真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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 エディの実母は、エディが生まれてすぐに、病弱だったこともあり病死した。そして実父も、エディが三歳のときに亡くなった。過労死だったそうだ。

 哀しみにくれるエディの前に、これまで会ったことのない、現ルソー伯爵家当主だという、父の兄が現れた。

「お前を、私の養子として迎え入れてやる」

 父と暮らしていたアパートにある椅子に、どかっと座ったルソー伯爵が、正面に立たせたエディに告げた。温かみも、同情もない、憮然とした声音で。

 エディを引き取ったのは、単に、世間体のため。慈善活動家として知られるルソー伯爵家当主が、甥を祖父母に、まして孤児院に預けるわけにはいかなかったからだ。後にわかることだが、そのときのエディに、わかるはずもなく。

「──いいか。私には、妻と、息子と、可愛い娘がいる」

 唯一の家族を失ったばかりの、まだ、たった三歳の子どもに、ルソー伯爵は、低く、濁った声で告げた。

「私の家族に迷惑をかけるな。いつも笑顔で、常に感謝していろ」

 声と表情の圧に、エディの顔が強張る。

「娘の名は、コーリー。お前の一つ下だ。コーリーを一度でも泣かせてみろ。すぐに屋敷を追い出し、人買いに売り飛ばしてやるからな」

 エディの身体が、小刻みに震えだした。本当に、あの優しい父の兄なのかと疑いたくなるほど、目の前にいる男が、怖くてたまらなかったから。


 ルソー伯爵は、弟を毛嫌いしていた。自分より優秀で、容姿端麗な弟を。まわりからは、弟の方が人格者で、当主に向いているのではないかと、よく陰で囁かれていた。エディを疎ましく思うのも、忌まわしい弟の子どもだったからだろう。

 けれど。そんな事情、幼いエディが理解できるはずもなく。エディにとってルソー伯爵は──いや、ルソー伯爵家そのものが、その日から、恐怖の対象となった。

 誰かがいると、ルソー伯爵は、人格者を装う。それが妻や子どもの前でもだ。だが、エディと二人になると、ルソー伯爵は、折に触れ、脅迫を繰り返した。

 その度、エディの心が、欠けていく。感情、といったものだろうか。
 

 ルソー伯爵夫人と義兄は、決してエディと仲良くすることも、親身になることもしなかった。救いにはならなったけれど、構われない方がずっとましだと、コーリーと比較して、実感していく。

 優しく。優しく。機嫌を決して損ねないように。コーリーが望む兄を、演じる。わがままも、すべて笑顔で叶えて。愛する娘がエディに懐いていくのが気に入らないルソー伯爵。それに気付いてはいたが、エディはもう、どうすればいいかわからず、ただ、人買いに売られる恐怖に、日々、怯えることしかできなかった。

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