婚約者はわたしよりも、病弱で可憐な実の妹の方が大事なようです。

ふまさ

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 ──数ヶ月後。

 モーガンが一人、校舎内の廊下を歩く。話しかける者はいない。たまに、遠巻きにこそこそと何かを言われるだけだ。

 アビーの姿は、何処にもない。学園を退学になったのだから当然のことだ。あの事件のことを知らない者は、ほとんどいない。シュミット公爵家は、貴族の間でも完全に孤立するかたちとなってしまった。

 モーガンは、毎日考える。どうしてこんなことになってしまったのか。何処で道を間違えてしまったのか。もしかしたら、はじめから間違えていたのかもしれない。でも。

『……ねえ、どうしてあなたはあの子の言葉しか信じようとしないの……? どうしてわたしの言葉を信じようとはしてくれないの……?』

 脳裏をよぎるのは、そう言って涙を流していたリアの顔だ。もしあのとき、リアを信じられていたら。きちんと話しを聞けていれば。

『あれだけお前と、お前の妹を想ってくれる人なんて、リア嬢以外にいなかっただろうに。みずから手放してしまうなんてな』

 続いて脳内に響いたのは、レナルドの声だった。ああ、本当にそうだ。その通りだと、モーガンは胸中で呟いた。

 校舎の二階の窓から見える中庭で、リアとレナルドが昼食をとっているのが見えた。うわさによると、二人はひと月ほど前から付き合いはじめたらしい。

 モーガンの視線が、リアに注がれる。幸せそうに、綺麗にリアが笑っている。かつて、自分のとなりにあったはずの笑顔が、今はなんて遠い。どれほど後悔しようとも、あの笑顔はもう、二度と手に入らない。

「……そうだった。君は、そんな風に笑う子だったよね」

 モーガンは一人呟き、一筋の涙をこぼした。


               ─おわり─
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