腐った林檎

アズ

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第1章 カントン

08 空中戦

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 ドラゴンとグリフォンでは圧倒的にドラゴンの方があらゆる面で上回っている。真正面から戦おうとすれば、大きく開いた口から放たれる黒い閃光をくらってしまう。かといって全速力で長時間飛ぶのはとても疲れる。長距離マラソンを全速力でやるようなもの。当然、いつかは体力が尽きる。
 まだ、生きている地対空ミサイルへあのドラゴンを誘導しても、奴はびくともしなかった。むしろ、奴が放つ閃光の方が恐ろしい。それを避けるようにグリフォンは高く飛ぶ。地上に向かえば地上にいる人達に被害が及ぶからだ。
 ドラゴンはその時を待っていた。
「このまま上へ向かうか? それもいいだろう」
 ドラゴンはそう言った。その言葉には余裕が感じられた。それがとてもムカついた。
 塔の上、まだルルーは行ったことがなかった。もっと上となればそこは雲がある場所だ。そして、寒く、酸素が薄い。グリフォンの姿に寒さは関係ないが、宇宙までは行けない。流石に酸素のない場所までは行けない。あの塔は神の国に届いているという。なら、神の国か? だが、普通は空があって、雲があって、その先は宇宙しかない。どこに神の世界があるというのか。あれは嘘だったのか?
 快晴だから今は雲がない。でも、遠くに雲が少し見えた。
 遂に、ルルーは雲の高さまで来ていた。
 塔はまだ続いていた。
 どんどん上へ飛ぶ。その後ろを漆黒のドラゴンが追いかけている。あのドラゴンも寒さは関係ないのだろう。
 ルルーは塔がどこまで続いているのか気になった。
 だが、その答えはあっさりと直ぐに判明する。
 雲の高さをこえてちょっとしたら塔はそこで途切れていた。
 建設の途中ではなく、ドーム屋根がしっかりとある。
 なんだ、やっぱり神の世界なんてなかったんじゃん。
 そうがっかりした時、ドラゴンとルルーの二人を遮る塔が無くなり、二人は正面を向かい合った。
「神の世界がなかったと思ったか?」
 ドラゴンは笑いながらそう言った。
 何がおかしいというのか。
「神の世界は塔の内側からしか行けん。エレベーターによってある特定のスピードまで上昇した状態で最上階に到達すると、意識は神の世界へと飛ばされる。人間のままで行けるわけなかろう」
「随分詳しいのね」
「前に一度だけ行ったことがある」
「え? でも、どうやって」
「さぁな」
 全ては喋ってはくれないらしい。当然か。
「それよりいいのか? これから死ぬ準備は?」
 どうやら今のが敵の慈悲でくれた死ぬ準備の時間だったらしい。
 ふざけんな!
「私は死ぬつもりはない」
「いや、どうせ死ぬ」
 ドラゴンはそう言って顔を上げ、天に向かって口を大きく開いた。
 すると、何かが振動する音が響いた。いったいどこからそんな音がするのか? ルルーは辺りを見渡したが、空は自分達の他に何も見当たらない。てっきり、あのドラゴンを退治する為に戦闘機が近づいてきたと思った。例えそうだとしてもドラゴンの頑丈な皮膚に傷をつけることは出来ない。奴の頑丈さは異常だ。流石は伝説の生き物と言われただけのことはある。人々にとっての恐怖の象徴。戦闘機やミサイルでもそれはすぐさま金の無駄になる。
 ルルーはドラゴンを見た。あの音の正体はドラゴンの腹の中からだった。
 どうやら奴は爆弾を腹の中で作っているようだ。その莫大なエネルギーをあの口から放つんだろう。
 ルルーはわざわざ奴の準備が出来るのを待ってやったりはしない。
 選択肢は2つ。無謀にドラゴンに襲いかかるか? しかし、グリフォンの鋭い爪をもってしてもドラゴンの皮膚を突き破ることは出来ない。そんな命の無駄遣いはしやい。
 残された選択肢を選択したルルーは今のうちに逃亡をはかる。
 これ以上の時間稼ぎは無理!
 10分どころか5分の時間稼ぎにもならなかった。
 僅かな時間。これだけでギニャール達を避難させるだけの時間が作れたとは思わない。
 それでもなんとか逃げ延びてて欲しい。
 音が消え、準備が整ったドラゴンの一撃がやはりあの口から放たれた。
 先程とは比べられない高エネルギーの放射。さっきより明らかに極太の光線が逃げるグリフォンを狙った。
 スレスレに回避するも、光線はグリフォンを追いかけた。
 攻撃範囲が広すぎる!
