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本編

21話 王宮での出来事

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 王都にある王宮。

 私は、レオン王子殿下の付き添いで王宮に来ていました。

 初めて見ますが、とてもきらびやかでどても高そうな物ばかりが置かれています。
 アーヴァイン公爵家も、高価なものはありましたけど、ここはその比ではありません。

 それに、たくさんのメイドが働いていて、皆何かしらの作業をしています。
 レオン王子殿下の屋敷には、メイドはサラしかいなかったので、なんだか新鮮な感じがします。

「ではシルヴィア、すまないが少し待っていてくれ」

「分かりましたわ、レオン様」

 レオン王子殿下は、父上である国王陛下との話しをするために王宮に来たのです。
 さすがの公爵令嬢の私でも、事前の連絡もなしに会うわけにもいかないので、ここで待機することになります。

 私は、レオン王子殿下の育った王宮を見て歩きたいと思います。



 ◇


 私は、一人で王宮を見て回りました。

 壁には、何だかよく分からない絵画が飾られています。
 中庭は、管理が行き届いているのか色彩豊かな花が咲きほこっています。
 廊下は、ゴミひとつ落ちていないほどの徹底っぷりで、とても清潔です。

 どこを見ても完璧で、さすが王国の国王陛下の住んでいるだけのある王宮です。
 私は、そんな感じであちこちを見て回りました。



 王宮を見て回っているうちに、どのメイドも活気がなく顔には暗いのが分かりました。
 王族の住む王宮での仕事は、それほど激務なのでしょうか。

 そんなことを考えて廊下を歩いていると、バタンっと勢い良く扉か開けられる音が聞こえて来ました。

「ひぃ」

 メイドの一人が、小さな悲鳴をあげました。
 それだけでありません。
 別のメイドは、悲鳴こそあげませんでしたが、体をガクガクと震わせています。

 それも一人や二人だけではなく、視界に映るメイド全てが同じように震えています。
 一体、どうしたと言うのでしょうか。

 すると、一人の男性がこちらへとやって来ました。
 ここに若い男性がいるということは、レオン王子殿下の親族の方かもしれません。

「初めまして、私はシ......きゃあっ!」

 挨拶あいさつの途中で、突然力強く手をつかまれてしまいました。

「ほぅ、まだ俺の知らない、こんなに美しいメイドがいたのか」

「そ、その......」

 男性は、私のことをメイドだと勘違いしているようです。
 顔をあげて姿をみると、豊満な体型におでこからあぶらぎった汗を流しながら、私のことを見ています。

「私はちが......きゃぁ」

 否定をしようと声を出すも、つかまれたうでを力強く引っ張られてしまいました。

「よし、決めた。この俺の今日のとぎの相手にしてやろう」

 伽ですって!? 冗談ですよね。
 私は、周囲のメイドたちに助けを求めようと見ました。
 けれど、メイドたちはガクガクと震えて、うつむいて下を見て私の方を見ようとはしません。

「聞いてください、私は......きゃあ」

 話そうとしても、ものすごい力で腕を引っ張られてしまいます。

「拒もうと言うのか? 不敬であるぞ......まぁだが、その容姿に免じて許してやろう」

 男性は、そう言いながら私のことを引っ張り続けました。
 そして、ついには部屋の前まで連れてこられてしまいました。

 もうダメだ、もう終わった。
 私は、そんな諦めの感情を抱き始めて、抵抗する力さえなくなってしまいました。

 ついに部屋の扉が開けられてしまい、本当にダメだと思いました。

 その時、突然、私のことを引っ張っていた男性が、ものすごい勢いで吹っ飛んで行きました。

「おい兄上、何をしているんだ」

「レオン様っーー!!」

 声のした方を見ると、レオン王子殿下が立っていました。
 私は、驚きと恐怖心のあまりレオン王子殿下に抱きつきました。

 そんな私を見て、レオン王子殿下は優しく腕を背中へと回して、包み込むように抱擁ほうようしてくれました。

「安心しろ、もう大丈夫だシルヴィア」

「怖かったですわレオン様」

 私は、目から涙を流しながら先ほどよりも力を込めて抱きついた。
 こうしていると、少しだけですが安心出来ます。

「お前、レオンどう言うつもりだ!」

「兄上こそ、私の婚約者に手を出すとは、どう言うことだ」

「お前に婚約者がいたとはな。だが、今回のことは父上にも報告させてもらう」

 男性は、ふんっと言いながらフラフラと歩きながら去って行ってしまった。


 少し経って、私も落ち着いた頃、抱きつくのを辞めました。

「おいっ、大丈夫か」

 レオン王子殿下は、私の手を優しく掴むと声をかけて来た。
 私の手は、力強く引っ張られたせいで、真っ赤になっていたのです。

「痛いですけど、レオン様がいるから大丈夫ですわ」

 レオン王子殿下は、優しく腕をさすりながら言う。

「すまない、王宮には連れてこない方が良かったな。ここにいては、何をされるか分かったものじゃない、早く帰ろう」

「ええ、レオン様」

 こうして、私とレオン王子殿下は、王都の外れにある屋敷へと戻ることにしました。
 王宮では、良いところを見たり嫌なことを体験しました。
 出来れば、二度と来たくはないと思いました。

 帰りの馬車では、レオン王子殿下と手を繋ぎながら屋敷へと戻りました——。
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