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もうこれ以上、不毛な会話はしたくないと判断したリネットは綺麗にそれをスルーし、バリーに向き直った。
「あなたを雇うかどうかは、お父様が決断することだから。わたしの一存では決められないわ。口添えはするけれど……」
「ありがとうございます。それで充分です。もしそれが叶わずとも、ハワードお坊ちゃまの不倫相手の情報は、すべてお話ししますので」
「いいの?」
「もちろんです。正直、ずっとこの日が来るのを待ちわびていました」
リネットが、ごめんなさい、と苦笑する。
「わたし、本当にどうかしていたわ。ルシアンを打たれて、ようやっと目が覚めるなんて……遅すぎよね」
自嘲気味に笑うリネットに、一転、ハワードが、謝罪をしはじめた。
「ル、ルシアンを打ったことは悪かった。気が高ぶっていたんだ。心から謝罪するよ。でも、不倫なんてしてない。神に誓って。ぼくがきみに嘘をついたことがある? バリーとぼく、きみはどっちを信じるの?」
ぼくだろ、と言いたげな瞳に見詰められたリネットは、それをすっとかわし、ルシアンを抱く乳母の元に向かった。
「ルシアンのこと、お願いできる? これ以上、親のみっともない姿も、言い争う姿も、見せたくないから」
「それがよろしいかと思います。ルシアンお坊ちゃまのことは、私にお任せくださいませ」
「ええ──ルシアン。行ってくるわね」
まだえぐえぐと泣く我が子の額に軽く口付け、リネットは決意を宿した双眸を光らせた。
日暮れ。ファネル伯爵家に長年仕えるベテラン執事が、見たことのない表情で固まっていた。それはそうだろう。さきほど帰宅したばかりの次期領主が縄で縛られたうえに男の肩に担がれ、リネットと共に、再び屋敷に姿を現したのだから。
「これは、いったい……」
思わずもれ出た執事の呟き。リネットが「大丈夫、きちんと説明するわ。お父様はどこ?」と、喚くハワードにかまわず訊ねる。執事は困惑しながらも、プロとして姿勢を正し、状況は理解できないながらも、こちらに、とリネットたちを案内した。
「あなたを雇うかどうかは、お父様が決断することだから。わたしの一存では決められないわ。口添えはするけれど……」
「ありがとうございます。それで充分です。もしそれが叶わずとも、ハワードお坊ちゃまの不倫相手の情報は、すべてお話ししますので」
「いいの?」
「もちろんです。正直、ずっとこの日が来るのを待ちわびていました」
リネットが、ごめんなさい、と苦笑する。
「わたし、本当にどうかしていたわ。ルシアンを打たれて、ようやっと目が覚めるなんて……遅すぎよね」
自嘲気味に笑うリネットに、一転、ハワードが、謝罪をしはじめた。
「ル、ルシアンを打ったことは悪かった。気が高ぶっていたんだ。心から謝罪するよ。でも、不倫なんてしてない。神に誓って。ぼくがきみに嘘をついたことがある? バリーとぼく、きみはどっちを信じるの?」
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「ルシアンのこと、お願いできる? これ以上、親のみっともない姿も、言い争う姿も、見せたくないから」
「それがよろしいかと思います。ルシアンお坊ちゃまのことは、私にお任せくださいませ」
「ええ──ルシアン。行ってくるわね」
まだえぐえぐと泣く我が子の額に軽く口付け、リネットは決意を宿した双眸を光らせた。
日暮れ。ファネル伯爵家に長年仕えるベテラン執事が、見たことのない表情で固まっていた。それはそうだろう。さきほど帰宅したばかりの次期領主が縄で縛られたうえに男の肩に担がれ、リネットと共に、再び屋敷に姿を現したのだから。
「これは、いったい……」
思わずもれ出た執事の呟き。リネットが「大丈夫、きちんと説明するわ。お父様はどこ?」と、喚くハワードにかまわず訊ねる。執事は困惑しながらも、プロとして姿勢を正し、状況は理解できないながらも、こちらに、とリネットたちを案内した。
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