 黒い光は遂にルルーを飲み込んだ。
 闇、その中に沈んだグリフォンの姿は見えなくなり、トドメと言わんばかりに光線を浴びせ続けた。
 光線はその下にある地上の施設を破壊し、大爆発とそれによって起こった炎が街を飲み込んだ。
 炎の津波が押し寄せ、あらゆる建物をのみ込んでいく。炎に焼かれた建物は崩れ、再生不可能にしていった。
 地上にいた人達は戦争時の訓練通り地下シェルターへと逃げ込む。しかし、溢れた人口を収容できる許容は無く、逃げ遅れた人々は炎に巻き込まれた。
 ドラゴンはようやく攻撃を止め、ゆっくりと降下を始め、そこでようやく戦闘機が姿を現した。まだ、それも遠い場所だ。マッハで飛んでいるから待っていれば戦いになるだろう。マッハ幾つで飛んでいるかは知らないがドラゴン相手でまさか戦闘機で挑もうというのか、この国の兵士達は。命を無駄にする行為だ。
 そもそも街を攻撃して出てきたのがさっきのグリフォンだけとは。まさか、あれがあの街を守っていた選ばれし者だったのか? だとすればこの国を落とすのは容易い。
 どうやら自分達の国を守るに人手(選ばれし者)不足のようだ。
 ドラゴンは戦闘機を破壊する為にもう一方上昇する。
 その時だった。
「誰だ!」
 上から気配を感じたドラゴンを上を見た。
 そこは太陽で眩しい。
 しまった!
「ドラゴンは目がいいからな。その目で太陽を見ればどうなるか」
 上から巨大な鳥、ロック鳥がドラゴンにのしかかった。ついでに鋭い爪でドラゴンの両目を攻撃した。
 ドラゴンは悲鳴をあげた。目から赤い血が流れる。
 あのグリフォンのおかげでドラゴンの目をなんとか奪うことが出来た。
「いくら頑丈なドラゴンでも目は頑丈にはいかないだろ」
 全く気づかなかった。いや、過信が仇になっただけだ。圧倒的優位性をあのグリフォン相手に自分は警戒を緩めていた。ドラゴンの姿で負けることがないその自信のせいで。
 空を支配できるのは他の伝説の生き物ではなく、ドラゴンのみだ。そのドラゴンに立ち向かうのは愚かでしかない。そもそも空を飛べる変身事態希少だ。いくら選ばれし者でも、空を飛べる変身が必ずあるとは限らないからだ。だから、空の上でドラゴンの姿でいる限りそもそも何かに警戒する必要はなかった。
 それが過信だった。
 愚か者だと見下した相手は知恵を使い、私の両目を潰したのだ。
「クハハハハ!! どうやら愚か者は私だったようだ」
 傲慢がもっとも盲目になる……デュボスの警告をちゃんと聞くべきだったか。
 反省か。この私が。
 ドラゴンはロック鳥の足を掴んだ。
「何っ!?」
「目はお前にくれてやる。嬉しいだろ、ドラゴンの目だぞ。だが、お前はその代償に命を差し出す」
「離せ、この馬鹿!」
 ロック鳥は必死にもがくが、ドラゴンの握力から逃れることが出来なかった。
 ロック鳥は焦った。まさか、ドラゴンに捕まるとは思ってもみなかったからだ。
 そもそも、ドラゴンに腕なんかあったのか。
 ドラゴンによっては腕のかわりに翼がそれだったり、腕があったとしても、その巨大さの割にあまり大きくなかったりと、その伝説の姿は様々だ。
 だが、こいつの手は明らかにそれとは違い、人のそれに近かった。
 あの時の、誰かは知らないがグリフォンと奴が戦っている時に腕があったかなんて気にしてなかった。
「目を潰したからといって殺したことにはならん。捕まえてしまえば、逃げられることもない」
 ドラゴン口を開いた。
「馬鹿な。近距離で攻撃をすればお前もただでは済まされないぞ」
「黙って殺されるよりは道連れにするぐらいどうってことない。どうせ死ぬんだ。仲良くいこうぜ、地獄になぁ!」
「よ、よせ!!」
 ドラゴンは近距離で閃光を放った。
 ドラゴンとロック鳥は空中で大爆発を起こし、それは黒煙に包まれその後どうなったか見ることが出来ない。



 その頃、ロープで塔の内部を順調に降りていくギニャールやオラス達は塔の外でどうなったのか分からないまま、とにかくその下にあるという地下シェルターへ急いでいた。
「大丈夫か、あの子は」と兵士が心配になって呟いた。
 さっきから塔の中で振動が起きていたからだ。
 子供達はむしろこの塔が大丈夫なのかが心配のようで泣いている子もいた。
 オラスはギニャールを見た。ギニャールは複雑そうな顔をしていた。
 何を思っているんだろう。
 オラスにとって珍しく表情が読み取れない顔だった。
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