85 / 190
#85 お米の育て方(その1、種籾の準備)
しおりを挟む
食堂の裏庭に到着し、荷車を下ろす。
「お疲れ様でした。ちょっと待っててくださいね」
壱は言い置くと、裏のドアから食堂に入り、厨房に声を掛けた。まだ仕込み中である。
「じいちゃん、田んぼ作り、煉瓦積みまで終わったから。これから種籾の準備するよ」
「そうかそうか、お疲れじゃのう」
「種籾終わったら、田んぼの今日の作業は終わりだから、ここ入るね」
「いやいや壱よ、今日は食堂の仕事は良いぞい。1日田んぼで疲れておるじゃろう。終わったらゆっくりご飯食べての、ゆっくり風呂入っての、早く寝るんじゃぞ。明日も田んぼをお願いするからの。体力回復させての」
「いや、でもここ忙しいのに」
「だーいじょうぶだって、イチ! 俺らは休憩もあったけど、イチはずっと働いてたんだろ? 今日はゆっくりしろって。こっちは大丈夫だからさ!」
カリルが言い、サントも頷いてくれる。田んぼ作りの時にも感じたが、村人の優しさが凄い。やはりここでも我を張ってはいられない。
「ありがとう。じゃあ今日はゆっくりさせてもらうよ。後で晩ご飯食べに来るね」
「そうじゃそうじゃ。そうしてくれの」
茂造は微笑み、幾度と頷く。壱はみんなに甘える事にする。
「じゃ、また後で。米の種籾とか取りに来たんだ」
「ほいほい、待っておるの」
壱は厨房を離れると2階に上がり、食堂の棚に大切に置いておいた種籾と巾着タイプの布袋を取り、下に降りて裏庭に戻った。
次に大きめの石を持ち上げる。予想はしていたが結構重いので、荷台に乗せた。
「では、川に行きます。そこで種籾の準備をします」
荷車を引いた壱を先頭に、一同は動く。サユリは当然の様に荷車の上に。
ガイが荷車引きを申し出てくれたが、煉瓦運びで散々お願いしたので、今回は自分で。
川までは間も無くだ。壱は石を川べりに置いた。
「お待たせしました。ええと、見てください。これが種籾、米の種です」
壱は袋から種籾を掌に少量出し、みんなに見せる。ガイたちは興味深げに顔を覗かせた。
「ほう、これが米の種……麦と似ていますね」
ガイの反応に壱は頷く。
「同じ穀物ですしね。米の種と言いますけど、食べるのもこの部分なんです。それも麦と似てるかもですね。ただ育て方なんかは違うと思います。まず、これを布袋に入れますね」
言葉の通りに入れて行く。そして紐を引いて口を閉じ、紐の輪の部分を先ほど置いた石に引っ掛け、袋の部分を川に入れた。袋が穏やかな川の流れに合わせてゆるゆると揺れる。
「流水に晒して、このまま1週間程待ちます」
「いっしゅうかんー!」
壱の台詞にナイルが声を上げ、ガイとリオンは眼を見開く。
「マジっすか! すげー!」
ジェンも叫ぶ様に言った。
「本当にすいません! だから本当なら煉瓦を作る前に仕掛けておかなきゃならなかったんです! でもうっかりしてて!」
壱が慌てて頭を下げると、ガイが焦って言った。
「いえ、いえイチさん、育て方に吃驚しただけです。こうしていちから育成に携われるのですから嬉しいですよ。今はこうしてイチさんに教えてもらえてますけど、次の田んぼからは俺たちだけでやるんですからね。今のうちにしっかり覚えておかないと」
「そうですねー、本当にそうなんですよねー」
ナイルが腕を組んで幾度と頷く。
「今でこそ、イチさんの指示で僕ら動いてますけど、今の田んぼがひと段落したら僕らにお任せでしょー? そうなると戸惑う事も多いんじゃ無いかなーって。いくらガイがしっかりしていてもねー」
「え、どうしてそこで俺が出て来るんです?」
ナイルの台詞にガイが首を傾げた。
