異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#91 鶏そぼろ丼の朝ご飯

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 さぁ、壱は今日も田んぼ作りの続きだ。しかしその前に朝食作りである。

 昨夜のアルコールの影響は無い。程良い量だったのだろう。お陰で良く眠れた。

 壱は厨房に降りて冷蔵庫を開けると、昨日の夜にキープしておいた鶏肉と卵、棚から葉付きの人参を取り出す。

 一旦2階に上がり、今度は鍋を手に再び厨房へ。ブイヨンを頂く。

 最初に米を炊く。これは火加減に注意しながら。

 まずは人参に取り掛かる。良く洗って、葉はざく切りにしておき、本体は皮のまま短冊切りに。本体をブイヨンの鍋に入れて、火に掛ける。葉はボウルに入れておく。

 米の鍋が沸いて来たので、火加減を落として。

 次は鶏肉に取り掛かる。端から薄く切って行き、切った鶏肉を倒して千切りに。それを45度回転させて微塵に切って行く。

 出来る限り細かくしたいので、丁寧ていねいに包丁を動かして行く。ミンチ状にしたいのである。

 終わると冷たいままのフライパンに入れてしまう。そして手洗いを兼ねて、包丁とまな板を洗った。

 次に調味液を作る。ボウルに味噌と砂糖を入れ、水を少量ずつ入れてクリームくらいの緩さになるまで伸ばして行く。

 卵も割って解し、塩を少量加えておく。

 鶏肉を入れたフライパンを火に掛ける。オリーブオイルを入れていないが、フライパンを熱していないのと、鶏皮から滲み出る油で焦げ付きにくい。

 木べらを使い、パラパラになる様に炒めて行く。じわじわと火が通り始め、薄いピンク色だった肉の表面が白くなって行く。

 粗方あらかた炒まったところで、先程作った味噌ダレを加え、時折混ぜながら中弱火で煮詰めて行く。

 次にもうひとつフライパンを出し、火に掛けて温まったらオリーブオイルを引く。そこに人参の葉を半量程入れて、炒めて行く。味付けはシンプルに塩のみ。炒め上がったらボウルに上げておく。

 そのままのフライパンを使い、卵を炒める。オリーブオイルを足し、卵液を一気に入れる。端から徐々じょじょに火が通って来るので、中心に掻き寄せ、全体がポロポロになる様に炒めて行く。卵そぼろを作っているのである。

 出来上がったら火を止めて置いておき、鶏そぼろの様子を見る。巧い具合に煮詰まっていた。

 その頃には米も炊き上がっている。チリチリと音がし始めている鍋の火を止めて、ふたを開けて全体を解し、また蓋をして蒸らす。

 次にブイヨンの鍋に行く。味噌を溶かし、人参の葉の残りを入れる。それでまずは味噌汁の出来上がりである。

 時計を見る。そろそろサユリと茂造が起きて来る頃だろうか。仕上げは起きて来てからが良いだろう。

 使った調理器具を洗っていると、茂造が起きて来た。

「おお、壱、おはようじゃの」

「じいちゃんおはよう。サユリ起こして朝支度してね」

「ほいほい。ありがとうのう」

 そう言い茂造が洗面所に向かった所で仕上げである。丼鉢代わりの器に米を平らに盛り、鶏そぼろ、卵そぼろを敷き詰め、彩りに炒めた人参葉を中心に飾る。

 鶏そぼろ丼の出来上がりである。

 次に人参の味噌汁を注ぎ、朝食の完成だ。

 茂造がサユリをともなって戻って来た。

「朝ご飯出来たよ」

「毎朝ありがとうの。いただくとしようかの」

「うん、どうぞ」

 壱と茂造はテーブルに着き、サユリは上に。サユリ用は食べ易い食器に入れてある。鶏そぼろ丼は平皿に、味噌汁はサラダボウルに。

 手を合わせ、まずは味噌汁を口に含む。この世界に来てすっかりと飲み慣れた、ブイヨン出汁の味噌汁。人参と良く合っている。

 昨日昆布を採って来て貰ったのだから、今日は干さなくては。そうなると鰹節も早く欲しい。明日にでも鰹を獲って来て貰えないだろうか。

「うむ、壱、この鶏のそぼろも卵も旨いのう。人参の葉も良い味わいになっておる」

 鶏そぼろ丼を口に運ぶ茂造が、満足そうに言う。壱も味噌汁を置いて丼を手にし、スプーンで掬って口に放り込んだ。

 うん、弱火でじっくり煮含めたからか、鶏そぼろはふっくらしっとりと仕上がっている。卵そぼろもしっとりと出来ていた。

 人参葉は良いアクセントである。塩で炒めただけなので、そぼろの味の邪魔をしない。

 鶏そぼろの味付けは、本来なら砂糖や味醂、醤油などを使う。しかしこの世界にある和の調味料は味噌だけ。なら、と挑戦してみたのだが、見事成功した様だ。

 脳内シミュレーションで失敗のイメージは無かったので、大丈夫だとは思っていたし、念の為にスマートフォンでレシピも調べてみたが、味噌味の鶏そぼろはちゃんと存在した。

 残念なのは、生姜が無かった事だ。この食堂では見た事が無かったので、この世界そのものにあるのかどうか。あるなら是非入手したいところだが。

「じいちゃん、この世界に生姜ってある?」

「あるぞい。と言うか、この食堂でも使っておるぞい」

「え! 俺見た記憶無い! 何でだろう!」

 壱は驚いて、つい大声を上げてしまう。

「そうじゃったのう、壱はまだカレーソースを作った事が無かったのう。この食堂のメニューで生姜を使うのはカレーソースだけじゃからのう。仕込み中はいろいろな香りが漂うし、壱が気付かんのも無理は無いのう」

「厨房で見掛けなかったけど」

「袋に入れて棚に置いてあるんじゃ」

「あー、だから見付けられなかったんだ……」

 もっと早くに聞いておけば良かった。壱は項垂れてしまう。しかし立ち直りも早い。

「じいちゃん、この鶏そぼろさ、生姜を入れるともっと旨くなるんだ。また作って良い?」

「勿論じゃ。毎日違うものを食べさせてもろうて、それはそれで嬉しいが、どれも旨いからの、同じもので全然構わんのじゃよ」

「じゃ、また今度。まだ作ってみたい味噌料理いろいろあってさぁ」

「ほっほっほ、壱は料理好き、と言うより味噌好きなんじゃな」

「無かったら暴れたくなる程にね」

 壱は照れ臭そうに笑みを浮かべた。
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