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それを伝えられたときのアールの表情は、いまでも忘れられない。つつけば簡単に涙が溢れてきそうな、そんなギリギリのところで耐えている。そんな顔をしていた。見ているこちらまで、泣きそうになるほどの。
「……そうか。おめでとう」
肩を落としながらも、祝いの言葉を述べるアール。本当に優しい人だと、デージーは目の奥がつんと熱くなった。
「ありがとう、アール。それでね、デージーのことなんだけど」
「え?」
「お、お姉様……?」
いったい何を。コリンナの隣に座るデージーの声が、裏返った。ここは、コリンナの自室。部屋にいるのは、アールとコリンナ。そして、デージーのみ。
いつもはどれだけアールやコリンナにお茶に誘われても、断っていた。どう考えても、自分の存在は邪魔にしかならなかったから。けれど今日は、大事な話しがあるからとコリンナに言われたので、顔を出した。別の男性と婚約したことを二人きりで伝えるのが、気まずいのだろう。そんな風に考えていたのだが。
「あなたはデージーのこと、どう思っている?」
コリンナの問いに、アールが固まる。当然だろう。たったいま失恋したばかりだというのに、想い人からのその質問は、あまりに残酷だった。
(お姉様は、アール様に想いを寄せられていたことに、気付いていなかったの……?)
誰にでも愛されている人は、それが当然な人は、そういうものなのだろうか。
「え、ええと……」
アールが困惑の表情を浮かべる。コリンナは、興奮しながらさらに続けた。
「デージーは何も言わないけど、あたしにはわかるの。デージーが、あなたに好意を抱いているってこと」
「…………っ」
デージーは絶句した。姉に気持ちがばれていた。そのこともそうだが、どうしてそれを、よりによってアールの想い人であるコリンナが言うのか。それも、このタイミングで。
頭がぐちゃぐちゃになって、身体が震えだしたデージーはたまらず、席を立ち上がった。
「……わ、わたし、部屋に戻ります……っ」
席を離れようとするデージーの腕を、コリンナが掴んだ。
「駄目よ。いま、大事な話の途中なのだから」
コリンナの目は、真剣だった。コリンナなりの、デージーを思っての行動なのだろう。それを頭では理解できても、心が耐えられなかった。
「は、離して……離してお姉様……っ」
涙が滲む。いつまでもそんなんじゃ駄目よ、とコリンナが強い口調で責め立てる。
わかっている。わかっているけど。
(……でもっ)
「──コリンナ。デージーを離してあげて」
「……そうか。おめでとう」
肩を落としながらも、祝いの言葉を述べるアール。本当に優しい人だと、デージーは目の奥がつんと熱くなった。
「ありがとう、アール。それでね、デージーのことなんだけど」
「え?」
「お、お姉様……?」
いったい何を。コリンナの隣に座るデージーの声が、裏返った。ここは、コリンナの自室。部屋にいるのは、アールとコリンナ。そして、デージーのみ。
いつもはどれだけアールやコリンナにお茶に誘われても、断っていた。どう考えても、自分の存在は邪魔にしかならなかったから。けれど今日は、大事な話しがあるからとコリンナに言われたので、顔を出した。別の男性と婚約したことを二人きりで伝えるのが、気まずいのだろう。そんな風に考えていたのだが。
「あなたはデージーのこと、どう思っている?」
コリンナの問いに、アールが固まる。当然だろう。たったいま失恋したばかりだというのに、想い人からのその質問は、あまりに残酷だった。
(お姉様は、アール様に想いを寄せられていたことに、気付いていなかったの……?)
誰にでも愛されている人は、それが当然な人は、そういうものなのだろうか。
「え、ええと……」
アールが困惑の表情を浮かべる。コリンナは、興奮しながらさらに続けた。
「デージーは何も言わないけど、あたしにはわかるの。デージーが、あなたに好意を抱いているってこと」
「…………っ」
デージーは絶句した。姉に気持ちがばれていた。そのこともそうだが、どうしてそれを、よりによってアールの想い人であるコリンナが言うのか。それも、このタイミングで。
頭がぐちゃぐちゃになって、身体が震えだしたデージーはたまらず、席を立ち上がった。
「……わ、わたし、部屋に戻ります……っ」
席を離れようとするデージーの腕を、コリンナが掴んだ。
「駄目よ。いま、大事な話の途中なのだから」
コリンナの目は、真剣だった。コリンナなりの、デージーを思っての行動なのだろう。それを頭では理解できても、心が耐えられなかった。
「は、離して……離してお姉様……っ」
涙が滲む。いつまでもそんなんじゃ駄目よ、とコリンナが強い口調で責め立てる。
わかっている。わかっているけど。
(……でもっ)
「──コリンナ。デージーを離してあげて」
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