「お疲れ様でした。ちょっと待っててくださいね」
壱は言い置くと、裏のドアから食堂に入り、厨房に声を掛けた。まだ仕込み中である。
「じいちゃん、田んぼ作り、煉瓦積みまで終わったから。これから種籾の準備するよ」
「そうかそうか、お疲れじゃのう」
「種籾終わったら、田んぼの今日の作業は終わりだから、ここ入るね」
「いやいや壱よ、今日は食堂の仕事は良いぞい。1日田んぼで疲れておるじゃろう。終わったらゆっくりご飯食べての、ゆっくり風呂入っての、早く寝るんじゃぞ。明日も田んぼをお願いするからの。体力回復させての」
「いや、でもここ忙しいのに」
「だーいじょうぶだって、イチ! 俺らは休憩もあったけど、イチはずっと働いてたんだろ? 今日はゆっくりしろって。こっちは大丈夫だからさ!」
カリルが言い、サントも頷いてくれる。田んぼ作りの時にも感じたが、村人の優しさが凄い。やはりここでも我を張ってはいられない。
「ありがとう。じゃあ今日はゆっくりさせてもらうよ。後で晩ご飯食べに来るね」
「そうじゃそうじゃ。そうしてくれの」
茂造は微笑み、幾度と頷く。壱はみんなに甘える事にする。
「じゃ、また後で。米の種籾とか取りに来たんだ」
「ほいほい、待っておるの」
壱は厨房を離れると2階に上がり、食堂の棚に大切に置いておいた種籾と巾着タイプの布袋を取り、下に降りて裏庭に戻った。
次に大きめの石を持ち上げる。予想はしていたが結構重いので、荷台に乗せた。
「では、川に行きます。そこで種籾の準備をします」
荷車を引いた壱を先頭に、一同は動く。サユリは当然の様に荷車の上に。
ガイが荷車引きを申し出てくれたが、煉瓦運びで散々お願いしたので、今回は自分で。
川までは間も無くだ。壱は石を川べりに置いた。
「お待たせしました。ええと、見てください。これが種籾、米の種です」
壱は袋から種籾を掌に少量出し、みんなに見せる。ガイたちは興味深げに顔を覗かせた。
「ほう、これが米の種……麦と似ていますね」
ガイの反応に壱は頷く。
「同じ穀物ですしね。米の種と言いますけど、食べるのもこの部分なんです。それも麦と似てるかもですね。ただ育て方なんかは違うと思います。まず、これを布袋に入れますね」
言葉の通りに入れて行く。そして紐を引いて口を閉じ、紐の輪の部分を先ほど置いた石に引っ掛け、袋の部分を川に入れた。袋が穏やかな川の流れに合わせてゆるゆると揺れる。
「流水に晒して、このまま1週間程待ちます」
「いっしゅうかんー!」
壱の台詞にナイルが声を上げ、ガイとリオンは眼を見開く。
「マジっすか! すげー!」
ジェンも叫ぶ様に言った。
「本当にすいません! だから本当なら煉瓦を作る前に仕掛けておかなきゃならなかったんです! でもうっかりしてて!」
壱が慌てて頭を下げると、ガイが焦って言った。
「いえ、いえイチさん、育て方に吃驚しただけです。こうしていちから育成に携われるのですから嬉しいですよ。今はこうしてイチさんに教えてもらえてますけど、次の田んぼからは俺たちだけでやるんですからね。今のうちにしっかり覚えておかないと」
「そうですねー、本当にそうなんですよねー」
ナイルが腕を組んで幾度と頷く。
「今でこそ、イチさんの指示で僕ら動いてますけど、今の田んぼがひと段落したら僕らにお任せでしょー? そうなると戸惑う事も多いんじゃ無いかなーって。いくらガイがしっかりしていてもねー」
「え、どうしてそこで俺が出て来るんです?」
ナイルの台詞にガイが首を傾げた。
11
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる