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回収される恋多き女 2
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こんな可愛いお金持ちに求愛されているシリウス様が正直羨ましい。私が男だったら──いえ、私が男だったら、クリスティス家はもっと悲惨になってしまうわね。
私が男だとしたら、お父様のように人付き合いの下手な甲斐性なしでしかないもの。
そんな男とラーチェさんは結婚してくれない。
「だ、だめです……駄目ですわ、ティディスさん、私には心に決めた殿方が……っ」
「──ティディス。すまないね。ラーチェを回収にきたよ」
涼やかな声が聞こえたと思ったら、私たちと同い年ぐらいの美青年が道の向こうから歩いてくるのが見えた。
レイシールド様によく似た銀の髪とアイスブルーの瞳を持つ、長い髪をした美女と見紛うばかりの美青年である。
優しげな垂れ目に、目尻にほくろ。立派な白い服に身を包んでいる。
第三皇子シャハル様だ。
「シャハル様……!」
「シャハル様、どうしてここに!」
恐縮する私とは違い、ラーチェさんは威嚇する猫みたいに瞳を大きく見開いた。
「それはこちらのセリフだよ。今日一日、私の世話係の役目を忘れてどこで何をしていたのか。シリウスを追い回していたのだとは思うけれど。あのね、ティディス」
「は、はい」
「ラーチェはね、非常に惚れっぽいんだ」
「え?」
「ちょっと優しくされたり、可愛いと言われただけで恋に落ちるんだよ。シリウスもそれを知っているから、適当にあしらっているんだよ」
「そんなことはありませんわ! 私、シリウス様一筋ですのよ」
「いやいや……私が何人、君の惚れた相手の相談に乗ったと思っているんだか。今だってティディスにときめいていただろう。シリウス様のことが好きなはずなのに、他の殿方のことも好きになってしまいましたわ……! とか、しょっちゅうだし」
「うう」
「ラーチェが私の元にいるのは、何処の馬の骨ともわからない相手に惚れて、地獄の果てまでも追いかけていってしまわないためだよ。私は、従兄妹として君の管理を任されているのだから、大人しくしていなさい」
「シャハル様、私は自ら望んで侍女試験を受けたのですわ」
「そう仕向けたのは君の父上で、受からせたのは私だ。ティディス、ラーチェの言うことを真に受けなくていいからね」
「は、はい……」
「ところで、今日一日、レイ兄様と過ごしてみてどうだった?」
「とてもいい方だと思いました。優しくしていただきました」
「そう。よかった。……レイ兄様にもようやく、理解者が現れたかな」
シャハル様は優しく微笑むと、じたばた暴れるラーチェさんを無造作に抱えあげた。
そしてラーチェさんは、シャハル様に抱えられてどこかに消えていった。
私は唖然としながらその姿を見守っていた。
この国には、いろいろな人がいるのね。
ラーチェさんは、あれかしら、恋多き女、というやつ。
それにしてもシャハル様はレイシールド様の弟君なのに、お話が上手だった。
レイシールド様は「いや」とか「あぁ」ぐらいしか言わないのに。
兄弟でも随分違うのね。
そして――多分、レイシールド様のことを気にかけている。
シャハル様は、レイシールド様が優しい方だと知っているからだろう。
ご家族仲がいいのかもしれない。私は妹たちのことを思い出した。会いたいなと思いながら帰路につく。
もう私に飛びかかってくる美少女は、今日のところはいないみたいだった。
私が男だとしたら、お父様のように人付き合いの下手な甲斐性なしでしかないもの。
そんな男とラーチェさんは結婚してくれない。
「だ、だめです……駄目ですわ、ティディスさん、私には心に決めた殿方が……っ」
「──ティディス。すまないね。ラーチェを回収にきたよ」
涼やかな声が聞こえたと思ったら、私たちと同い年ぐらいの美青年が道の向こうから歩いてくるのが見えた。
レイシールド様によく似た銀の髪とアイスブルーの瞳を持つ、長い髪をした美女と見紛うばかりの美青年である。
優しげな垂れ目に、目尻にほくろ。立派な白い服に身を包んでいる。
第三皇子シャハル様だ。
「シャハル様……!」
「シャハル様、どうしてここに!」
恐縮する私とは違い、ラーチェさんは威嚇する猫みたいに瞳を大きく見開いた。
「それはこちらのセリフだよ。今日一日、私の世話係の役目を忘れてどこで何をしていたのか。シリウスを追い回していたのだとは思うけれど。あのね、ティディス」
「は、はい」
「ラーチェはね、非常に惚れっぽいんだ」
「え?」
「ちょっと優しくされたり、可愛いと言われただけで恋に落ちるんだよ。シリウスもそれを知っているから、適当にあしらっているんだよ」
「そんなことはありませんわ! 私、シリウス様一筋ですのよ」
「いやいや……私が何人、君の惚れた相手の相談に乗ったと思っているんだか。今だってティディスにときめいていただろう。シリウス様のことが好きなはずなのに、他の殿方のことも好きになってしまいましたわ……! とか、しょっちゅうだし」
「うう」
「ラーチェが私の元にいるのは、何処の馬の骨ともわからない相手に惚れて、地獄の果てまでも追いかけていってしまわないためだよ。私は、従兄妹として君の管理を任されているのだから、大人しくしていなさい」
「シャハル様、私は自ら望んで侍女試験を受けたのですわ」
「そう仕向けたのは君の父上で、受からせたのは私だ。ティディス、ラーチェの言うことを真に受けなくていいからね」
「は、はい……」
「ところで、今日一日、レイ兄様と過ごしてみてどうだった?」
「とてもいい方だと思いました。優しくしていただきました」
「そう。よかった。……レイ兄様にもようやく、理解者が現れたかな」
シャハル様は優しく微笑むと、じたばた暴れるラーチェさんを無造作に抱えあげた。
そしてラーチェさんは、シャハル様に抱えられてどこかに消えていった。
私は唖然としながらその姿を見守っていた。
この国には、いろいろな人がいるのね。
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それにしてもシャハル様はレイシールド様の弟君なのに、お話が上手だった。
レイシールド様は「いや」とか「あぁ」ぐらいしか言わないのに。
兄弟でも随分違うのね。
そして――多分、レイシールド様のことを気にかけている。
シャハル様は、レイシールド様が優しい方だと知っているからだろう。
ご家族仲がいいのかもしれない。私は妹たちのことを思い出した。会いたいなと思いながら帰路につく。
もう私に飛びかかってくる美少女は、今日のところはいないみたいだった。
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