他国へと預けるべきかと」

「なるほど、シルヴィアであればこっそりと他国に行っても特に問題にはされないだろうな」

「ええ、反逆罪はレオン王子殿下としか書かれておりません。シルヴィア様でしたら、国家間の問題にはなり得ないかと」

「ちょっと待ってください!」

 私は、また立ち上がる。
 レオン王子殿下も、セバスチャンも驚いたような顔で私のことを見てくる。

「私は、レオン様の側を離れませんわ。まだ、幸せにしてもらっていませんわ」

 レオン王子殿下は、何やら考え込んでいるような表情をしています。
 そして、少しだけ間を置いて言う。

「シルヴィアは言っても聞かないだろうな。仕方ない、良いだろう。だが、楽な思いは出来ないと思ってくれ」

「ええ、覚悟していますわ」

 また、話し合いを続けることになった。



 レオン王子殿下が、机の上に地図を広げました。

「となると、問題は隠れる場所だな」

「私でしたら、他国との境に検問所を置いてレオン王子殿下が通行出来ないようにいたします」

「父上であれば、すでにそうしているに違いない。国内でどこか良い場所はないか......」

 レオン王子殿下とセバスチャンは、うーんとうなりながら悩んでいる。
 私は、ひとつだけ思い当たる場所があるので言ってみた。

「ここはどうでしょうか。ここでしたら、余程のことがない限り、見つかることはありませんわ」

「なるほど、ここなら人も寄り付かないか......問題は許可してもらえるかだが」

「その点は大丈夫ですわ! あの方は、私には優しくしてくれるはずですわ」

「どの道、他に行く場所もないのだ。ここに行くとしよう」

 こうして、私たちは隠れる場所を見つけて向かうことになりました。
 これからどんな試練が待っているかは分かりませんが、レオン王子殿下となら乗り越えられるはずです——。
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