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「おお、ジェンキンス伯爵! 遠いところをようこそ」
「ルソー伯爵。お招き、ありがとうございます」
夜会当日。
ルソー伯爵家の屋敷の広間は、煌びやかに飾り付けられ、幾種類もの軽食がテーブルに並べられていた。
招待客に、エディを連れてあいさつにまわっていくルソー伯爵。別人かというぐらい、愛想が良い。そんな中、目当ての人物を見つけたルソー伯爵は、嬉しそうに口角を上げ、優しげな雰囲気を漂わすジェンキンス伯爵に、足をいそいそと向けた。
ごくり。
緊張から、エディは生唾を吞んだ。上手く。上手くやらないと。まずは、この人に気に入られなければ、話にならない。
「ジェンキンス伯爵。ご紹介しよう。我が息子の、エディだ」
どくん。どくん。心臓が早鐘を打つ中、エディは、条件反射のように笑顔を貼り付け、頭を下げた。
「はじめまして、ジェンキンス伯爵。エディ・ルソーです。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね。実は、私には、きみと同じ年の娘がいてね。仲良くしてくれると──こらこら、ミア。出ておいで」
困ったように。けれど一切の怒気を感じない、慈しむような声色に、エディは思わず、顔を上げた。
ジェンキンス伯爵の後ろに隠れている女の子が、顔の半分だけ出し、ちらっとこちらを見ているのが視界に入った。
──ああ。大事にされているんだな。
笑顔のまま、エディが胸中で冷たく呟く。
「申し訳ない。この子は少し、人見知りなところがありまして」
ジェンキンス伯爵が申し訳なさそうに苦笑する。ルソー伯爵が、いえいえ、と笑う。
「まだ十歳ですからな。これから経験していけばよいのです」
「そう言っていただけると、助かります」
ルソー伯爵の偽善の言葉は、いつも吐き気がする。けれどそれをおくびにも出さず、エディはジェンキンス伯爵に、にこりと笑いかけた。
「ご令嬢に、話かけてもかまいませんか?」
「ああ、もちろんだとも。ほら、ミア。友だちを作る絶好の機会だよ」
促され、ようやく怖ず怖ずと出てきたミア。いかにも甘やかされ、大事にされてきましたという雰囲気に、コーリーが重なった。
(こいつらは、それを当然だと思っているんだろうな……)
心で毒づく。こんな相手と、一生を共にしなければならないのか。そんなもの、地獄と同じじゃないか。
「僕は、エディです。きみは、ミアって名前なのですね」
機嫌を損ねないよう。演じて。演じて。
「僕も、友だちがいなくて。仲良くしてくれたら、嬉しいです」
「……おにいさまあぁぁ」
広間の何処からか響いた、耳に馴染んでしまった、寒気すら覚える声色に、エディの顔が、一瞬、強張った。
「ルソー伯爵。お招き、ありがとうございます」
夜会当日。
ルソー伯爵家の屋敷の広間は、煌びやかに飾り付けられ、幾種類もの軽食がテーブルに並べられていた。
招待客に、エディを連れてあいさつにまわっていくルソー伯爵。別人かというぐらい、愛想が良い。そんな中、目当ての人物を見つけたルソー伯爵は、嬉しそうに口角を上げ、優しげな雰囲気を漂わすジェンキンス伯爵に、足をいそいそと向けた。
ごくり。
緊張から、エディは生唾を吞んだ。上手く。上手くやらないと。まずは、この人に気に入られなければ、話にならない。
「ジェンキンス伯爵。ご紹介しよう。我が息子の、エディだ」
どくん。どくん。心臓が早鐘を打つ中、エディは、条件反射のように笑顔を貼り付け、頭を下げた。
「はじめまして、ジェンキンス伯爵。エディ・ルソーです。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね。実は、私には、きみと同じ年の娘がいてね。仲良くしてくれると──こらこら、ミア。出ておいで」
困ったように。けれど一切の怒気を感じない、慈しむような声色に、エディは思わず、顔を上げた。
ジェンキンス伯爵の後ろに隠れている女の子が、顔の半分だけ出し、ちらっとこちらを見ているのが視界に入った。
──ああ。大事にされているんだな。
笑顔のまま、エディが胸中で冷たく呟く。
「申し訳ない。この子は少し、人見知りなところがありまして」
ジェンキンス伯爵が申し訳なさそうに苦笑する。ルソー伯爵が、いえいえ、と笑う。
「まだ十歳ですからな。これから経験していけばよいのです」
「そう言っていただけると、助かります」
ルソー伯爵の偽善の言葉は、いつも吐き気がする。けれどそれをおくびにも出さず、エディはジェンキンス伯爵に、にこりと笑いかけた。
「ご令嬢に、話かけてもかまいませんか?」
「ああ、もちろんだとも。ほら、ミア。友だちを作る絶好の機会だよ」
促され、ようやく怖ず怖ずと出てきたミア。いかにも甘やかされ、大事にされてきましたという雰囲気に、コーリーが重なった。
(こいつらは、それを当然だと思っているんだろうな……)
心で毒づく。こんな相手と、一生を共にしなければならないのか。そんなもの、地獄と同じじゃないか。
「僕は、エディです。きみは、ミアって名前なのですね」
機嫌を損ねないよう。演じて。演じて。
「僕も、友だちがいなくて。仲良くしてくれたら、嬉しいです」
「……おにいさまあぁぁ」
広間の何処からか響いた、耳に馴染んでしまった、寒気すら覚える声色に、エディの顔が、一瞬、強張った。
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