別れ話をしましょうか。

ふまさ

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 アールと出逢ったのは、デージーが十三歳のときだった。

 父に、紹介したい人がいると言われ、向かった先の屋敷の庭に、シェーベリ伯爵と、その息子のアールがいた。

 一つしか違わないというアールは、とても大人びて見えて。内気な性格のデージーにアールは、

「はじめまして。僕は、アール・シェーベリといいます」

 と、優しく微笑みかけてくれたが、デージーは言葉に詰まってうまく返すことができなかった。すると、デージーの隣に立っていた姉のコリンナが、仕方ないわね、というようにデージーの肩にそっと手を置き、アールに笑いかけた。

「この子、少し人見知りなところがあって。でも、とてもいい子なんですよ? 名前は、デージー。そしてあたしは、コリンナ・ワウテレスです」

 アールが少し頬を染め「そうですか」と、照れたようにコリンナに笑い返す。それは、何度も見てきた光景だった。

 人見知りで、内気で、地味なデージー。社交的で、美人のコリンナ。本当に姉妹なのかと、疑いたくなるほど、見た目も中身も似ていなくて。

(……みんな、みんな、お姉様を好きになる)

 これまでも、そうだった。父親が紹介したいという、年頃の男の子。それはきっと、父親が選んだ婚約者候補なのだろうが。

(……わたしはもう、ここにいる必要ないよね)

 これまでのように、この伯爵令息も、姉のコリンナにしか話しかけようとはしないだろうから。そう考えたデージーだったが、アールはこれまでの人たちとは違い、デージーとコリンナを区別することなく、平等に、会話をしてくれた。

 たった、それだけだった。でも、デージーには、それで充分だった。だって両親ですら、平等には愛してくれていなかったから。

 ──ああ、けれど。

 わかってしまった。アールがコリンナに、恋心を抱いてしまったことに。

 胸が痛んだのはきっと、デージーもアールに、恋をしてしまっていたからだろう。

 二人の恋を祝福する自信はあった。もとから、何も期待などしていなかったから。

(……あなたの恋が実ること、心から、祈っています)
 
 それから数日後に、ワウテレス伯爵の屋敷に──コリンナに会いにきていたアールを、二階の自室から見下ろしながら、デージーはそっと目を閉じた。

 アールがそのことに気付くわけもなく。庭でコリンナと向かい合わせに座りながら、幸せそうに笑っていた。


 コリンナが別の──資産家としても有名なニエミネン伯爵の令息と婚約したのは、それから三ヶ月後のことだった。

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